『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Accenture、高齢者の孤独を助ける最新のAIプラットフォーム”
Accentureは最近、イギリスでの試験的なプログラムを終了させた。このプログラムは人工知能を利用して、高齢者が自らの介護と日常生活の管理に役立てるものだ。このテクノロジーはロンドンにあるAccenture Liquid Studioで開発されたもので、一人で生活している高齢者をターゲットに、ユーザーの行動を学習し、ユーザーの肉体的・精神的健康を支える活動を提案する。
Accenture Liquid Studioの代表者Laetitia Cailleteau氏は、「Age UK Londonの支援で、私たちは高齢者にとって日々の物忘れ解消策から、孤独であることの苦悩まで、日常的で生じるより共通の問題を特定しました。そしてAIを採用し、支援と援助を提供する人間中心のプラットフォームを作りました」と述べた。
このプラットフォームは、Amazon Web Servicesのクラウドで動き、家族や介護士が高齢者の日常活動をチェックできるポータルサイトも含んでいる。また、薬を飲まなかったときなど、ユーザーの行動に異常があればそれを発見するのに役立つ。
3ヵ月続いたこの試験的なプログラムは、ひとりで暮らす70歳以上の高齢者60名が実験対象となった。このプログラムは高齢者が自宅で扱うもっとも厄介な作業をいくつか特定するのに役立ち、Accentureのプラットフォームを開発する手助けとなった、と同社は主張している。このプラットフォームはセルフサービスの Amazon Alexa Skills Kitを利用し 、デバイスを動かすAIをカスタマイズしていた。
イギリスでは高齢者人口が増加している。こうした高齢者の多くは、孤独を抱いて暮らしている。高齢者のサービスに取り組む非営利組織、Age UKの報告によると、イギリスに住む20万人の高齢者たちが、友人や家族と会話を交わすことなく1ヵ月、またはそれ以上の期間を過ごしているという。さらに390万人の高齢者が、友人の代わりとして主にテレビを利用していると予測している。
Age UK Londonの最高責任者Paul Goulden氏は、「高齢者たちは均一な集団ではありません。つまり年をとることは非常に個人的な体験であり、各人が様々なニーズを持っているのです。そして今や、高齢者に対してますます個別の体験を提供できるテクノロジーが私たちにはあるのです」と、述べた。「高齢者介護の試験プログラムは、テクノロジーが高齢者の幸福をどのように向上させることができるかを、明らかにするのに役立ちました。ここには、絶大な潜在力はあるのです。高齢者の恩恵となるもののさらなる発展に、AccentureとAmazon Web Servicesのテクノロジーが、どのように良い影響を与えられるのか、楽しみにしています」と述べた。
このプラットフォームは、ツールを利用して人々がコミュニティー内の他の人々と繋がるのも手伝う。参加者が地元のイベントや、近所の他の人々を見つける手伝いをする。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2017年12月4日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
高齢者人口の増加による対応策は、日本だけでなく世界的な課題となっています。
10月にボストンで開催されたConnected Health Conferenceでも、孤独の中で生きる高齢者を支えるためのテクノロジーの利用について議論されました。そのなかで、AARPの企業戦略・イノベーション担当副社長Anne Marie Paterno Kilgallon氏は「2020年までに、高齢者の割合は3:1となるでしょう。つまり介護を必要とする人が3人いるのに対し、それを提供することになるのは1人なのです。これは本当に恐ろしい統計値であり、状況はさらに悪化するばかりなのです」と述べました。テクノロジーの活用は急務なのです。
とはいえ、テクノロジーによってただ便利になっただけでは意味がありません。高齢者が自発的で前向きに活動できるよう、健康年齢を高める取り組みにしていく必要があります。
今回のAccentureの実証実験は、AIによって高齢者の生活に密着し、課題を見つけ出し、無意識の諦めをなくすためのサポートや、孤独から抜け出させるようなアプローチを行ないます。本来、人が介入しないとできなかった部分をテクノロジーによって補おうとの試みです。
このような取り組みを始める時に気をつけたいのが、ターゲットとなる高齢者を明確にイメージできるようにすることです。“高齢者”と一括りにするのではなく、身近な高齢者、例えば自分の親族などが抱える課題を見つけ、解決することに集中することが大切です。
Age UK Londonの最高責任者Paul Goulden氏のコメントにもあるように
「高齢者たちは均一な集団ではありません。つまり年をとることは非常に個人的な体験であり、各人が様々なニーズを持っているのです」
この点を踏まえた設計、実証実験と評価をしない限り、高齢者の誰にとっても魅力的でないサービスが生まれてしまいます。
企画者が高齢者本人でない限り、本質的な理解は難しいものです。個の分析を徹底的に行ない、それを集合知として組み上げた時に、初めて使えるサービスになると言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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