『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“血圧測定スマートウォッチは、高血圧管理のためのパラダイムシフトである”
Brigham and Women’s病院常勤のDaniel Yazdi博士は、医師や患者およびデジタルな健康管理プログラムの利点について概略を説明した。
血圧をウォッチすること(見ることと腕時計をかけたダジャレ)は、新たな意味を持とうとしている。2019年初頭は FDA (アメリカ食品医薬品局)が認可した血圧測定スマートウォッチの発売に注目だ。なぜこれが大きなニュースなのか?アメリカの成人3人に1人、約7,500万人が高血圧の影響を受けている。これは循環器系の病気(心臓発作や脳卒中)の主な要因であり、1日に1,000人が死亡している。血圧を適切に管理できている患者は50%に過ぎず、より良いソリューションが求められている。
スマートウォッチ『HeartGuide』はOmronから発売される。この製品はリストバンドを膨らませることで血圧を測定することができる。伝統的な腕帯によるカフ圧と似たメカニズムだ。Appleも似た機器の特許を2018年6月に提出しているため、「Apple Watch」の次のイテレーションでは同じような機能を見ることができるかもしれない。
こういった機器の利点を評価するには、現在の高血圧管理の限界を理解する必要がある。
1)測定頻度が低い
2)固有のデータ変動
3)白衣高血圧
4)服薬不遵守患者と医療従事者のフォローアップの貧弱さ
スマートウォッチ血圧モニターはこれらすべてを解決するだろう。
患者の大部分は病院を訪れた際にしか血圧を測定しない。年に1〜5回だ。対照的に1日に10回測定するスマートウォッチなら、年に3,640回測定することになる。これによって測定には新たなレベルの粒度と正確性がもたらされる。それぞれのユーザは睡眠時、休息時、起床時、そして活動時の平均的な血圧が分かるようになる。こういった機器なら、立っている時に血圧が低下する起立性低血圧を測定する可能性もある。起立性低血圧は一般的に脱水症状の原因とされ、また高齢者の転倒の主要因でもある。
より継続的な測定によって、高血圧が心臓や腎臓や脳に回復不能なダメージを与える前に、患者と医師はその兆候や進行を特定するために協力することができる。血圧を上昇させる要因について、直接的なフィードバックがユーザに与えられるだろう。例えば、塩分が多い昼食やストレスフルなビジネス会議、または大量のアルコール飲料のすぐ後には、ウォッチに血圧注意が表示されるだろう。こういったフィードバックでユーザは自身の病気をもっとコントロールできるようになる。
次に、白衣高血圧という非常に現実的な現象がある。これは患者の血圧が、医療関係者の前だと不安のせいで上昇するというものだ。たとえば私の祖母は、家では血圧120/70 mmHgだったが、不安をかき立てられる診療所では190/90の値を示した。受動的なスマートウォッチのセンサーはそういった効果を和らげ、もしくは失くし、より正確な高血圧治療を可能にする。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2019年1月23日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
高血圧症の人口が多いことからも、血圧をウェアラブルで計測できないかは、以前から検討がされてきました。家庭用で普及しているオシロメトリック法(カフ圧による圧振動分析)以外のやり方も検討されたものがありますが、精度が高められていないと聞いています。医療機器として認可が必要な血圧計では、精度があるかはとても重要なことになります。
オムロンヘルスケアが米国向けに発表したスマートウォッチ『HeartGuide』は、腕時計として腕に装着しながらも、大きさ、精度の問題をクリアし、FDAでの認可も得た製品です。Yazdi博士が述べているよう、この製品により、日々の定期的な計測が可能になり、ユーザーへのフィードバックにより、気づきを与えていくこともできるでしょう。
これにより改善する人も増えますが、数値が上がっても痛みなどが伴わないため、特に体の変化も感じないからと、改善行動に向かえない人も出てくるでしょう。これが見える化後の課題です。
このような課題が常につきまとうのがヘルスケア領域です。過去から学び、次の打ち手もすぐに展開していけるのが望ましい形となります。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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