『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“電通、東大松尾研発のAIスタートアップACES、GAORA、共同通信デジタルと共に野球における姿勢推定AIアプリケーション『Deep Nine』を開発”
電通は、東京大学松尾豊研究室発のAIスタートアップACES、GAORA、共同通信デジタルと、野球選手の特徴分析や能力強化、怪我の予防をサポートする新たな姿勢推定AIアプリケーション『Deep Nine』を共同開発し、サービス提供を開始しました。国内プロ野球球団への試験導入も決定しています。
【目的と開発背景】
近年、スポーツ領域におけるデータの利活用が進んでいます。プロ野球においても、詳細な投球データ(球速だけでなく、回転数や変化量)、打球速度や角度、守備のトラッキングデータなどを蓄積し、解析することで戦術の向上が図られてきました。
一方で、スポーツにおける本質的な情報である身体動作を定量的に獲得する技術は発展途上であり、選手の特徴分析や怪我の原因特定および予防はまだまだ困難な状況です。
そこで野球選手の身体情報を十分に活用すべく、ヒューマンセンシングの技術を応用し、身体の位置・角度・速度情報を数値定量化するAIアプリケーション『Deep Nine』を開発しました。
【『Deep Nine』について】
『Deep Nine』は、動画像から身体情報を定量化し分析できる姿勢推定AIアプリケーションです。最先端のディープラーニング技術を応用することで、被験者の身体にセンサーを装着することなく、カメラで撮影した映像から身体情報を取得することに成功しました。
本アプリケーションを導入した球団・企業・学校・各種団体・個人の方は、専用サイトにアクセスしてご利用いただくことができます。『Deep Nine』を用いることで、野球選手の特徴分析や能力強化・育成、怪我の予防など、幅広い活用が可能になります。また『Deep Nine』を用いて得られたデータは、より効率的に利活用いただけるよう、検索での絞り込みと振り返り、データ出力といった機能を搭載しております。
【ユースケース】
①選手ごとの特徴の把握:
投球におけるフォームや球種ごとの特徴などを分析し活用することが可能です。
②選手の能力強化:
選手ごとに、身体動作とパフォーマンスとの相関を分析することで、パフォーマンスの良い時と悪い時の身体動作の違いを明らかにし、分析結果を練習やコーチングに活用することが可能です。
③怪我の予防:
怪我をした前後での身体動作の違いを分析し、データを蓄積していくことで、投げすぎによる違和感や故障の予防、また突発的な怪我や手術からの復帰のサポートが期待できます。
プレスリリースはこちら(株式会社電通、2020年6月1日発表)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、カメラで撮影した画像から身体情報を定量化し分析できる姿勢推定AIアプリケーションに関するニュースです。
これまでスポーツの姿勢、フォームの分析、解析には、身体に専用のセンサーを装着して撮影するのが一般的な手法でした。しかし、最近ではカメラで撮影した画像だけでも、姿勢、フォームの分析、解析が可能になってきており、そこにはAIの技術が活かされてきています。また、スマホのカメラを使って、簡易的にスポーツのフォームや姿勢を見える化するアプリなども提供されてきています。
スポーツのフォーム、姿勢の見える化は、レベルにもよりますが以前よりも簡単にできる環境が提供されつつあります。
しかし、スポーツのフォーム、姿勢の見える化の次に求めらるのは、そのフォーム、姿勢をどのように改善すべきなのかというソリューションであり、指導者側のスキルになってきます。スポーツのフォーム、姿勢を見る化した結果を見て、指導者がどうアドバイスすべきか?どのように改善点を指摘すべきかということが大切です。
でも、スポーツのフォーム、姿勢についてはその競技の理想的な身体の動き、フォームはありますが、やはり個人個人の骨格や筋肉量、柔軟性など身体機能が異なるため、人に合わせたフォームのアドバイスが必要で、指導者側の経験や知識、専門性が求められます。
今回の姿勢推定AIアプリケーション『Deep Nine』では、まずは野球に特化して、また個人の球種による投球フォームの違いを見る化したり、パフォーマンスの良い時と悪い時の身体動作の違いを捉えたり、怪我をした前後での身体動作の違いを見る化するなど、個人ごとのフォーム、姿勢の様々なケースでの「違い」を見える化して、パフォーマンスや怪我、そしてフォームの「クセ」の修正に役立てていくというアプローチです。
スポーツ、特にトップアスリートのフォーム、姿勢の見える化では、やはり見える化したデータをどのように活用して、よりパフォーマンスアップに役立てらるかということがポイントになってきます。その際に重要になるのが、指導者にどう役立ててもらえるかということだと思います。指導者が活用可能なレベルまでサポートすることが、スポーツ、特にトップアスリート向けのサービスを拡大していく上では必要な要素になると思います。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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