『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“Samsung、『S Health』をフィットネスのみに留まらず、慢性疾患管理も検討”
Samsungは先月、オープンアクセスの開発プラットフォームを発表した。ソフトウェア側にはSAMI、ハードウェア側にはSimBandを含むプラットフォームだ。この家電メーカーの目下の課題は、同プラットフォームで消費者の乗り換えを推進し、必要不可欠なデベロッパーの数を獲得することである。
メリーランド州ナショナルハーバーで開催された「mHealth Summit」のキーノートスピーチで、Samsungのチーフメディカルオフィサーであり、グローバルヘルスケアの副会長David Rhew氏は、「Samsungのビジョンは、当社のデジタルヘルスプラットフォームを通して人々に活力を与え、暮らしを向上させることです。我々は、自分達がこの分野で相当量の働きをすることはできるが、1社だけでは無理、ということを知っています。そのためにこの会場に来ているわけです。オープンエコシステムを作り、これらのソリューションの開発、テスト、立証を共に行ない、最終的に患者エンゲージメントを通して健康成果の改善を共に行なっていただくようなデベロッパー、mHealth企業、その他のステークホルダーの方々に期待しています」。
Samsungのオープンプラットフォームは、『HealthKit』や『Google Fit』のパラメーターを著しく超えるものである。イベントの控室でRhew氏は、MobiHealthNewsに対して「Samsungのイニシアチブは、デベロッパーにとってデータ共有のプラットフォームになるだけでなく、デベロッパーがお互いのアルゴリズムを共有し、その上に築き上げられるよう、ハードウェアのインフラと容量が増すメリットもある」ことを伝えている。
「ソフトウェアは素晴らしいし、とても重要ですが、実際のハードウェアのプラットフォーム、オープンリファレンスデザインもまた重要です。デベロッパーがセンサーをコントロールし、バッテリーの寿命を調べ、この新しいハードウェアのインフラを利用して創作し、革新できるからです。こういったオープンハードウェアプラットフォームは聞いたことがありません。興味深いものだと思います。これを発表した理由は、センサーは何個入れればいいのか、どんな種類のセンサーか、バッテリーの寿命を向上させるにはどうすればいいか、使いやすさは、全体的に使ってみた感じはどうか、といった大事な課題を解決するためにデベロッパーの力を借りたかったからなのです。Samsungは今後もこういったことに力を注ぎますが、他の人にもオープンにして答えを見つけ出していただければ、と思います」。
記事原稿はこちら(『mobihealthnews』12月8日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
12月7~11日にワシントンD.C.で開催された「mHealth Summit」の内容が日々ニュースに取り上げられ、我々も注目しています。そのなかから今回は、Samsungの『S Health』に関するニュースをピックアップしました。
『S Health』はかなり早い段階から導入(『GALAXY S3』の時には一部の国で導入)が始まったヘルスケアプラットフォームです。最初は機器連携に注力し、関連機器の自社開発としてリストバンド構想が発表されていました。その後(『GALAXY S5』が発表されたあたり)、『S Health』に蓄積されたデータを活用したサービス連携(有料)をスタートしていました。ヘルスケアデータの活用としては、理想的な形は出来つつあったと思われていました。
しかし、連携も伸びず、『S Health』がフィットネス分野において他社よりも魅力的なフォーマットとまではなれていませんでした。
今回の発表では、フィットネスから医療にシフトしていく旨を伝えています。ここで問題は、「ただ医療でも使えるよ」とのレベルでは、過去に多く失敗してきたPHRと同じ道を辿ってしまうことでしょう。
スピーチでは、「他社が大方スマートフォンに重点を置いているのに対し、Samsungのエコシステムはスマホ、タブレット、『Gear Fit』といったリストバンド、さらには『Oculus Rift』と共同開発した最新のGear VRバーチャルリアリティー端末など、同社のデバイス全体を通して利用できるようになります」と付け加えていました。これが単純に連携するのか、医療従事者、患者にとって使いたいと思えるストーリーを設計できてるのかがポイントになってくるでしょう。
Samsungにはデベロッパー任せにならない、利用したい仕組みの提案で、AppleやGoogleとの差別化を図ってくれることを期待したいです。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
Comments are closed.