『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Mayo Clinic心臓専門医、小売業と同じく、ヘルスケアにも仮想プレゼンスが必要”
ネット通販が登場したとき、ネット販売を展開しなかった小規模店は、Amazonのような大規模小売店には勝てず、苦戦を強いられるようになった。
テレヘルス(遠隔医療)に移行しない医療機関にも同じことが起こるかもしれない。と循環器内科医のSteve Ommen氏はMayo Clinicのプラットフォーム会議で、テレヘルスの将来について講演した。
「経済界の他のあらゆる分野と同様、(患者は)自分が物理的にいる場所で必要なケアを受けていますが、依然としてケアを受けるために患者は生活を止めることを余儀なくされています。もし、患者がいる場所に関わり、ケアを向上させ、健康に対する不安を取り除くことができれば、ここで大きな利益を得ることができるのです」とOmmen氏は述べた。
テレヘルスはCovid-19以前から存在したが、Covid-19はその普及を加速させた。Mayo Clinicでは、対面診療が大幅に減少し、テレヘルスの利用者が急増した。コロナ禍の発生当初、医療システムは実際に対面診療よりもバーチャルな診療を多く行っていたと、Ommen氏は述べている。その後、対面診療は復活したものの、テレヘルスの利用率はコロナ禍以前より高い水準にある。
また同氏は「(2020年)11月末には、患者への働きかけや自宅での観察、患者とのメール通信をより多く行っていたため、実際に日常的に診察している患者数はコロナ禍前の2月よりも多くなっていました。そのため、実際に助けられた人の数は全体的に向上しています」と述べた。
Ommen氏によれば、Mayo Clinicが発表したデータがこれを裏付けている。2021年初頭に実施した2,007名のアンケートでは、過半数が「対面診療よりもテレヘルスを選ぶ」と回答している。さらに、患者の2/3は、テレヘルスが受けられなければ、治療を先延ばしにしていたと答えている。対面、電話、ビデオ通話での診療に対する患者の満足度の回答を見ると、満足度はほぼ同等であった。
またMayo Clinicが2020年7月13日から8月15日にかけて、医師をはじめとする医療従事者1,594名を対象に調査を行ったところ、臨床医も同様にメリットを実感していることが明らかになった。過半数が、テレヘルスの利用を拡大する意欲が湧いたと回答している。
さらに、患者側が質の高い医療を受けていると感じている一方で、医師側も自分たちが提供している医療の質に満足していると回答している。
テレヘルスを提供するとなると、多くの医療機関は金銭的な面で不安を抱いているとOmmen氏は語る。テレヘルス機能を追加するにはコストがかかり、対面診療に比べバーチャルケアでは収益が少ない。
これについて、「それは、少し短絡的な考え方だと思いますね」とOmmen氏は語った。「それは1日の経費にしか目を向けていないのです。しかし我々は、患者が来院した後に何が起こるか、そしてそれがどのように機能するかを見極めるべきです」
Mayo Clinicが行った別の調査では、患者がビデオ通話で初診を受け、6ヵ月後に再診を受けた場合、初診と再診の間の営業利益が高くなることが明らかになった。
また、Ommen氏は患者にも経済的なメリットがあるという。Mayo Clinicの患者は、平均して約700マイル(約1,100km)もの距離を移動して同施設に通っている。対面ではなくバーチャルで診察を受けることで、患者側はガソリン代、宿泊費、休業費などの自己負担を約1,000ドル削減することができる。
記事原文はこちら(『MedCity News』2022年7月28日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回の記事冒頭で、小売業を比較していることが面白いと思いました。
思い返せば、オンライン通販が登場したころ、ここまで生活の中に入り込むとは考えていませんでした。リアル販売の補完程度(遠距離などリアルでは買いにくいものなど)で、やはりリアル販売が中心だろうと考えていたのではないでしょうか!?
すべてがネット通販に置き換わったわけではありませんが、オンライン通販が主流の商品も多くあります。どの街にも当たり前にあったであろう本屋の多くが閉店してしまったのもオンライン通販が一因と言われています。
どこで買っても同じ商品、同じ価格のものは、オンライン通販に流れやすいと言えます。
医療は医療専門職によるサービスになりますので、簡単にはオンラインには置き換わらないでしょうが、オンライン上での診断、観察で対応でき、同じ満足度を得られるものは、わざわざ移動したり、待合室で待つ時間を考えれば、オンラインに移行するのは自然な流れでもあります。
テレヘルス(遠隔医療)はCovid-19の発生により、世界的に普及が進みました。
しかし、Covid-19によるロックダウンなどが理由で、仕方なくテレヘルスを選んでいた人は、対面診療に戻っているようですが、すべてが戻っているわけではありません。
テレヘルスを利用することで、対面診療と同じ満足感、安心感を得られ、テレヘルスの方が手間がかからないと思えれば、Ommen氏のコメントのように、テレヘルスを選ぶ人が増えていきます。
規制やコスト、導入や運用管理を考えれば、できればテレヘルスを選びたくない医療提供者も多くいるでしょう。しかし、他分野を見れば、時代の変化がそれを許してくれないこともあります。
患者が本当に何を望むのか?を考え、導入における壁を越えるための工夫をすることで、今後の時代を踏まえ、多くの人に選ばれる医療提供が実現するのではないでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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