『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“NECが歩行分析センサーで治療の効果測定へ、歩行解析の医療応用が広がるか”
NECが歩行分析センサーを用いて扁平(へんぺい)足の治療用インソールの効果を評価する研究を始める。2021年8月26日、帝京大学と共同研究契約を締結し、帝京大学医学部付属溝口病院が実施する研究に参加すると発表した。治療用のインソール内にNECの歩行分析センサーを組み込んで歩き方を解析することで、治療の効果を可視化する。
扁平足は腱の損傷などが原因で土踏まずが平らになった状態のことで、足の痛みやバランス不良を起こすことがある。インソールを用いて治療することが多いが、効果の判定は患者による主観的な評価が中心だ。モーションキャプチャーを利用した客観的な評価は、専用設備が必要で実施する場所も限定されるため、医療やリハビリ現場での利用には課題があった。「インソール内に組み込むセンサーを用いることで、通常に近い環境でデータを取得できることに期待している」と帝京大学医学部付属溝口病院 整形外科 助手の笠井太郎氏は話す。
インソール内のセンサーを用いて歩行速度や歩幅、接地角度などを測定する。収集したデータから歩き方を推定し、インソールを利用した場合の歩き方の変化を解析する。40人から50人ほどのデータを収集する予定だという。
記事原文はこちら(日経クロステック/日経デジタルヘルス 2021年9月1日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、歩行分析の医療、治療への応用、活用に関するニュースです。
歩行は、生活の基本動作であり、歩行を分析することにより、筋力のバランスや衰え、また故障の可能性など予防領域での活用はもちろん、リハビリへの活用やリハビリの効果測定など医療、治療領域でも活用が期待されています。
しかし、これまでの歩行を分析は、大掛かりな測定装置や測定するスペース、そして人による測定など、測定して見える化する部分では、障壁となる要素が大きく、手軽に測定できる環境、状況ではなかったのが事実です。
最近では、スマホの専用のアプリで測定できるようになってきたりと、これまでハードルになっていた「大掛かりな測定」に対して、「簡単な測定、見える化」へとシフトしてきています。
今回の治療用のインソール内にNECの歩行分析センサーを組み込んで歩き方を解析する手法も、やはり簡単な測定への一つの取り組みだと思います。
でも、人の身体はそれぞれ異なるため、改善に向けたソリューションの提案では、人の知識、人の感覚によるアプローチ、そして対象者に合わせたパーソナライズが必要な要素だと思われます。
今回のニュースのように医療分野への応用に関しては、医師や理学療法士などの専門知識や経験、ノウハウが必要になってくるはずです。
医療分野における歩行分析は、あくまでも医師や理学療法士等の専門家に対する歩行の見える化をサポートし効率化する役割であって、やはり最終的には「人」が介在してソリューション、アドバイスを提供する流れになっていきます。
また、歩行動作はすぐに改善できるものではなく、改善するにはある程度の期間の継続が必須になってきます。特に日常動作である歩行を改善するには、意識の継続が必要になります。
そういう意味では、歩行の見る化(測定)→改善提案、アドバイス(ソリューショ)、→継続支援→測定(効果測定)といった一連の流れが重要な要素になってきます。
そのため、歩行分析は、歩行の見る化(測定)からどのように対象者の改善につなげていけるかといった、大きな流れとして捉えていくことが大切ではないかと、今回のニュースであらためて感じました。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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