『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“マンダムが中京大学スポーツ科学部荒牧研究室と取組 「ヘアスタイリングが気分と姿勢に与える影響」に関する実験結果を学会で発表”
マンダムは学校生活における「部活ヘア」の存在に着目し、高校生を中心とした学生が自己表現と部活を両立して楽しめるよう、部活生の髪型ルールを一緒に考える活動を展開しています。この活動の一環として中京大学スポーツ科学部との取組を開始し、ヘアスタイリングが人の気分や姿勢にどのような影響を与えるかについての実験結果を、中京大学のチームが2024年11月2日開催の第29回日本顔学会大会(フォーラム顔学 2024)で発表しました。
研究テーマ
「ヘアスタイリングが気分と姿勢に与える影響」Effect of Hairstyling on Affect and Posture
発表者
荒牧勇、小牧寛明、井出拓見、本多康宏、土屋敦、野入康介
(中京大学スポーツ科学部、中京大学大学院スポーツ科学研究科)
発表概要
ヘアスタイリングが気分と姿勢にどのような影響を与えるかを検証した結果、ヘアスタイリングにより、ポジティブな感情が増加しネガティブな感情が減少、立位姿勢の動揺が減少することが明らかになりました。
実験概要
研究対象者は、14名の大学生(男子10名、女子4名)。「ヘアスタイリング有り」と「ヘアスタイリング無し」の2条件で、※1 日本語版 PANASと※2 立位重心動揺(開眼/閉眼でそれぞれ30秒間、バランスコーダBW-6000、アニマ社)を計測しました。
ヘアスタイリングは、研究対象者の希望するヘアスタイルを聞き取り、美容師が整髪料を用いて施術しました。 日本語版 PANASのポジティブ感情の合計点数、ネガティブ感情の合計点数、および、開眼と閉眼それぞれの立位重心動揺の総軌跡長を計算し、「ヘアスタイリング有り」条件と「ヘアスタイリング無し」条件で比較しました(対応のある t 検定、有意水準はp<0.05としました)。
結果と考察
日本語版 PANASの結果は、「ヘアスタイリング有り」条件で「ヘアスタイリング無し」条件よりも、ポジティブ感情の合計点が有意に高くなり、ネガティブ感情の合計点は有意に低くなりました。不安感情で増加するとされる立位重心動揺については、「ヘアスタイリング有り」条件で「ヘアスタイリング無し」条件よりも、開眼時の総軌跡長が有意に減少しました。
本研究の結果は、自己の外見が心理状態と運動パフォーマンスに影響するという仮説を支持するものです。
結論
ヘアスタイリングは気分をポジティブに変化させ、立位姿勢の動揺を減少させました。自己の外見の変化は、心理状態と運動パフォーマンスに影響します。
※1 日本語版 PANAS
PANASはThe Positive and Negative Affect Scheduleの略で、ポジティブ感情とネガティブ感情を評価する指標。 ポジティブ情動8項目、ネガティブ情動8項目の計16項目からなる簡易気分評定尺度で評価する。
※2 立位重心動揺
立っている時の重心位置のふらつき。本研究では被験者の足圧中心が30秒間で動いた総距離を「総軌跡長」としてふらつきを算出。
マンダムでは、人々が化粧品を使用することや外見の変化を通じて感じる気持ちや身体的影響についての理解は、製品の設計や生活者とのコミュニケーションにおいて必須と考えます。化粧品や美容行動が生活者にとって有益なものとなるよう、今後も商品やサービスの開発・研究に取り組んでまいります。
プレスリリースはこちら(株式会社マンダム 2024年12月26日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目したのは、ヘアスタイリングが気分と姿勢に与える影響について研究したニュースです。
今回の実験は、化粧品メーカーのマンダムと中京大学スポーツ科学部の研究室との研究で、学会でも発表されています。
一般的に、ヘアスタイリングが気分に影響し特にポジティブに働くことは想像できますが、ヘアスタイリングが姿勢にも影響していることを実験した結果は目新しい切り口です。
ヘアスタイリングは気分をポジティブに変化させ、自己肯定感の高まりにつながっているのだと思います。
ヘアスタイリングで気分がポジティブに変化し、自己肯定感が高まることで、逆にネガティブな感情が低下し、不安感情で増加するとされる立位重心動揺が減ったことで立位姿勢に影響したというのが、今回の実験の考察です。
通常、心理的な変化を捉えることに留まり、身体的な変化にまで及ばないケースが多いですが、今回の実験のように心理的な変化から身体的な変化を捉えることで、他の領域、アプローチへの応用が見えてきたりします。
今回のように外見の変化を通じたポジティブな心理的な変化という観点では、おそらく運動時のウェアやシューズ、道具なども、気持ちを通じた身体的影響につながる要因になるのではないかと思います。
これまでは、運動をする際にお気に入りのウェアやシューズを準備するとやる気、モチベーションがアップするといったことしか伝えられなかったのが、今回の実験結果等のエビデンスを応用することで、身体的な変化、例えば姿勢の変化だったり、もしかしたら、歩く速度の微妙な変化なども伝えられるようになるかもしれません。
やはり、メンタル的な変化はもちろん身体的な変化、特に客観的でデータで把握できると、自己効力感が高まり、やる気やモチベーション、その後の継続に影響していくと思われます。
メンタル、身体双方のポジティブな変化を計測してフィードバックする仕組みは、今回の実験のように今後様々な組み合わせで実現できるようになることを期待したいところです。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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