『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“製薬とデジタルヘルスのより良い関係を築く方法”
Propeller Healthで副社長を務めているJoe Slavinsky氏は、製薬会社との取組みにて、いかにデジタルヘルスを導入していくのか? 製薬会社と良い関係を築く方法を紹介した。
「弊社では、デジタル治療プログラムを実行するために、製薬会社と共に取り組んできましたが、うまく機能させるのに苦労してきました。弊社がデジタル治療で使用している反復的でアジャイルな製品開発方法論は、慎重で階層化した製薬のウォーターフォール製品開発方法論と衝突しました。弊社は立ち往生し、双方とも、どうすればその型から抜け出すことができるかわかりませんでした。
最終的に小さな試験をするための承認を得て、喘息患者が私たちのプラットフォームを利用できるようになりました。1ヵ月以内に、患者を登録し、見識を集め、そしてデータを回収しました。これは20回のプレゼンテーションではできなかった方法で、データは人々に訴えることができ、製薬会社内におけるプロジェクトの周囲の人々も興奮し、大きな変化がみられました。
このパートナーシップを機能させるうえで最も重要なステップは、製薬組織内の誰が変革を先導できるかを理解することです。この人物が、貴社のチームを目標に向かって導き、うまくおだて、そして時には引っ張ってくれる人になるでしょう。
貴社はその製薬会社の中に自分の同僚の一人のようにデジタルヘルス企業を売り込んでくれる人物が必要です。彼らを教育し貴社を彼らの内部の同僚に売ることができるようにツールを与えてください。貴社の企業名が製薬会社の中で現れるたびに立ち会うことは不可能ですが、貴社の擁護者は多くの人のためにそこにいるでしょう。
この人には3つの中核的な資質が必要です。
1)ビジョン:
デジタルヘルスの将来を信じ、デジタルヘルスが患者生活、医師の診療、そして製薬会社のワークフローにどのように適合するかを理解している人。
2)説得力:
彼らがアイデアを売り込むとき、とりわけ貴社のアイデアを売り込んでいるときに相槌を打って共感できると思うタイプの人。
3)粘り強さと問題解決力:
彼らは製薬会社をデジタルで競争力のあるものにするための長い道のりを歩んでいく所存となる。 製薬業界内の道は長くて困難なので、彼らは内部の売り込みにおいて前向きかつ積極的でなければならない。この人物は、デジタルヘルス企業との提携が理にかなっていることを同僚に説得するときに障害にぶつかるでしょう。彼らが順調にスタートするのは難しいのものなので、製薬業界での現状に抗える人。
デジタルヘルス企業と大手製薬企業は、非常に異なる強みを持っています。デジタルヘルス企業として、貴社は速やかにそしてわずかな告知で変更を加えることができます。その能力を早くそして頻繁に実行し、繰り返す必要があります。
たとえば、弊社は以前製品に関して特定の請求をすることができなかったために、マーケティング資料を一言で変える必要があることに気がつきました。私たちは24時間で変更を完了しました。それは弊社のパートナーとその関係に利益をもたらすために、柔軟性と機転の良さを使うことができる分野です。
一方で、大手製薬企業は、顧客が医師、支払者、提供者であるかに関わらず、巨大なマーケティング力をもたらします。可能ならばそれを活用するようにしてください。貴社が製薬会社の持つリーチを持つことはほとんどあり得ないのですから」
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2019年5月16日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
製薬業界にもデジタルヘルスを活用した事例が徐々にですが増えてきています。そんな中、製薬会社とデジタルヘルス企業が共同でプロジェクトを進める上で、いくつかの課題に突き当たっています。
Propeller HealthのJoe Slavinsky副社長のコメントの通り、業界や規模、開発工程による違いなどが考えられますが、製薬とデジタルヘルスでの一番の違いは、製薬は1つの“製品”ですが、デジタルヘルスはデバイスという製品を使った“サービス”であることでしょう。
ご存知のように“製品”と“サービス”ではビジネスとして考えなければならないことが違ってきますが、その違いをわかった上で両者が議論できていないと、ボタンを掛け違えたままプロジェクトが進むことがあります。
ボタンの掛け違いは、ターゲットについても言えます。デジタルヘルスを患者向けに提供するとき、デジタルヘルス企業は利用者視点で検討していきますが、製薬会社はそのツールを患者に推奨してくれる医師の視点で検討することがあります。本来、患者向け医師向けどちらも検討しないとならないのです。そのためにはレイヤー分けをして、両者でレイヤーごとに検討しないとなりません。
違う業界の人とプロジェクトを進める上では、お互いの常識がまったく通用しない、違うということを常に意識して取組むことが、成功する医療におけるデジタルヘルスに近づくカギだと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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