『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“チーム制アプリが行動変容に寄与することを証明 2型糖尿病・予備軍同士が励まし合えば目標歩数達成率は2倍に!”
<神奈川県ME-BYOリビングラボ>習慣化アプリ『みんチャレ』成果発表
エーテンラボは、2019年10月から約3か月間、神奈川県のプラットフォーム「神奈川ME-BYOリビングラボ」を活用し、2型糖尿病・予備群に習慣化アプリ『みんチャレ』を提供し、生活習慣改善の効果検証を行いました。その結果、『みんチャレ』を活用したグループにウォーキングの目標歩数の達成率の有意差が認められました。
ウォーキングなどの有酸素運動は血糖コントロールに有効であることが分かっており、「糖尿病ガイドライン」に推奨グレードAとして記載されています。それゆえ、歩数も目標達成率の向上は、治療の効果に有効であることが期待できます。
<「糖尿病診療ガイドライン2019」より引用>
2型糖尿病患者に対する有酸素運動やレジスタンス運動あるいはその組み合わせによる運動療法は、血糖コントロールや心血管疾患のリスクファクターを改善させる。2型糖尿病患者に対する有酸素運度とレジスタンス運動は、ともに単独で血糖コントロールに有効であり、併用によりさらに効果が高まる。
◆ 研究概要
2型糖尿病・予備群を対象に3か月間、『みんチャレ』を提供し、生活習慣改善(毎日個人ごとの目標歩数の達成を目指す)の2群ランダム化比較試験を行いました。
対象者:神奈川県在住・在勤の40~70歳の男女、5.6%≦HbA1c(ヘモグロビン糖化率)<7.0%、スマートフォン保持者。
参加者は『みんチャレ』を使用するグループ(使用群)と使用しないグループ(非使用群)に分かれ、『みんチャレ』使用群はアプリ上でチームを組み、仲間と励まし合いながら個人の目標達成を目指す。非使用群はチームではなく、自分1人で目標達成に取り組む。
ウォーキング目標歩数の達成率(期間中に目標歩数を達成できた日の割合)と平均歩数についてMann-Whitney’s U検定により群間比較を行なった。
◆ 取組スキーム
神奈川県の住民に『みんチャレ』の利用を進め、糖尿病予防のための生活習慣改善効果を検証する実証事業および連携可能な実証フィールドとの効果的な協業モデルの探索を行いました。
◆ 目標歩数の達成率の結果
『みんチャレ』使用群で57.5%となり、非使用群の26.5%と比較して有意に高かった。
◆(参考)平均歩数の結果
『みんチャレ』使用群は中央値6,854歩となり、非使用群の3,946歩と比較して有意に高かった。
◆ 研究背景
糖尿病は、有病者の約44%が治療を中断してしまっており、重症化・合併症が発症すると患者のQOLは著しく低下、人工透析となると医療経済的にも大きな負担が生じます。糖尿病の予防・改善には、運動療法、食事療法などの生活習慣の改善が重要であり、患者自身の行動変容が求められます。そこで、ピアサポート*型習慣化アプリ『みんチャレ』を活用し、その生活習慣改善効果を評価しました。
*ピアサポート:「ピア」とは仲間を、「サポート」とは支援を意味しており、「ピアサポート」とは仲間や同輩が相互に助け合い課題解決する活動(出典「日本ピア・サポート学会」より)
◆ 参加者の行動変容
〜ピアサポートによる健康維持・増進で、社会性・幸福度向上〜
チームという日々の活動報告ができる場所があることや、他のチームメンバーの投稿自体が励みになり、行動変容に繋がりました。特に所属コミュニティ数や社会参画機会が少ない高齢者や主婦は相対的に『みんチャレ』コミュニティに価値を感じやすく、アプリを通じたデジタルのつながりによって、意識変容・行動変容の結果、他の社会活動が活発になり、幸福度が向上する可能性が示唆されました。
プレスリリースはこちら(エーテンラボ株式会社 2020年6月26日発表)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、チーム制アプリが行動変容に寄与することを証明し、チーム制によって2型糖尿病・予備軍同士で目標歩数の達成率が高まったというニュースです。
ヘルスケア領域の改善に向けたアプローチでは、「行動」がつきものです。また、その行動とは生活習慣の改善が伴うものが多く、この生活習慣の改善では「継続」がポイントになってきます。
生活習慣の改善に伴う行動の継続は、アプリを使えば解決できるというものではなく、ある程度の仕掛け、工夫が必要であり、人それぞれ継続できるポイントも違ってくるものです。
今回のニュースのチーム制も行動の継続の仕掛けとして効果的で、最近ではチーム、グループ、コミュニティスタイルのサービスも増えています。チーム制にすることで、仲間意識が働き、共有が生まれます。また、仲間の状況を見るだけでも、刺激、励ましが起こります。さらに、チーム制では、仲間との競争意識が芽生えます。
チーム制の「ピア」の効果は、これらが重なりあって効果が生まれていきますが、やはり、その前提には、同じ目的、同じ目標、同じ疾病などの人の集まりによる共通意識、共感が必要なんだと思います。同じ目標の人同士であれば、同じ行動でも工夫し合えたり、逆に悩みを共有できたりもします。やはり、チーム制は、どのような目的や目標などで括るかが、最初のポイントになるような気がします。
しかし、チーム制がすべての人の生活習慣の改善に伴う行動の継続に有効かというとそんなことはありません。やはり、チーム制や人との関わりに対しての距離感は人それぞれ異なるので、距離感を感じる人達には、別の仕掛け、工夫が必要になってくるのです。
人それぞれ継続に寄与するポイントが異なります。これが、ヘルスケアサービスの難しいところであり面白いところでもあります。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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