『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“法人企業向け『Amazon Care』、2022年末に終了”
GeekWireとFierce Healthcareが最初に報告した内部メモによると、Amazonは年末に『Amazon Care』の法人向けサービスを終了する予定である。
Amazon Health Servicesの上級副社長Neil Lindsay氏からのメールによると、このサービスは12月31日に正式に停止されるとのことだ。この決定は『Amazon Care』と、そのCare Medicalグループのプロバイダーにのみ影響し、同社の他の医療プロジェクトには影響しない。
「この決定は、簡単に下されたものではなく、数か月に及ぶ慎重な検討の結果です」と、Lindsay氏はAmazon Health Servicesの従業員に文書を書いた。「入会された会員の方々には『Amazon Care』を様々な面で気に入っていただいているが、我々が対象にしている大企業の顧客に対して、十分な内容とは言えず、長期的には上手くいきませんでした」
『Amazon Care』は、従業員に対するバーチャルクリニックとして2019年に開始されたが、その後従業員以外にも拡げられた。今年の初め、同社は、対面ケアのオプションを新しく20都市(ニューヨーク、サンフランシスコ、シカゴ、マイアミを含む)以上に追加すると発表した。
ほんの数週間前、メンタルヘルス企業 Gingerとの提携を含む、『Amazon Care』への行動医療サービスの追加に関する詳細をInsiderがデジタルライブ中継で報告した。
『Amazon Care』の停止は、医療分野における同社の初めての失敗ではない。Berkshire Hathawayと JPMorgan Chaseとの雇用者向け合弁事業は昨年初めに終了した。
ヘルスケア&テクノロジーアドバイザリーDamo Consultingの創設者兼CEOPaddy Padmanabhan氏は、Amazonの消費者重視の姿勢と分析力を以てしても、独立型プライマリケア提供企業として成功することは非常に難しいと述べた。
「『Amazon Care』は、優れた顧客サービスとプライマリ・ケアの重視という高尚な約束のもとに始まった」と彼は言った。「プライマリ・ケアは、ほとんどの企業にとって診療報酬が低く赤字になります。そしてヘルスケア企業は、街中にある病院よりもプライマリ・ケアでの損失が少ないかどうかで評価をしています。加えて、逼迫した労働市場でのスケーリングの課題は、Amazonにとって投資を続けることを非常に難しくさせています」
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2022年8月24日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
Amazonがヘルスケアにおける法人向けサービス2度目の撤退となりました。対して、コンシューマ向けには順調に体制強化を図っています。
日本の法人向けと米国の法人向けでは性質に違いがありますが、2度に渡って撤退を決める判断は、決して他人事とは言えないのではないでしょうか!?
ヘルスケアビジネスはコンシューマ向けに対し、法人向けは複雑です。
コンシューマ向けであれば、(細かいことを抜かせば)健康課題を解決する提案をすればよいので、ビジネスとしてはシンプルです。
対して法人向けは、企業の従業員を健康にするだけでなく、企業にとって、従業員を健康にすることで得られる企業における価値(保険負担軽減等)が必要になります。
しかも、得たい価値のためには、健康行動をしたいと思っていない従業員を改善しなければ、到達できない価値もあります。コンシューマ向けのように、改善したいと思っている人だけを対象にできないのは、かなり難易度が上がります。
コンシューマより、法人向けの方が数が穫れるので有利では?と考えやすいですが、多くの従業員に使ってもらうためには、ボリュームディスカウントを求められることもあります。
このような複雑で手間のかかるなことを求められる割に、コンシューマ市場と比べると利益率は高いとは言えません。提供企業として得たい収益を達成するためには時間もかかってしまいます。
法人向けサービスを提供するのであれば、表面的には見えてこない、法人市場特有の特性を考慮したビジネスモデル設計と収支計画が必要になります。
Amazonもよく検討した上で再度参入したと思われますが、少しの工夫で得たい収益には到達できないことを、ある意味、Amazonが証明してくれたわけですから、それでも法人市場に参入するのであれば、徹底した市場分析と熟考を重ねて、それでも長期戦になることを覚悟の上で挑んでいただきたいと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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