『eyeforpharma Japan 2016』2日目は、セクション4のマーケティングをテーマにしたふたつのプレゼンテーションをレポートします。(取材・文:小松智幸)
セクション4:有効的なマーケティングチャネルの組み合わせ:マーケティング効果を測定&分析
■デジタル化の成功への道:デジタルマーケティングの有効性やSNSの可能性を検証
クリストフ・モーニエ氏(アストラゼネカ株式会社 マーケティング デジタルエクセレンス部長)
マーケティング分野において近年、従来型のコンタクト形式に比べ、デジタル活用のコンタクト形式の対話時間が伸びてきている。併せて医師が、製品をオンラインでチェックしている時間も長くなっていること、複数のオンラインメディアから製品決定の材料にしている傾向もある。
Owned Media、Paid Mediaに比べて、Earned MediaにおけるSNSの拡がりは、もっと強化できるのではないか。
アストラゼネカでも、これまで医療関係者向けの情報サイトを運営してきた経験から、登録者へのメールによる情報提供には限界があり、もっとクリエイティブな試みができないか模索してきた。そこで去年の12月から試みているのが、『LINE』を活用した情報提供手段。
日本国内の医師のLINE利用は6割になり、急速に伸びていることから、LINEを利用した情報提供を進めている。そのために乗り越えるべき壁は、医師がLINEに対する利用意識として、個人的なコミュニケーション手段という用途から、仕事にも活用できる、という意識変化を促すこと。現在は、取り組みの効果が出てきて初期のデジタル利用に積極的な「イノベーター」の登録数が伸びてきている。
従来のメールと比べると、LINEを活用することで、よりセグメントされた情報を届けられる点や、GPSによる地理情報活用、オンラインセミナーの登録&参加などの利点が挙げられる。
日本は他の国に比べて、デジタルユーザーのなかでも、医療従事者の割合が高いユニークな傾向がある。現在取り組んでいるLINE活用が、デジタル利用のイノベーションを起こせるかはまだわからないが、日本にはそれを可能とする環境が整っていると思っている。
■マーケティングにおけるパラダイムシフト 「会社 対 顧客」の関係性を越え「個人 対 個人」の関係性を築くには?
武末 有香氏(日本イーライリリー株式会社 マーケティング本部 チャネルイノベーション部長)
多種多様なメディアで情報が溢れてきているなかで、情報を提供する側としては、統合された形で届けることが重要。受け取る側の医師のニーズを「適切」に汲み取るのがポイント。
マーケッターが提供するコミュニケーションの満足度を80%と認識した場合に、対する顧客の満足度は8%だった、というデータがあり、気をつけていても認識の差を生んでしまうことがある。
課題は「差別化」、「一貫性」、「最適化」として、それぞれの解決に向けて取り組んでいる。
・「差別化」
顧客に対して感情的なつながりのあるコンタクトで差別化を試みよう、という発想のもと、パイロット段階ながらマルチチャネルのトレーニングの提供や、MRが主導して利用できるデジタルチャネルの開発に取り組んでいる。MRがいろんな情報をコーディネートし、医師に対してわかりやすく情報を提供できるのが目標。
・「一貫性」
MRから提供された情報で、「一貫性がある」と答えた医師は25%で、かつ顧客満足度が高いことがわかった。セールス、マーケティングと連携して統一したメッセージを届けることができれば、顧客満足度につながることを確認。現在は、一貫性を担保するために、必要な情報を必要なタイミングで提供する、シナリオブランディングに取り組んでいる。
・「最適化」
目下、取り組んでいる最中なのが、セールスレベルで医師が必要としている情報を調整し、コミュニケーションを最適化する試み。理想は、医師ごとのニーズ、行動パターンを理解して、タイムリーにコミュニケーションできること。実現のポイントは、行動パターンを蓄積し、ニーズを理解し、どのチャネルが効果的か、という点。今後も「最適」をどれだけ追えるか、が目指す世界になると思われる。
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