『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“製薬会社のデジタルヘルス好機”
製薬会社にはさまざまな苦労があった。ひとつは、モバイルデバイス、ソーシャルメディア、ビデオコミュニケーションなどの技術が進み、患者は自宅で診療を受けるようになるにつれ、「患者からの信頼」が見直されてきている。一般の人は、製薬会社を医師ほど信用していない。また、製薬会社に比べると保険会社のほうが信用されている風潮がある。
昨年のDeloitteによるアンケート調査によると、もっとも信頼されているのは、医師や医療機関であり、次にWebMDなどの情報提供会社、そしてGoogleなどでの検索結果だった。最下位は、製薬会社と保険会社など。
DeloitteのHarry Greenspun医師は、「これらの業界(製薬、保険)が、消費者に対してもっとも大くの健康情報を提供しているにもかかわらず、皮肉にももっとも信頼されていない」と述べた。「なかでも興味深いことは、製薬会社や保険会社、他の機関とが信頼できる方式でのアプリによって、情報交換のパートナーになっていることである。
Makovsky Healthによる最近の研究では、ほんの35%あまりが「製薬会社が提供する病気についてのサイトを信用する」と答えている。16%の回答者は、「製薬会社のサイトには初めから行かない」と答えた。
AstraZeneca Bristol-Meyers Squibbの医療コンサルタントPaulo Machado氏は、「もし私が消費者だったら、製薬会社に相談するか? それとも医師に相談するか? どちらにもっと信頼を寄せるか? 製薬会社の最大の敵は、同業者ではなく医療機関である」と結論づけた。
製薬会社コンサルタントのMatt Hendricks氏は、「製薬会社にとってさらに困難な要素は、元来ある極端なリスク回避型の姿勢がJ&J’s JanssenやMerck’s M2i2などのグループを持つ会社を希少にしてしまっていることだ」と指摘。同氏は昨年12月のHIMSS’ mHealth Summitで、「では、なぜ改善しないのか? どうしてすべての製薬会社が、Janssenのようなグループを持たないのか?」と問いかけた。「どうして他のすべての製薬会社が、階下にブースを設けないのか? 指摘しなければならない大きな障害がある。ひとつは、薬品を開発する段階を見ると、薬品開発よりもリスク管理、またはリスク軽減を優先している。新しい要素や事実を加えると当然リスクは高くなる。経営面において、リスク回避に重点を置く生命科学系の会社は、これらの新しい要素を回避しがちである」。
Hendricks氏は、「デジタル医療の好機が斬新過ぎて、製薬会社は精通している元来のやり方に甘んじてしまうのではないか」と述べた。「たとえ薬品開発での経営面がますます苦しくなっていようとも、結果的に金銭面の目処を立てるのはそれほど困難ではないはずだ。リスクが高く、規格許可やビジネスモデルがはっきりとしない好機と、何十年も培ってきた馴染みのビジネスモデルを比べる時、つまりは会社が資金をどこに投入するかを見定める時、最大の利潤が得られる方向を選ぶものである。多くの製薬会社は未だにセラピーなどのリスクはあるが、健康向上のためになるものの開発よりも、新薬開発が最優先の資金投入先と思っている」。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』5月2日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは、MobiHealthNews誌が不定期に掲載する「考察」シリーズから「製薬会社のデジタルヘルス好機」です。上記は全11ページの冒頭から抜粋しました。製薬会社に喝を入れるような内容ですね。
日本と異なり米国は、保険制度の違いから(またはオバマケアでの主導的立場を得るため)、モバイル機器やアプリの開発会社が医療分野へも率先してアプローチしています。医療機器メーカーの一部は、すでにある技術をモバイルに転換しやすいことから取り組んでいますが、業界の多くのプレイヤーはデジタルヘルスに乗り出していないのが実態です。特に製薬会社は、医師のサポートツールとしてアプリを提供するなどはありますが、新たなビジネスチャンスとは捉えていないようにも見えます。
AppleがiPodを販売し、2003年にiTunes Music Storeを始めた時、多くのレコード会社は脅威に感じていなかった、と言います。レコード会社から販売されるCDなどのフォーマットがメインストリームだと疑わなかったためです。それが10年経った現在、まったく様相が変わってしまいました。少しオーバーかもしれませんが、この状況は医療業界にも言えることではないのでしょうか?
今回、MobiHealthNewsが10ページに渡り、製薬にまつわるデジタルヘルスの事例を紹介しています。今のビジネスがモバイルヘルスプレイヤーに取って変わられたら? と想定し、製薬会社が取り組むべきポイントはどこか、記事本文を読んでいただくと良いのではないでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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