『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“MyFitnessPal、コーチング提供の可能性高まる”
去年の資金調達から、今年2月に初の買収を行なったMy FitnessPal社は、新たな収入源を模索している。
MyFitnessPalのエンジニア副社長Vijay Raghunathan氏は、ブルックリンで開催された「HxRefactored(以下、HxR)」カンファレンスにおいて、「現在、当社は広告収入で運営されており、外部の支援を受けていない。創設からおよそ9年になるが、資金集めをしたのは昨年だけだ」と述べた。「当社の全体的目標は、広告は独立を保つ良い方法だと思うが、当社は多くの価値をユーザーに提供していると思う。誰かに『体重を減らすためにいくら払う?』と聞いたなら、結構な額を払うことがわかるだろう。現在の当社の目標はユーザーに課金する適切な方法を見つけることだが、それでも多くの中心的製品が無料のまま残るだろう」。
MyFitnessPalは昨年の8月、Kleiner Perkins社から1,800万ドルを調達し、その資金の一部をヘルスコーチングのスタートアップSessions社の買収に費やした。共同創立者のNick Crocker氏によると、それは取得時点で85%の持分取得だった。Sessions自体はなくなったが、SessionsチームはMyFitnessPalの製品チームに加わり、コーチングはMyFitnessPalにおける今後の収益戦略の大きな部分を占めることになりそうだ。MyFitnessPalの現製品開発リーダーのCrocker氏は、HxRセッションでそうしたビジョンを明確に語った。
「抗生物質のように良く効く最高の製品はいくつもの要素を結合させる、とわたしは考える。すなわち測定と追跡のためのハードウェア、能動・受動のデータ収集、サークルまたはグループ、コーチの両方の支援、教育プログラム、それに成功への非常に明確で示唆に富む道だ。当社が作る製品は、数週間ではなく何年にもわたって人々を参加させる。そうした製品はスマートに名前、身長、体重、ユーザー名、Eメールアドレスだけでなく、さまざまな事項を把握できる。ユーザーや環境が変わるにつれ、適合して柔軟に変化する。それはひとつの関係性なのだ」。
Crocker氏は、Katherineという名のコーチと、運動を増やそうとする人とのメールのやり取りを例に、この問題に人間が持ち込むさまざまにニュアンスを引き出した。
「Katherineはコーチとして、幅広い対話方式を用いる。彼女は口調にとても気を配り、思いやりがあり、正確で、相手に合わせて仕事をする。例えば、トムというクライアントについて、家族、飼い犬の名前、仕事の予定、運動の好み、テニスの相手などすべてを知る。自社製品のユーザーについて知れば知るほど、それだけ製品を良いものにできる。だが、Katherineがするのはそれだけでない。タイミングに気を使うのだ。メッセージを送る時、活動の間に送るか、またはその前後に送るかに気を配る。送るメッセージの数を調整する。仕事において、予定どおりでも機械的でもない。Katherineを手本にして始めるなら、Katherineの声を持っているようなものを製品として、ユーザーにもっと効果的・人間的に語りかける方法がわかるはずだ」。
MyFitnessPalは、実際の人間のコーチを関与させることになるのか、それとも人間のコーチングを真似るソフトウェアを開発し続けるのか? と尋ねられると、Crocker氏は「スライド料金制を利用して、両方が可能であると考える」と答えた。また、Raghunathan氏は、「人間のコーチングの方が料金を支払ってもらいやすく、既存のソリューションより費用効率の良い方法で行なえると考えている」とも語った。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』5月15日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは、今月日本語版がリリースされた全米No.1ダイエットアプリ『MyFitnessPal』の今後の展開についてです。
スマホアプリの登場、ウェアラブルデバイスの発展により、世界的に多くのダイエット、フィットネスコンテンツが増加しました。しかしその多くは計測データをグラフ化するなど、「チェック」までに留まってしまい、ユーザーが求める「どうやったらダイエットできるか?」などには答えられていないため、ユーザーがお金を払うまでに至っていないのが現状です。
『MyFitnessPal』もアプリでは、データの見える化までしか提供できていないため、収入源は広告(その他はBtoBでの提供などあり)となっています。ただし『MyFitnessPal』の場合、登録ユーザー数が4,000万人(昨年8月発表時点)を越えているので、広告価値もかなりなものですが、ダイエットサービス自体で収益化したいのは当然の流れ、と言えます。
そのなかで彼らが注目したのが「コーチング」です。今回、コーチングに関して詳しく解説しませんが、副社長であるRaghunathan氏が、
『人間のコーチングの方が料金を支払ってもらいやすく、既存のソリューションより費用効率の良い方法で行なえると考えている』
と述べています。
提供側はWeb(アプリ)でサービス提供する以上、オートメーション化が望ましいと考えてしまいます。本当にWeb(アプリ)だからとすべてを自動にするべきなのでしょうか? 皆さんも1度くらい「メールで人とやり取りしているつもりが、まったく見当違いの返答が来た時、自分は必死になって機械とやり取りしていたのか! と気付き、一気にモチベーションが下がる」なんて経験はないでしょうか?
ダイエットやフィットネスなどは、目的や体質、経験など個別性が高いものです。すべてを自動化すると上記のようなことが起こりやすくなります。自動化ありきではなく、サービスのレベルによって住み分けするなどの整理が必要になります。
ダイエットなどのヘルスケアにおけるコーチングに関しては、もうひとりのライター里見が専門的に研究しています。ご興味のある方は問い合わせしてみると良いと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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