『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースは2つです!
============================================
“iOS向けの健康アプリ『HealthKit』、『Health』発表”
「WWDC14」で発表されることが期待されていたもののひとつとして挙げられていた健康管理アプリが発表された。事前情報では『Healthbook』という名前が報じられていたが、発表されたのは『Health』という名前のアプリと『HealthKit』という開発者向けフレームワーク。
iPhoneは血圧計や心拍計を内蔵していないので、計測についてはサードパーティー製の機器と連携する。フレームワーク『HealthKit』でデバイス、アプリの連携情報をまとめ、『Health』が実際に健康管理を行なうアプリということのようだ。
このデータを病院へ送信することで、何かあると病院側からアラートが送られてきたりするようになっている。
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
“Samsung、フィットネスバンドのリファレンスデザイン『Simband』など発表”
サンフランシスコ発–Samsungは米国時間5月28日、ウェアラブル製品ユーザーの心拍や血圧を含む特定のヘルス特性の測定をより優れたものとする新しいオープンソフトウェアとリファレンスデザインハードウェアを披露した。同社のフィットネスバンドリファレンスデザイン『Simband』は、将来のウェアラブル製品に使うことができる新しいセンサモジュールを組み込んでいる。一方で、『Samsung Architecture for Multimodal Interactions(SAMI)』と呼ばれるクラウドベースのソフトウェアプラットフォームは、デバイスから分析用のセンサデータを収集できる。
考えられる可能性として、音響学や光学、発電などの分野の新しいセンサは空気中の物質を感知したり、ユーザーの血中グルコースレベルを追跡したりできるようになるだろう。
Samsungのプレジデント兼最高戦略責任者(CSO)であるYoung Sohn氏は、「われわれの目標は、ユーザーの身体について今よりもはるかに多くの情報を感知できるセンサをいつか手に入れることだ」と述べた。
『Simband』は「研究目的のデバイスで、発売はしない」という。同デバイスは、Samsung自身の『Gear Fit』など、現在市販されているスマートウォッチより野心的だ。『Simband』は基本的に実験台で、開発者は同デバイスを使って、独自のセンサやアルゴリズム、テクノロジを提供することができる。Samsungは、これを2014年中に開発者向けに提供する計画だ。価格は明らかにされていない。しかし、一般消費者が購入できる製品とはならないだろう。
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは、スマートフォン2強のAppleとSamsungが発表したヘルスケアへの取り組みについてです。
Samsungは今年発表した『GALAXY S5』、『Gear Fit』など専用の健康アプリ『S Health』を発表しました(S4にも同アプリはあるものの、現状『Gear Fit』などと連動するのは新バージョン『S Health 3.0』のみ)。S4を米国で発表した頃から健康プロジェクトについては先行発表していたように、ヘルスケアへの取り組みはAppleより先行していることをアピールしたい、との思いがあったのでしょう。今回Apple恒例のWWDC開催日4日前に発表イベントを開催しました。
Samsungがユニークなのは、「開発段階のものを発表した」ということ。また、『Google Glass』のように「開発者に先行提供する」考えがあることです。ここ数年のSamsungのヘルスケア動向を見ていると、ヘルスケア分野においてはAppleよりも早く、独自性の高いものを出していきたい意欲が伝わってくるのと同時に、簡単には糸口が見つからなく、もがいているように感じられます。
一方Appleが発表した『HealthKit』、『Health』は、詳しい説明までされなかったので真相はわかりませんが、取り立てて変わったものはありませんでした。皆さんにとっても、すべて予測の範囲内だったのではないでしょうか!?
発表を聞いて最初に感じたのは、「2007年にスタートしたMicrosoftの『HealthVault』の現代版」でした。当時発表された『HealthVault』は、歩数計や血圧計のデータをUSBでPCを経由してサーバーにアップし、医療機関などに提供するというものです。これらの仕組みをPHR(パーソナルヘルスレコード)と呼びますが、我々が見ていてPHRで成功したモデルはいまだありません。
データを集めたその先に「データを価値あるものへの変換」が、ユーザーにとってもっとも重要になります。この2社の発表からは、残念ながらその側面は見えてきませんでした。今回の発表とは別にSamsungが『S Health』を活用したサービス展開を複数社と準備していますが、ユーザー価値はむしろ、そちらにあるのではないかと思っています。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
Comments are closed.