『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“NYの保険会社が健康トラッキング端末プランを発表、歩数ゴール達成でお小遣いも”
保険会社には保険会社の考えがあるようで、昨今巷で人気の健康トラッキング端末に目をつけているという話だ。ニューヨークを拠点とした保険会社Oscar Insuranceが、新たなプランを打ち出しており、プランの一環としてMisfitのフィットネストラッカーがついてくるという内容になっている。被験者の健康状態に合わせたゴールが定められており、そのゴール(歩数)を達成すると毎日1ドルが付与されるという真新しいプラン内容。20ドルに達するとアマゾンギフトカードに交換することができる。1年でマックス240ドルまで、歩くだけで稼ぐことができるという仕組みである。
被験者がすでに健康トラッキング端末を使用している場合は、アップルのHealthKitと連携ができるものに限って、継続して自分の端末を使うことができる。現在は歩いた歩数のみがプランの対象だが、今後は自転車や水泳にも広げていきたいとのこと。
Oscarの共同創設者であるMario Schlosser氏によると、1万7,000人以上の人が、すでにこのプランへの参加を決めているという。Schlosser氏は、「米国で大きな問題となっている肥満、糖尿病、腰痛、精神疾患などを撃退するために日々の生活で何ができるのか、研究結果を見てみると、多くの医者がもっと体を動かすべきだ、もっと歩けと言っているでしょう」とコメントし、無料の健康トラッキング端末とちょっとしたお小遣いが、長期的な健康に役立つというアイデアを語った。
このお小遣い制度は、Oscarの打ち出す他社との違いの1つであり、他にもアプリを使って医師と連絡がとれるなど、Oscarならではのプランや機能をアピールしている。現在、Oscraの保険を利用することができるのは、ニューヨーク州とニュージャージー州のみ。今後、全米への展開を考えているようだ。
Oscarは小さな保険会社だが、このような新プランの存在は長期的にみて必ずペイできるものだと自信あり。また、集めたデータで今後クライアントに何が提供できるようになるのかも、会社が成長するための楽しみの1つだという。
記事原文はこちら(『GIZMODO』2014年12月18日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回の注目ニュースは、NYの保険会社が打ち出した「ウェラブル端末の現金によるインセンティブ」を組み込んだ新プランの記事です。
このニュースには、ふたつのポイントがあると感じています。
まずひとつ目は、米国で注目を集めているウェラブル端末(健康トラッキング端末)を保険のプランに組み込んだ点。
そしてふたつ目は、そのウェラブル端末(健康トラッキング端末)を使わせるために現金によるインセンティブの仕組みを組み込んだ点です。
ウェラブル端末(健康トラッキング端末)を保険プランに組み込んだことで、加入者は保険の加入でウェラブル端末(健康トラッキング端末)が無料で手にできるので、それだけでも注目を集められます。
さらに、このウェラブル端末(健康トラッキング端末)を使用してゴール(歩数)を達成すると毎日1ドルのご褒美(インセンティブ)がもらえるということで、 現在保険を利用できるニューヨーク州とニュージャージー州だけで、既に1万7,000人以上の人がすでにこのプランへの参加を決めているようです。このプランへの興味と関心が高いことがうかがまえす。
このプランについては、加入者獲得としては効果的なプランであることは間違いないと思いますが、果たして加入者にとって1日1ドルのご褒美の効果がどれだけ継続に寄与するのかが気になるところです。
我々はこれまで、健康行動の継続に作用する支援技術を抽出・整理し「継続ドライバ」と命名し、独自の視点で整理、分析を行なっています。
この「継続ドライバ」のなかに今回のニュースの「インセンティブ」もあります。
しかし、「インセンティブ」には、「物理的インセンティブ」と「心理的インセンティブ」の2種類が存在し、 今回紹介した現金によるインセンティブは「物理的インセンティブ」に分類され、どちらかというと初期のきっかけづくりに効果的なインセンティブです。
日本でも「ヘルスケアポイント」の動きが活発になっているなか、「インセンティブ」をどう位置付けて、どんな対象者に向けて提供し、どんな効果を期待するのか、しっかりと見極た提供が必要になってきています。
今回の米国の保険会社の取り組みは、中長期的な「継続」および健康効果や改善を狙ったインセンティブというよりも、加入者獲得に向けたインセンティブの活用と見るべきではないかと感じています。
なぜなら、現金によるインセンティブでも、すべての人のモチベーションを維持し続けるエンジンにはなり難く、やはり「心」に響くことが「継続」には必要になってくるからです。
「心」に響く、「心」が動くインセンティブをITCヘルスケアサービス、モバイルヘルスにどう組み込んでいけるかが、今後のポイントだと思います。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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