『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“スマートウォッチは、重要な市場を見落としている”
スマートウォッチが注目を集めているが、大事な市場を見逃している。
例えばIndependa、Numera、Honeywell、Caremergeのような自宅をモニタリングするプラットフォームは、自宅にいたいと望む高齢人口の要求に応えているが、ウェアラブル端末業界は高齢層をターゲットにしていない。出先での健康を約束するおしゃれなアクセサリーなど、ウェアラブル端末業界のターゲットは若い世代に偏っている。
iTOK社のコミュニケーション部門部長Andrew Parker氏は、「特に高齢者には扱いやすいものではありません」と話す。iTOKはコンピュータ技術のコンサルタント企業であり、高齢者(その他の人も)がテクノロジーを使いこなせるように手助けすることに特化している。「努力はしているのかもしれないが、市場のニーズにまったく合っていません…彼らは正しく理解する前に失敗してしまうでしょう」。
しかし、普通の人たちよりも医療費を消費する集団にとって、特に慢性疾患の管理では、ウェアラブルモニタリングは役立つだろう。実際、先月iTOKが心臓の健康に焦点を置いて実施した調査によると、30%の高齢者が現在自分たちの心臓をモニタリングするテクノロジーを使用しており、95%の人が医師にアドバイスされれば同様のテクノロジーを使うだろうと答えた。
高齢者に焦点を当てたmHealthは、アクセンチュアの2014年患者エンゲージメント調査で重要な部分を担っていた。この調査によると、3人に2人の高齢者が独力で自分の健康を管理するためにセルフケアテクノロジーを使いたい、と答えている。また62%の高齢者が、バイタルサインを監視できる健康モニタリング装置を身につけることに前向きな姿勢だ。
アクセンチュアの関係者は、50才以上の市場に焦点を置いたデジタルヘルスの立ち上げに記録的な額の資金が使われていることをAARPのレポートが示唆している点を挙げている。特に、バイタルのモニタリングに資金が使われている(2013年に投資額が2億6,600万ドルでトップであった。この額は、2011年と2012年分を足した額よりも多い)。
Parker氏は、「高齢者向けの理想的なウェアラブル端末には生体測定も含まれる」と話す。例えば血圧、心拍数、血糖のセンサーなどだ。また理想的なウェアラブル端末は、装着しやすく、読みやすく、使いやすくなくてはならない。そして強固なプラットフォームと連携して、介護チームとリアルタイムでコミュニケーションできるようにしなくてはならない。
在宅健康モニタリングプラットフォームには、ペンダントのようなウェアラブル端末もある。例えば、「Help, I’ve fallen and I can’t get up(助けて。転んで起き上がれない)」の端末には機能がいくつかある。しかしほとんどのプラットフォームは、パソコン、タブレットに焦点を置いている。実際にAARPの調査によると、高齢者に好まれるテクノロジーはパソコンが1番にランクインすることがわかった。2番目はタブレット、3番目は電子書籍リーダー、そして4番目にスマートフォンである。
この傾向に強く反発しているのがLively社である。Livelyは、在宅健康プラットフォームの一環として、セーフティーウォッチを高齢者向けに販売している。サンフランシスコに拠点を置くこの企業は、セーフティーウォッチのデザインはおしゃれであり、ディスプレイも読みやすく、緊急時に押す大きなボタンがついており、自宅のデバイスと自動的に同期が取れると述べている。
AARPは、自身のテクノロジー製品も販売している。しかし彼らの製品は、Apple Watchを取り巻く過剰な広告と比べると存在感が薄い。
Parker氏は、「テクノロジーを使った、本当に惜しみのないサポートが必要です。それは、高齢者が苦手意識を持つようなものではいけません」と話す。高齢者らをテクノロジーに導いて気持ちを落ち着かせ、必要な時には介護士と即座に連絡を取れるようにしなくてはならない。
「企業は間違いなく、高齢者向けの市場に売り込まなくてはならないのです。市場はここに存在していて、ニーズもあり、要望もあるのです。彼らは医師や病院と手を結び、説得しなくてはならないでしょう」。
記事原稿はこちら(『mHealth News』3月18日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
すでにApple Watch販売前からスマートウォッチ市場が激しい戦いとなっています。日本にいると、スマートウォッチがそれほど賑わっているようには思えないかもしれませんが、北米、ヨーロッパ圏ではスマートフォン以上に取り上げているショップも多くなっているようです。
今回の記事では、ニーズがある高齢者に向かうべきではないか? と指摘しています。高齢者の外出時用のウェアラブルとしてはすでに転倒時、心肺の異常発生時(任意も含め)に緊急連絡されるものなどあります。しかし、これらのウェアラブルは、心配する家族に持たさせれる“緊急時に使うだけのもの”であり、高齢者が自ら若者のように、普段の生活でも楽しみながら使えるものとは違うものになっています。
高齢者のなかにも、緊急時用のシンプルなものが良いと思う方と、普段の生活を豊かにするツールの付加価値であって欲しい方とニーズは別れると思います。高齢者に対しても、セグメント、ターゲッティングを細分化し、他社にない魅力的なデバイスを提供する時が来たのではないでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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