『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Mount Sinai、デジタル医療の道を開くデータ共有プロジェクトを開始”
Mount Sinai HospitalのAppLabディレクターAshish Atreja博士は、デジタル医療に根拠を与える確固たる核となる部分が欠落していることを問題視している。こうした意見は珍しくはないが、Atreja博士は、事態を改善する鍵は「協力すること」だと考えている。「HIMSS16」のレセプションで、医師たちに『NODE Health(Network Of Digital health Evidence in Health)』という新しいデータ共有プロジェクトを使ってデジタル医療データを試験的に共有するように訴えた。
Atreja博士は、「エビデンスに基づくデジタル医学があって、初めて医者はアプリを処方するべきです。しかし、どうすればいいのでしょう? ひとりでは不可能なので、ネットワークを立ち上げようとしています。開かれたネットワークで、大学の医療機関や新興企業、非営利団体が多数テストに参加してくれそうです」と語った。
Atreja博士はこれを「デジタル医療パイロットプロジェクトにおける”clinicaltrials.gov(米国国立衛生研究所:NIHが運営する臨床試験登録サイト)”」と評した。病院は1ヵ所での調査の取り組みに関して、できる限り多くの情報を共有することで重複を避けられる。
「ひとりですべてをやる必要はありません。私はBoston Children’sやKaiserとの討論会に参加したところ、なんと開発に取り組んでいる7つのパイロットプロジェクトのうち6つが同じ技術だったのです。 私たちのチームは毎日こうしたパイロットプロジェクトに取り組んでいます。他のパイロットプロジェクトでやっていることは、なにひとつやる必要はなく、次の段階へ進むことができます」。
また、『NODE Health』には、こうしたパイロットプロジェクトを効率的な方法で進める枠組みを構築する、という目的もある。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2016年3月3日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点
先日のHIMSSでの各発表からも、デジタルヘルスの動きが加速しています。なかでも今回注目したのがMount Sinaiの動向です。
西海岸を代表するヘルスメンテナンスオーガニゼーション(以下HMO)といえば、Kaiser Permanenteでしょう。Kaiser Permanenteの取り組みは、mHealth Watchでも何度か紹介してきました。デジタル(モバイルも含め)をうまく活用し、Kaiser Permanenteが運営するWebサイト、アプリの利用率の高さは注目を集めてきました。対して東海岸を代表するHMOが、Mount Sinai Health Systemです。今まではKaiser Permanenteほど、デジタル活用による効果が話題にはなっていなかったような印象があります。現地を知る人に聞くと、医療に関する文化的背景の違いが大きいようです。
しかし、ここのところ、Mount Sinaiからデジタルヘルスに関するニュースが頻繁に届くようになってきました。今回取り上げた『NODE Health』については、Mount Sinaiのオフィシャルサイトにも情報はなく、始まったばかりのプロジェクトのようです。
『NODE Health』は、Atreja博士のコメントからも、「デジタルの薬=情報薬」をしっかりと整備していく意向があることが伺えます。FDAによる認可か、Mount Sinaiの独自認可かまではわかりませんが、薬として開発し、アプリによって患者に提供することを検討しています。
Atreja博士は、「私たちがこのイノベーションセンターを立ち上げた時の目標は、アプリに分析を加味することでした。それは実に素晴らしい構想といえます。しかし、ひとつ大事なことが欠けていると思います。アプリには分析に加えて患者との関わりが必要なのです。関わりとはサービス提供の科学で、測定したり、公表できるものではないので、機能しているのか機能していないのかもわかりません」とコメントしています。アプリが情報薬になる、との段階から一段上のフェイズでアプリの活用が検討されているようです。
デジタルを活用した情報薬の本格導入は、すぐそこまで来ている、と言えるのではないでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
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