『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Phoenix Children病院、iPadを使って患者に娯楽と教育を1つのパッケージで提供”
Phoenix Children病院には患者の気晴らしのために全室にテレビが設置されていた。また患者教育にはDVDが置かれたカートを部屋から部屋へ移動させていた。しかし、ここ2年間でテレビとDVDをやめてiPad を使うようになった。iPadを使えば小児患者たちに娯楽も教育も提供することができるためだ。
Phoenix Children病院の副部長兼最高総務責任者のDavid Higgenson氏は、「HIMSS18」において「私たちはかつてそこにテレビを置いて、これが患者たちの娯楽になると思っていました。しかし、もう長いこと私たちの家にはケーブル(ケーブルテレビ:ケーブルを用いた有線放送)がありません。私の娘はケーブルの使い方も知りません。患者たちは、例えば Netflix を見たりできないのでイライラします。子どもたちも患者たちも、新しい体験に馴染んでいるのです」とコメントした。
小児患者は、途中で中断されずに2時間も映画を見続ける時間がないためテレビでは不向きだ。看護師が頻繁に検査や回診などに来て時間を取られる。ストリーミングして見られる娯楽のほうが小児患者たちには合っているのだ。
また iPad を使って患者たちに映画やゲームを提供できれば、教育的な情報を届けることもできる。「私たちは安全性と教育に関する短い映像をつくりました。ほんの1~2分の映像です。その映像を見なくては映画が見られないようになっています。映画が患者の生活スタイルに合わないのと同じように、DVD を一度に見るスタイルも患者たちに合いません」と、Higgenson氏は述べた。
「家族の誰かが病気になったご家族が来るたび、彼らは自分たちのやり方と時間で病気を受け入れていきたいのだと、何度も何度も感じました。患者がこれまでと違う現実を受け入れようとしているとき、彼らが短い同じコンテンツを何度も何度も繰り返し見ていることに気が付きました」ともコメントした。
最近になって、病院は患者たちが iPad で食事を注文できる機能を始めた。各患者の食事療法やアレルギーに合わせてあるので、自分の食べられる食べ物しか表示されないようになっている。
デバイスの確保、年齢に適したコンテンツのみ提供できるようにすること、子どもが動画を見る時間について心配している両親がペアレンタル・コントロールをできるようにするなど、タブレットを取り入れるにはたくさんの課題があった。しかし、これらのハードルを解消し、過去2年間に400人の患者に提供することができた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2018年3月6日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
ラスベガスにて3月5〜9日に渡り開催された「HIMSS18」では、多くの医療関係者が講演します。その中で病院での取り組みを紹介したPhoenix Children病院の副部長兼最高総務責任者David Higgenson氏の講演内容がレポートされました。
現在米国の先進的な病院では、医師だけでなく患者向けにタブレットやVRなど、モバイルの活用が盛んなのはご存知かと思います。今回紹介された小児病院の取り組みもそのひとつです。
ポイントとなるのは「患者エクスペリエンス」の視点です。特に米国では治療するだけでなく、その成果に対して支払いが決まる“CMS(Center for Medicare & Medicaid)”が導入されていますので、トータル的な患者満足度(気持ちの面でもよりよく治療に向かえる)を高めることが重要視されています。
Phoenix Children病院の取り組みでは、“選択の自由”に注力していると思われます。人は常に何かを自分で選択して生きていますが、病院ではすべてが決められてしまい、ストレスに感じることがあります。形だけの娯楽ではなく、患者が満足感を得られる形で娯楽を提供し、無理のないやり方で患者教育を取り入れています。
娯楽を提供しているつもりにならない、本質的な満足度の追求が、結果的に治療に貢献すると言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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