『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“デジタルヘルス企業は2021年にFDAから離れるべき”
2020年はCOVID-19、FDAデジタルヘルスポリシーの移行の年となり、多くのデジタルヘルス企業は2021年の規制戦略を決定するのに苦労している。
FDA(米国食品医薬品局)の規制、臨床試験の幅広い問題について、医療機器、医薬品、および組み合わせ製品の企業に助言をしているBradley Merrill Thompson氏は、「FDAから距離を置くこと」を推奨している。以下はその助言となる。
FDAは今やるべきことを数多く抱えている。私が知っているFDAの人たちは、1年中、毎日ほとんど12〜15時間も働いている。COVID-19に関して言えば、検証面でも、政策立案面でも信じられない程の仕事をしている。彼らの奉仕に感謝の気持ちを示していきたい。
しかし、ビジネスとしては、可能であればFDAから離れる必要がある。私たちは現実に立ち向かう必要がある。近づかないようにする理由をお伝えする。
FDA規制を避けることができるのなら、それが正しい選択となる
前置きとして、「避けることができるのなら」の意味を説明しておくと、例えば、脱税と租税回避の違いは誰もが知っている。脱税とは、税金を払わないようにするために嘘をつくこと。 租税回避とは、例えばRoth IRAに資金を供給するなど、法に触れることの無いように慎重に計画を立て、税額を抑制することである。私はFDAを誤魔化すことではなく、なるべくFDAに手間をかけない事を提唱している。
FDAの規制は、基本的に製品に関する主張を中心に展開されている。通常、膨大な数のデジタル製品について、FDAが規制しない主張と、FDAが規制する主張がある。近い将来、規制されていない主張をわざわざ申し立てることを制限することの検討を強くお勧めしたい。
多くのデジタルヘルス製品の規制当局の認可までの道のりは長く、予測できず、費用もかかる
新規技術を多く使っている新規デジタルヘルス製品の多くは、既に市場に出回っている先行デバイスがないため、市販前届出の対象とはならない。結果として、そのような製品は「a de novo application(はじめての製品)」として提出しなければならない。
しかし、新規プロセスの元での申請は望ましくない。新しいデバイスに向けのガイダンス文書がなく、一般的な行程も明確でないという単純な理由から、非常に予測不可能である。
FDAは、実質的な同等性とは対照的に、デバイスの基本的な安全性と有効性を審査することになるので、多くの広範囲な質問を寄せてくる。また、一般的に臨床試験が必要とされ、それらの試験には多額の費用がかかってしまう。
FDAの認可を求めることで、マーケティングまたは償却後利益を生み出さない可能性がある
何社かの顧客が、FDAの承認はグッド・ハウスキーピング認定証のようなもので、品質保証となるので、FDAの規制をパスしたいと相談に来たことがある。顧客や債権者にも受け入れ易いためだとも言っている。
この問題についての、あまり良いデータを見たことがない。例えば、一部の企業がFDAの認可または承認を取得し、他の企業は取得しない対照試験を行うことの難しさが想像できるでしょう。
私が知っている顧客は、FDAの認可や承認を追求するのが正しいと信じて手続きをしたが、実際にFDAの認可や承認を得た段階では、その正当性に疑問を持っていたということだ。FDAの認可や承認だけでは、収益の大幅な増加には繋がらなかったからである。
FDAの認可は、規則に違反する競争状態から企業を守るものではない
デジタルヘルスにおけるFDA規則の徹底は、何年も前からほとんど行われていない。ある時は、FDAがほとんど目をつぶって規則違反を見逃しているような状況だったので、私が議会の場で証言を行って程だ。結局FDAは執行書を送る破目になった。
FDAは発出した警告書をウェブサイトで公開している。本稿を執筆した2020年時点では、医療機器・放射線保健センター(CDRH)からの警告書は27通発出されている。おそらく驚くことは無いだろうが、最近発出された16通の警告書はすべてCOVID-19関連で、誇張された、あるいは証明されていない主張を含んでいたものに対して出された。以前は、警告書は医療機器の報告から品質システムの問題まで、問題の寄せ集めだった。しかし、そうした問題の中にただの1つも、デジタルヘルス製品に対するFDA未承認の苦情はなかった。
現状を踏まえると、明らかにCOVID-19がFDAの優先順位を変えたと言える。FDAは、必要に応じてFDAの承認を受けていないアプリ、その他のデジタルヘルス製品に警告書を送ってはいなかった。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2020年12月23日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回取り上げたニュース、いつもより長い文章と思うかもしれませんが、これでも原文からの抜粋です。Thompson氏が本気で伝えたいことが詰まっているので、ぜひ原文もお読みください。
このニュースを取り上げたのは、昨年、デジタルヘルスに関する厚生労働省の認可について質問されることが多くなっていたためです。
きっかけは米国の某デジタルヘルス製品が厚生労働省で認可されたことです。「実機の精度はけっして高くはないのになぜ認可されるのか?」というものです。
私は認可の理由より、自社のテクノロジーでなぜ認可を得たいのか?の方が重要と思っています。
もし売上に貢献するためと考えるなら、ぜひ今回の記事を読んでいただきたいです。厚生労働省であれ、FDAであれ認可されたことで、売上が安定的に伸びていくことはないのです。それよりも、新しいテクノロジーであればあるほど、信憑性を証明することに時間もコストも膨大にかかってしまいます。しかし、認可されたことでそのコストを取り戻すことは、ほぼ不可能なのが実態です。
認可・承認は安心には繋がりますし、その安心がないと導入してくれない市場もあります。それはその市場で勝負することを決めてから心配するべきことです。
デジタルヘルスでビジネスしていくのであれば、まずどの市場でどのように提供するのか?を決めることからスタートすべきであり、認可・承認は次の段階で考えるべきものと言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、本質的健康経営の社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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