『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“TapCloud、高リスク患者の訪問の間のケアギャップを埋めるのに役立つAI”
医療従事者が訪問診療を行う間にも患者には多くのことが起こる。特に持病を持つハイリスクな患者であればなおさらだ。全国的に医療従事者が不足している状況の中、24~48時間の間に患者を選別し、最もリスクの高い患者に優先度をつけるための人出を割くことは現実的ではない。
現在患者向けポータルサイトでは即応性のあるオプションを用意しており、もし診療の間に容体が悪くなれば患者は優先的に治療を受けたり、専門医に診てもらうことがでる。 Q&A形式でやり取りを行うことで患者と医療従事者はコミュニケーションをとることができる。
しかしこの方法では毎日の体調の変化をリアルタイムで把握することはできない。特にハイリスクな患者にとっては重大なこととなる。
ヘルステクノロジー企業のWellSky社は、このケアのギャップに対処し、予測AIテクノロジーで結果を改善することでさらに一歩前進することを目指しています。
2月下旬、WellSkyは、患者と医療従事者をリアルタイムで結び、診察の間の治療のニーズに応えるバーチャルエンゲージメントテクノロジーカンパニーであるTapCloud社を買収した。TapCloudの技術は電子カルテにとらわれるものではない。WellSkyはTapCloudのAI技術を活用し、自社のAIによる予測技術を強化したいと考えている。
シカゴを拠点とするTapCloudは患者が症状を入力できるAI技術を持っている。スマートフォンの画面上に文字が出てくるので、患者はその文字をタップして現在の体調を入力するだけでよい。アプリには、寝汗や胃のむかつき、手のむくみなどの症例が表示される。患者は自身の体調に最も相応しいものを選択することができ、「元気がない」「良い」「快適」など、自身の気分を表現する言葉も一緒に選ぶことができる。そのデータから、医療従事者は適切な治療を行うことができます。
「ハイリスクな患者から日々情報が得られることで医療従事者は必要に応じ積極的に対応できるようになりました。これによりこのパートナーシップは、転帰の改善、満足度の向上、これまでの訪問診療の範囲を超えた治療の管理といった、継続的かつ効率的なものへと変わったのです」とWellSkyのCEO、Bill Miller氏はメールで述べた。「TapCloudは、患者とその家族と医療従事者の間で現在行われているコミュニケーションを可能にし、膨大な患者のリストからその日の優先度順に表すことができる。患者と医療従事者のどちらにとっても最小限の時間で、実用的な情報を流動的に交換することが、今日の医療に欠けているものなのです」
このパートナーシップはただコミュニケーションを増やすことで治療におけるギャップを埋めようとしてはいない。Miller氏によると、このAIによって、患者と医療従事者のコミュニケーションだけでできることよりも包括的な治療が可能になると言う。
「TapCloudはAIを活用し自社の特許取得済みの患者とのエンゲージメントプラットフォームを活性化させており、患者との交流のコンテンツをどのようなものにするかを決定しています。WellSkyは、データ研究とAI・機械学習の専門家からなるチームを活用し、医療機関が提供する電子カルテと患者が提供する症状や健康状態のデータを組み合わせた、これまでにない主要機能をTapCloudのプラットフォームに継続的に追加していきます」とMiller氏は説明する。
記事原文はこちら(『MedCity News 』 2022年3月5日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
医師、もしくは専門職に代わってコミュニケーションするためにAIを活用しようと考えることがあります。
「医師(や専門職)の代わり」と言われると、利用する患者としては「医師の代わりを果たす」ことを求めてしまいます。つまり症状を伝えたり、質問したら適切なアドバイス、指導をしてくれることを期待します。
特に“適切な”がポイントです。他とは違う、現在の自分にあった言い方が必要になります。「患者の困っている状態に寄り添うような受け答え」と言うとイメージできるでしょうか!? ただ正しい答えが欲しいのではないのです。患者は、今の自分にあっているのかを感覚的に判断したいものです。
ここはやはり感情を持った人間の領分です。この要素が欠けるとコミュニケーションが円滑にならず、患者の満足度、納得感も減少してしまいます。
その対策として、画面上でキャラクター化したり、ぬいぐるみ型ロボットなどを使って、患者に感情移入しやすくさせるなど、いくつかのアプローチが取り組まれています。
それでも人には敵わない部分はどうしてもあります。
今回紹介するTapCloudの取組みは、患者と医師をつなぐためにAIを活用しています。AIで医師の代わりをするのではなく、医師に適切につなぐために必要なツールであることを、利用する患者にも理解してもらい使ってもらっています。
患者がツールの役割を理解することで、ツールの先にいる医師を意識して(安心感を持って)日々入力することができるでしょう。
ヘルスケア領域においてAIの使い所はまだまだあります。まずは、利用者の感情がどう動くのかを研究し、適切な導入場所を見つけ出していってください。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、本質的健康経営の社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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