『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Calm、従業員の20%を解雇”
The Wall Street Journalは、Calm社が約90人の従業員を解雇し、約400人を雇用したと報じた。David Ko最高経営責任者の覚書には、同社が「現在の経済環境の影響を免れることはできません」と書かれていた。
「我々は軽々しくこの決断に至ったわけではありませんが、この変化が将来を優先し、成長に焦点を当て、より効率的な組織になるうえで役立つと確信しています」とKo氏は記している。
Ko氏は、以前、体調管理やケアを支援するアプリを開発するRipple Health Group社の最高経営責任者を務めていた。同社は今年初めにCalmに買収され、Ko氏はMichael Acton Smith氏と共同で最高経営責任者に就任した。Ko氏は、今夏の初めに単独の最高経営責任者となった。
Calmは2020年12月にシリーズCラウンドで7500万ドルを資金調達し、同社評価額を20億ドルに引き上げたと発表した。同社はそれまで、2019年にシリーズBラウンドで総額1億1500万ドルを調達していた。
ここ数カ月、多くのデジタルヘルス企業が従業員を解雇している。TechCrunchは最近、デジタル薬局のTruepill社が今年3回目の人員削減を行い、175人を解雇したと報じた。
先月末には、バーチャルケア企業のIncluded Health社とデジタル治療薬製造のPear Therapeutics社が人員削減を行った。Included Health社は6%弱の人員削減を行い、Pear社は正社員の約9%に当たる約25人を解雇したと発表している。
ヘルスケア自動化を目指すOlive社も7月に約450人を解雇し、より迅速な黒字化を目指した新戦略へと舵を切った。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2022年8月15日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
米国では物価の高騰、各業種で賃金が上がり失業率も低下するなど、インフレ傾向が続いています。
全般的に賃金を上げてまで雇用を増やす傾向にあるのに対し、デジタルヘルス分野では人員削減が増加しています。急速に伸ばしてきたCalmまでが人員削減を行いました。(Calmは削減だけでなく400人雇用もしていますが)
なぜデジタルヘルス分野で、こうも人員削減が増加しているのか、まだ分析された情報がありませんので断定はできません。ですが米国で起きていることとは言え、デジタルヘルス分野での人員削減は他人事とは言えないものがあります。
人員削減を行った多くの企業は、多額の資金調達を達成しているため、直近の資金に問題があるとは思えないのですが、収益の見通しが立っていない企業が依然として多いのではないでしょうか?
これは今に始まったことではありませんが、デジタルヘルスはまだ世にない、テクノロジーを駆使したビジネスモデルを提案するものが多いです。
つまり、まだビジネスとして市場が形成されていない領域にアプローチしているものが多いため、収益化できる市場形成まで時間を要してしまいます。
この収益化できる市場は、数年待てば必ず形成されるとは言えません。そのため見通しが立て難くなります。
Calmは睡眠改善におけるテクノロジー活用で、収益化する市場形成までいくことができましたが、新たなチャレンジとしてメンタルヘルスへのアプローチをスタートしました。
もしかすると、メンタルヘルスにおけるテクノロジー活用による市場形成が、まだ見通しが立たないのかもしれません。
テクノロジーによる新たなチャレンジには、期待値だけではなく、収益化する市場を形成するまでのストーリーをしっかり描くことが重要になってきます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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