『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“研究:AIを活用した予防的健康対策は、人間味を付加することでユーザーが受け入れる可能性が高まる”
シンガポールの南洋理工大学の研究者が主導した研究は、人間の健康専門家が関与した場合、AIの提案による予防的な健康介入が人々に受け入れられやすくなることを明らかにした。
また、AIを活用した予防医療への信頼は、人間の専門家が主導する介入よりも低いことが分かりました。
同研究では、健康診査や身体活動の促進などAIが提案する予防的な健康介入について、人間が推奨するものと比較し、ユーザーがどのように感じるかを調査しました。韓国で約15,000名の被験者が参加し、非公開のモバイルヘルスアプリを使用した。
最初の9,000名の被験者は、次の3群に分けられた。1つ目の群にはAIが推奨する1日の歩数が提示され、2つ目の群には人間の専門家が推奨する歩数が提示され、3つ目のコントロール群はAIにも人間の専門家にも言及しない中立的な介入を受けた。
AIの提案を受けた被験者のおよそ5名に1名が介入を受け入れたのに対し、第2群の22%の被験者は人間の専門家による推奨を受け入れる結果となった。
その後、別の被験者を募り、第1の群には健康専門家と連携したAIの活用の事実を開示して介入を、第2の群にはAIがどのように歩数に関する推奨を導き出したかを説明して介入を行った。
これらの群について、研究者は、AIまたは人間だけに基づく介入よりも、人間の専門家によって補完されたAIの提案による健康介入を、人々がより受け入れることに注目した。また、透明性のある、AIにより生成された介入を信頼する割合も高くなった。
Production and Operations Management誌に掲載されたこの研究結果は、医療システムが患者の診査、診断、治療にAIの導入を進めても、人間の要素が重要であることに変わりはないことを示唆している。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2022年9月7日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
オンラインでデータが取得できるようになった15〜20年位前から、ヘルスケア領域においても、取得したデータを元にしたアドバイスサービスが登場してきました。
日本ではメタボブームになった2008年前後にこのようなオンラインサービスが登場し、増えてきました。
当時はまだAIなど活用されていない時代でしたので、事前に組んだロジックで、このようなデータならこれを伝える。といったサービスが主流でした。
我々も、オンラインサービスに関するプロジェクトには多く携わってきましたが、そのときに感じたことが「思っていたほど、人は機械(システム)からのアドバイスを受け入れない」ということです。
例え同じアドバイスであっても、人に言われると受け入れられるのに、機械からだと行動に繋がらない。このような場面を目のあたりにしてきました。
時代が進み2013年頃、スマホブームが起きたときには、以前と同じようなサービス、つまり取得したデータから機械的にアドバイスを返すものが、アプリを通して提供されるようになりました。
結果は以前とまったく同じ反応でした。
米国ダイエットアプリの「myfitnesspal」がこんな実験をしました。「myfitnesspal」に記録したデータに機械的なアドバイスを提供するものと、同じく記録したデータを人がチェックしてアドバイスを提供するものを体験してもらい、参加者に値付けをしてもらいました。
結果的には機械的アドバイスには200、300円/月なのに対し、人が行うアドバイスには1万円以上との回答だったとのことです。
このテストをやってからすでに10年近くが経つわけですが、ある意味、結果は変わっていないようです。
ヘルスケアにおいてAIによる正確性は必要ではありますが、対象者が自分自身の行動に結びつくかどうかは、正確性だけではないのです。
この人を動かす、気持ちにアプローチするためには、人の要素は欠かせないものです。
では、全面的に人が見ないとダメなのか?
そんなことをしていたらコストがものすごくかかってきます。
実は、ここにビジネスを成立させ、利益を生む仕組みがあるのです。それはどんなものか?ぜひ研究してみてください!
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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