『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“調査: メンタルヘルス アプリの評価は、専門家と消費者の間で異なるものに”
研究者は、専門家のレビューと消費者のメンタルヘルスアプリのレビューの一致度が低いことを発見した。
JMIRに掲載されたこの研究は、2020年12月〜2021年4月の間に実施されたウェブ調査を用いて、11のメンタルヘルスアプリを評価したもの。評価したアプリは、Breethe、Calm、Headspace、Insight Timer Meditation、MindDoc、MindShift、Reflectly、Remente、Sanvello、Self-Help for Anxiety、Woebotなど。
消費者レビュー担当者は、メンタルヘルス問題の既往歴を報告し、選定されたアプリのうち3つをダウンロードし、3日間使用するよう求められた。そして21人の消費者からの評価を、臨床医や学識者による評価と比較した。
全体として、アプリの評価の半分以上が研究参加者とプロの評価との間で不一致を示した。専門家は一般の消費者レビュアーと比較して、アプリに高い評価を与え、他の人にアプリを薦める傾向があった。
調査参加者が取り上げた最も重要なテーマのひとつは「コスト」で、多くの人が有料コンテンツに到達したとき、あるいはプレミアムコンテンツに料金を支払う必要があるときに不満を感じていた。また、進捗状況の把握や測定、対処法や症状に関する情報などの教育コンテンツへのアクセスなどが評価された。
「参加者はアプリの機能を非常に重要視しており、定性分析で得られたテーマもほとんどがこの点に関するものでした。彼らは、使いやすくインタラクティブで、パーソナライズできるさまざまな機能を高く評価しています」と、この研究の著者はコメントした。「また、美観も非常に重要で、参加者は魅力的な色彩とシンプルな構造を持つプロフェッショナルなレイアウトを重要視していました。否定的な意見が最も多かったのは“使いにくさ”の領域で、現在の専門家の評価がアプリの使いやすさを過大評価していることが示唆されました」
研究者は、この研究のいくつかの限界も指摘している。参加者に過去にメンタルヘルスアプリを使ったことがあるかどうかについては尋ねたものの、この研究で使われた特定のアプリを使ったことがあるかどうかについては尋ねていなかった。また、参加者は一般的なメンタルヘルスの悩みを報告したが、具体的な診断名は報告していない。今後の研究にはその質問が役立つかもしれない。
この研究の著者は、より多くの研究を行って、より大規模で多様なユーザーサンプルを使用し、異なるカテゴリーのアプリを取り上げられるだろうと述べた。この研究では、デジタル治療薬ではなく、メンタルウェルネスアプリを利用した。今後の研究では、人々がこれらのカテゴリーやアプリの種類の区別をどの程度理解しているかを評価できるとも述べた。
しかし、研究者たちは、専門家のレビューが消費者にとって重要な問題に十分に焦点を当てていない可能性があることが今回の研究で明らかになったと主張した。「アプリストアや専門家によるレビューは、メンタルヘルス問題の生活体験者によるレビューとは異なるため、これだけでは、メンタルヘルス問題を抱える人々がメンタルヘルスのアプリを選ぶ際に望む情報を提供するには十分ではありません。アプリの評価指標は、評価がメンタルヘルスサービス利用者の優先順位を反映するように、彼らの視点を含む必要があります。メンタルヘルスサービス利用者にとって最も重要な機能をメンタルヘルスアプリに取り入れるためにさらなる取り組みが必要です」と述べた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2022年9月26日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
ヘルスケアアプリ(サービス)のトレンドとしてここ数年は、新型コロナによる生活環境変化により、メンタルヘルスアプリに注目が集めってきました。そんな中、行われたのが今回の調査です。
今回の調査では、被験者に対して「3日間使って評価してください」というものなので、被験者は最初から “評価者として見ている” 前提で結果を見なければなりません。
人は「評価しなければ」と思っていると、評価すべきことを探してしまうものです。そのため、最初に目に入るデザインやレイアウトを重視してしまいます。
そのような点を差し引いて結果を見ていくと、
・支払いタイミング
・進捗状況の把握や測定
・対処法や症状に関する情報
・パーソナライズできるさまざまな機能
これらが挙げられます。
特に注目したいのが ”支払いタイミング” によるものです。
何かしらストレスを感じているためにメンタルヘルスアプリを使い始めた人が、アプリを使うことでストレスを感じることになります。
このストレスにより離脱することになったら、改善に役立つはずのメンタルヘルスアプリがさらなるストレス原因となり、改善の妨げになっているとも言えます。
この ”支払いタイミングによるストレス” をどれだけ丁寧に対応できるかが、メンタルヘルスアプリのおいて重要であることがわかります。
おそらく”支払いタイミングによるストレス” はメンタルヘルスだけではないはずです。どのように支払いでストレスを与えないかは、研究していく価値があります。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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