『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“投資の減少がデジタルヘルスにとってプラスになる理由”
デジタルヘルス分野での資金調達は昨年の大規模な投資に比べると減速している。ただし、今年の落ち込みは市場にとってプラスになると語る投資家もいる。
7wireVenturesのパートナーであるRobert Garber氏は、今週開催された「Frontiers Health Global Hybrid Conference」でのディスカッションで次のように語った。
「今になって2021年のことを振り返ると、異常な年だったと思います。人々は賢い賭けをしており、規律に従って行動し、熟慮して判断していたと感じていました。2021年の出来事からは多くの教訓が得られるようになると思います」
資本を集めようとする新興企業のリーダーにとって不況は厳しい状況である一方、自分たちの生み出す価値にもっと注力するよう起業家たちが促されるようになると語るのは、Debiopharm Innovation FundのCEOであるTanja Dowe氏だ。
「このような時代には資本を最大限に活用することではなく、収益性を高める道筋に重点を置くようになります。資本金が少なくなり、評価額も下がるかもしれません。それでも、価値の面で次の転換点に到達するのです。そのため、今の状況は完全に否定的なことではないと考えています。少なくとも、この市場を生き抜いた新興企業のクオリティを考慮すれば、ポジティブな状況です」
一方で、より競争の激しい環境でスケールアップに苦戦する小規模なデジタルヘルス企業も多く存在する。こうした状況では企業の統合が促されると、Garber氏は語る。収益の拡大、さらなる顧客の獲得、そして製品ラインナップの拡充を実現し得る資産の獲得を企業は目指しているからだ。
「規模が小さい企業があまりにも多過ぎるのです。そのため、有望な候補をいくつかまとめて、規模を拡大する方法を考える必要があるのです。このようなやり方により、有用な資産価値を持ち、市場が低迷しているときでも成長できるような企業が生まれることを期待している」とGarber氏は述べた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2022年10月21日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
この数年は特にデジタルヘルスに参入するベンチャーが増加し、出資対象としても注目を集めてきました。増資によりサービス拡大を急ピッチで行うベンチャーも複数社登場しました。
しかしここ数ヶ月で、今まで注目を集め増資してきただけなく、売上も伸ばしてきたデジタルヘルス企業が人員削減を行ったニュースを何度か紹介してきました。
なぜこのような状況になったのかと言うと、今回取り上げたニュースからもわかるように、デジタルヘルスへの期待から、必要以上に出資が集まってしまったが、思ったように成果(利益)につながっていないというファクトから、現在のバブル崩壊後のような状況になってしまったのです。
中にはPelotonやCalmのように売上を爆発的に伸ばした企業もいましたが、そんな企業でも現在は人員削減を行っています。
米国の場合、新型コロナ感染症によりロックダウンが行われました。ロックダウンによって物理的に医療やサービスを受けに行くことができなくなったり、ロックダウン以前とは違う健康課題がでてきたため、オンライン環境にシフトすることとなり、そこにデジタルヘルスがフィットしたことになります。
今は事実上すべて解禁状態となり、多くの人が外出するよりになり、健康課題も次のフェーズに移行したため、利用されるヘルス分野も変化してきたと言えます。
新たな時代の変化に合わせ、何を提供できるのか?そこで成果を出せるのかが試されることとなります。
またGarber氏がコメントしているように、
「規模が小さい企業があまりにも多過ぎる。有望な候補をいくつかまとめて、規模を拡大する方法を考える必要がある」
この視点はこれから重要になります。
日本でも大手企業がコンペなどで有力なベンチャーを見つけ投資し、自社サービスに組み込もうとの取組みが行われていますが、大手企業の今後の新規ビジネスをベンチャー1社や2社に担わせようとするのは無理があります。
ベンチャーは開発力など、ある部分には長けているかもしれませんが、それを売り抜いて新たな市場まで作れるような企業は非常に稀です。誰でもがGAFAのようになれるわけではないのです。
これからは1つ尖ったものを持っているベンチャーを複数集め、それぞれの強みをビジネスが成立するよう組合せ活かす、ベンチャーをプロデュースすることで価値あるものを作り出すビジネスモデルが必要となります。
現在我々も、あるヘルスケア基盤を活用して、このようなビジネスモデル作りをはじめています。まだ詳細は記載できませんが、自社でもそのような活動に舵を切りたいと考えている方は、問い合わせからでも連絡をください。個別にご紹介はしていきます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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