『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“UnitedHealthcareとAARP、新プログラムで補聴器コストを削減へ”
米国では4,800万人が難聴を患っており、慢性症状としては3番目に多いものとなっている。8月に食品医薬品局(FDA)は 補聴器を店頭で直接消費者へ販売することを承認した。
UnitedHealthcareが現在管理している「AARP Hearing Solutions」を通して、3,800万人近いAARPメンバー が「UnitedHealthcare Hearing」から補聴器を購入することができる。同社によれば価格は1つ699ドルからで、購入時や購入後はメンバーはライセンスを持つ聴覚専門家や「UnitedHealthcare Hearing」の個別サポートを利用することもできる。
聴覚ヘルスケアプランや補聴器の割引を受けられる保険を持たない多くの人々にとって、聴覚ケアへのアクセスと高額な価格が以前から難聴の治療を受ける上で障害となってきた。処方による補聴器の通常の単価は1,000〜4,000ドルとなっている。全米難聴者協会によると、補聴器を使うことで恩恵を受けられる人々の約80%が補聴器を持っていない。
「UnitedHealthcareはユニークな立ち場にあり、個人の健康全般に関わっているが、その上で聴覚の健康が総体的な心身の健康・健全の一部となっていることを確信している」と「UnitedHealthcare Hearing」のCEO Dave Falda氏がインタビューの中で述べている。
「難聴は残念ながら全国の何百万人という人々に影響を及ぼしており、その多くが適切なケアを求めていない。こうしたプログラムによって、視覚化と一貫性と透明性がもたらされ、結果として人々がさらなるケアを求めることができるようになる」と彼は言う。「難聴は認知症などの諸症状と関連しており、社会的孤立や鬱、そして転倒や入院の危険性の増大にも関連している。このプログラムはテクノロジーや節約についてだけではなく、聴覚の健康を自分の総体的な健康の一部として治療していくことの重要性を呼びかけている」
同プログラムでは、ユーザーはUnitedHealthcare保険に加入している必要はないが、AARPのメンバーである必要がある。
「当社の新たなターゲットとなる人々だ。聴覚のヘルスケアが注目され始めている今、そうした世の中の認知度と呼びかけがあるときに、聴覚ケアの手段を必死で探し求めている人々に対して確実に働きかけていく絶好の機会だ」とFalda氏は言う。
UnitedHealthcareによると、このプログラムを通してAARPメンバーは何千人もの専門家を含む「UnitedHealthcare Hearing」の全国的なプロバイダーネットワークにアクセスすることもでき、無料の聴覚テスト、フィッティング・微調整・サポートの対面支援、宅配やバーチャルケアのオプションが利用できる。
「今現在、店頭販売の補聴器が聴覚ヘルスケアをより広範な人々へ 届けるための大きな機会となっているが、最も信頼され実績のある手段は対面によるケアだ。 当社は全国各地に対面でケアを提供する聴覚ケアの専門家を有している。AARPメンバーは彼らのオフィスで聴覚テストを受けた後、聴覚ケアの教育を受けながら彼らからケアとサポートを受ける。専門家たちはメンバーに随時オプションを紹介しながら、最終的にはそうしたオフィスでの対面プロセスの中で処方による補聴器の大きな値引きを提供することになる」とFalda氏は述べた。
記事原文はこちら(『FierceHealthcare』2022年11月18日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
米国では今年、処方箋なしで補聴器が購入可能になりました。処方箋なしの利点はオンラインや小売店で気軽に買えることより、負担金額の大幅削減です。
従来、診断を行い、補聴器購入のフィッティングサービスなどの総額が5,000ドル(約75万円)以上かかると言われています。それがOTCに移行することで2,800ドル(約42万円)のコスト削減が期待できるのです。
この認可はバイデン政権における取組の柱の一つとも言われています。
しかし、OTC適用でも2,000ドル(約30万円)を超えるため、低所得層や高齢者には依然負担が大きいことには変わらないでしょう。
そこに目をつけたのが保険会社のUnitedHealthcareです。
AARPメンバーとは退職者です。退職した高齢者は裕福層の人ばかりでなく、退職金をやりくりして生活している人も多くいます。つまり今回の制度改革だけでは取りこぼされてしまう人を狙ったアプローチとなります。
AARPメンバーにUnitedHealthcareを通じて低額で購入できることで、保険を案内したり、その他のヘルスケアサービスを提供する機会ができます。
新たな制度を上手く活用する。ただし、いきない最初から大きな収益を狙うのではなく、顧客との関係性を作るための投資と捉える。
このアプローチは、今後のヘルスケアにおける主流になってくるかもしれません。注目です!
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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