『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“インスリン投与を自動化する機械学習システム”
イリノイ工科大学(IIT)の研究チームは、「糖尿病患者のための人工膵臓システム」を構築する大規模プロジェクトの一環として、米国立衛生研究所(NIH)から120万ドルの助成を受け、インスリン自動投与用の機械学習ツールを開発する。
平均的な1型糖尿病患者において、理想的な血糖レベルを維持するためには、日々100〜200の意思決定が必要になるという。これを誤ると、つまりインスリン投与量が不適切であったり、タイミングが不適切であるなどすると、高血糖・低血糖に基づく重篤な症状を引き起こす可能性がある。
ITの研究チームは、2020年に人工膵臓システムを開発しているが、これは血糖値管理をサポートするトータルシステムとして、グルコースセンサーやリストバンド、専用スマートフォン、全自動インスリンポンプで構成されるもの。食事や運動など、代謝変化に応じて自動的に最適なインスリン投与を行うことができる。
研究チームは今回の助成金を用い、患者の過去の行動を機械学習ツールで分析し、血糖コントロールに影響を与える行動を識別・予測する機能を付加しようとする。
記事原文はこちら(『The Medical AI Times』2022年12月13日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
1型糖尿病は2型糖尿病とは違い、食事や運動などの生活習慣とは関係なく、膵臓(すいぞう)からインスリンという血糖値を下げるホルモンがまったく出なくなってしまう病気です。
人間はインスリンがないと死んでしまうため、インスリンを補充し続けることが必要なため、1型糖尿病になると日に3〜5回程度インスリン注射をする必要があります。
これを血糖コントロールと呼びますが、コントロールが悪いと合併症を引き起こし失明してしまったり、人工透析が必要になってしまったりします。
日々手が抜けず、一生涯付き合っていかなければならないので、うまくコントロールできないと生活の質を低下させることになります。
今回紹介したインスリン自動投与用の機械学習ツールは、少しでも病気による生活の妨げをなくすことができると期待されています。
この研究の先には、他の生活習慣病の管理にも役立てる可能性があります。
ただし同じ糖尿病と名のつく2型糖尿病では、生活習慣が影響します。治療を自動化するだけでは補えない部分もありますので、疾患の特性に合わせ、科学的なアプローチだけでなく、患者が行動しやすくなる心理的なサポートも組み込んだ仕組化が必要になってくるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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