『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Nox Health、Pear Therapeuticsの資産に390万ドルの入札について”
4月のPear Therapeutics社の倒産に伴い先月行われたオークションでは、テクノロジーに強い睡眠健康企業Nox Health社が同社の「Somryst」に関する資産を最高値390万ドルで落札した。
「Somryst」は、脳と体を睡眠に導くトレーニングを行うFDA認可のデジタルセラピューティクス(DTx:デジタル治療薬)だ。
Nox HealthのCEOであるSigurjon Kristjansson氏は、MobiHealthNewsのインタビューに応じ、同社がPear Therapeuticsの「Somryst」関連資産を入札した理由と、同社の管理下でこのDTxがどう使われるのかを語った。
MobiHealthNews:なぜ「Somryst」は、Nox Healthにとってそれほど価値があるのでしょうか?
Sigurjon Kristjansson:私たちは、睡眠医療に特化した事業を行っています。皆さんは当社について、睡眠に関連する慢性疾患を持つ人々がより良い生活を送れるようにサポートし、そのヘルスケアのスポンサーが総合的な費用を節約することを支援する組織であると考えることができます。ですから、私たちは、必ずしもスタンドアローンのDTxと同じ道を歩むことを望んでいるわけではありません。
「Somryst」は、当社がかなり以前から認知していた製品です。実際、私たちはこの製品の開発者を知っています。この製品がどのように生まれ、どのようにデジタル治療薬に進化していったのかも知っています。
さらに、この製品は慢性不眠症の患者のための唯一のFDA認可ソリューションであり、患者と医療スポンサー(自費診療の事業主や医療プラン)の両方に、睡眠時無呼吸症候群、慢性不眠症、レストレスレッグス症候群(RLS)など、人々が抱えるあらゆる睡眠の問題を、成果が実証されているツールとプログラムで解決するという当社の全体戦略に完全に合致していることは、非常に興味深い要素です。
「Somryst」が他の不眠症治療薬と一線を画すのは、患者に結果をもたらしたという実績が証明されたソリューションであることです。つまり、FDA認可のもと、私たちは実際に症状を治療しているという主張をすることが許可されるのです。
MobiHealthNews:「Somryst」は、ノックスの製品をどのように補完、または補強するのでしょうか?
Sigurjon Kristjansson:私たちは複数の製品を展開しています。私たちのビジネスには、大きく分けて2つの対象があります。ひとつは、ヘルスケアのスポンサーである雇用者です。私たちは、自己保険制度を採用している雇用者や支払者にベネフィット・ソリューションを提供する、米国の主要なプログラムを提供しています。そして、慢性疾患に対する戦略的介入として、睡眠マネジメントを提供しているのです。
一方、当社が「Nox Medical」と呼ぶ事業は、世界中の医療機関にソリューションを提供し、患者を支援するテクノロジー事業です。例えば、米国において私たちは、病院やヘルスシステムに対し、睡眠診断やテクノロジーを提供するマーケットリーダーです。
MobiHealthNews:Pear Therapeuticsの破綻から何か学ぶべきことはあるでしょうか?
Sigurjon Kristjansson:私がコメントできるのはただひとつ。「ソリューションというものは、第一に、患者が簡単にアクセスできるようにしなければならない」ということです。しかし、時には、医師が容易に利用でき、アクセスできるものでなければならないこともあるでしょう。医師は、常に何らかの状況で診療を行っています。DTxの課題は、医師がいかに簡単に処方し、その後、患者をフォローできるかにあると思います。
MobiHealthNews:今後、Somrystはどのように変化していくのでしょうか?
Sigurjon Kristjansson:私たちは今後もこの製品に投資を続け、より良いものに仕上げ、改善していきます。そして、すべてのソフトウェアプログラムには継続的なメンテナンスが必要であり、私たちはそのための努力を続けていきます。しかし、それ以上に、医師が処方できるようにすること、そしてアクセスしやすくすることに重点を置くでしょう。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2023年6月2日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
すでにニュースで取り上げた「破産したPear Therapeutics、資産をオークションにて600万ドルで売却」の続報として、MobiHealthNewsによるNox HealthのCEOへのインタビューが公開されたので紹介します。
ご存知のように、話題となってきたDTxを提供してきた企業が、軒並み倒産しています。倒産の理由を一言で言うと「利用が伸びなかった」です。
DTxの多くは患者が自ら使い続けることではじめて効果を発揮します。そのためには患者に途中脱落させない継続支援(継続ドライバ)が必要になります。初期のDTxは、正しく使い続ければ効果は実証されていますが、圧倒的に継続ドライバが不足していました。
そしてもうひとつ、医師がDTxを率先して選択しやすい環境作りです。DTxは導入されて、まだ日も浅く、今まで利用したことない医師がほとんどです。FDAから認可されたからと言って、簡単に使われないのが実態です。特に患者を観察するオペレーションが今までと異なることを要求されると、益々簡単には手を出せないものです。
これら第1世代のDTxに代わり、保険会社を中心に第2世代のDTxが飛躍してきています。第2世代のDTxは、上記2つの課題をクリアしてきたものです。
Nox Healthはあえて第1世代のDTxを使う選択をしました。FDAに認可された確かな商材を使って上記2つの課題をクリアすることで、先行する第2世代のDTxに対抗しようと考えていることがインタビューからも見えてきます。
今後、Nox Healthがどのように発展させていくのか、注力していきたいと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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