『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Walmart、自宅検査『Simple HealthKit』を提供”
カリフォルニアに本拠を置く診断スタートアップのSimple HealthKit社は、Walmartと提携し、糖尿病、性の健康、呼吸器の健康についての家庭用診断テストキットを、同小売チェーンのウェブサイトを通じて顧客に提供することを発表した。
Simple HealthKitの性の健康検査キットは、淋病、クラミジア、トリコモナスを特定することが可能だ。呼吸器系の検査では、インフルエンザや呼吸器多核体ウイルス(RSV)を検出することができ、糖尿病に特化した検査では、2型糖尿病のマーカーを特定できる。
利用者はwalmart.comを通じて、医師の監視のもと検査キットを注文し、自宅で検査を実施することができる。その後、利用者はサンプルをSimple HealthKitのラボに送ると、24時間以内に結果を受け取ることができる。異常な結果が出た顧客は、ケアプロバイダーに接続することで、無料のフォローアップケアを受けることができる。
Walmartのヘルスマーチャンダイジング担当バイスプレジデントのStaci Cochran氏は声明で、「Simple HealthKitをWalmartに迎え、毎日低価格で自分の健康を評価するという、便利な方法を顧客に提供できることを嬉しく思っています」と述べている。「これによりWalmartが、顧客がもっと健康に積極的になることをサポートし、ウェルネス製品やサービスをより身近なものにするもう1つの方法なのです」
Walmartは2019年に「Walmart Health」を立ち上げた。同社は全米の州にヘルスセンターを開設することで、ヘルスケアにおける物理的な存在感を確立した。この小売大手は、2024年末までに全米で75以上のセンターを設置することを見込んでいる。
「Walmart Health」の立ち上げから2年後、同小売企業は、バーチャル緊急医療、行動医療、プライマリケアを提供するテレヘルス企業MeMD社の買収を発表した。この全国的なテレヘルスのプロバイダーは、「Walmart Health」への移行の一環として、昨年、Walmart Health Virtual Careに社名を変更している。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2023年6月12日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回紹介のニュースは、「Walmartが新たに自宅検査キットを発表」というものですが、注目したいのは「Walmart Healthの体制が益々強化された」という点だと思っています。
Walmartをはじめヘルスケア小売りチェーンはここ数年、PHRを使った顧客との関係性強化を図り、規模を拡大しています。
PHRを使うのはIT系企業でも多くいます。しかし、ヘルスケア小売りチェーンの方が圧倒的な顧客基盤を持ち、売上を伸ばしています。
同じPHRを使っているのに、IT系企業とヘルスケア小売りチェーンの違いはいくつかあるのですが、今回1つ挙げるとすれば、
「データ活用(PHR)を率先して伝えている/伝えていない」
になると思います。
IT系企業は、どれだけ優れたテクノロジーで分析でき、適切なコンテンツ(情報やモノ)を提供できるかを価値として伝えることがあります。
それに対しWalmartなどは、顧客が必要と思ったものを必要なタイミングで届けることを伝えています。必要以上に「データ解析により」などは主張していないのです。
この2つの違い、自身が顧客となったらどちらが響くでしょうか?
今回の自宅検査キットも、「顧客が必要と思ったものを必要なタイミングで届けること」を強化するための試みとなります。健康課題を見つけ「異常な結果が出た顧客は、ケアプロバイダーに接続することで、無料のフォローアップケアを受けることができる」とうたい、その先に自然とつながりやすい導線を作っています。
ヘルスケアにおいて、テクノロジーの凄さを伝えることがどれだけ価値となるのか?改めて考えるときではないでしょうか!?
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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