『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Google、AIを活用したデジタルヘルスプロジェクトへの資金提供を発表”
Googleは、国連の持続可能な開発目標を推進するという自らのコミットメントを通じ、医療提供者の体験や患者の医療アクセスを改善するためのデジタル医療イニシアチブを含む15のAI活用プロジェクトに対し、資金を提供していると発表した。
各プロジェクトは、技術支援、現金支援、およびGoogle Cloudクレジットの形で300万ドルを受け取った。少数ながら一部のプロジェクトには、Googleの従業員チームが最長で6ヶ月間にわたり無料で組織の支援を受けられるGoogle.org Fellowshipsが提供された。
資金提供を受けた15のAIプロジェクトのうち、デジタルヘルスの試みは以下の8つだった。
(※ここでは4つを紹介)
「RAD-AID」
資源の乏しい病院に対し、主に呼吸器疾患と乳がんに関して患者のトリアージを支援するAI対応プラットフォームを提供している。このプラットフォームは、X線やスキャンの解釈、および検査結果の提供も支援する。
「Wuqu’ Kawoq」および「safe+natal」
グアテマラ農村部の助産師が、胎児の発育不良や分娩時の胎児ストレスなど、新生児合併症をリアルタイムで発見できるようにするための機械学習対応ツールキットを共同開発している。このツールキットは、スマートフォンに接続された超音波と血圧の監視装置で構成される。
「MATCH(音楽同調テクノロジー – eHealthを通じた治療)」
メルボルン大学とCSIROから生まれたプロジェクトで、音楽とウェアラブルセンサー技術を組み合わせて認知症患者の興奮を抑える。Googleの助成金は、センサー技術とAI対応適応音楽システムの開発に役立てられる。
「Makerere AI Lab」
AIを使用して画像を処理し、電話機や顕微鏡との互換性もある、3Dプリントされたアダプターを開発する。その目的は、研究室技師不足の中低所得国において、ウガンダの医療提供者による結核、マラリア、がんなどの患者の診断を支援することである。
Googleは、医療情報へのアクセスを改善することを目的とする独自の機械学習テクノロジー「Med-PaLM 2」を所有している。「Med-PaLM 2」は、Googleの大規模言語モデル(LLM)を利用して、医療に関する質問に答える。
3月に行われた米国医師免許試験形式の問題による試験で、「Med-PaLM 2」は85%以上の正解率を意味する「エキスパート」受験者レベルの成績を収めた。また、実際の医学部入試問題に対応するように設計された多項選択式のデータセットであるMedMCQAでも合格点を獲得した。
その1ヵ月後、Googleは、ユースケースの検討、フィードバックの共有、限定的な試験を行うため、一部の厳選されたGoogle Cloud顧客に対し「Med-PaLM 2」の利用を開放すると発表した。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2023年9月13日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
医療の現場にAIを導入することを計画しているのはGoogle、MicrosoftやIBMなどの大手テクノロジー企業だけでなく、小規模なスタートアップも同分野に関する研究が進められています。
すでに医師の業務のひとつである文書作成の負担をAIが軽減してきた実績からも、大規模言語モデル(LLM)への期待は、テクノロジー企業も医療業界も持たれているでしょう。
Googleが開発した「Med-PaLM 2」は、「医師へのアクセスがより制限されている国で特に役立つと考えている」ことが報じられていたので、今回の資金提供されたプロジェクトを見ると、Googleとしての考えを実践するための取り組みとも言えるでしょう。
記事原文には、他にも4つのプロジェクトが紹介されていますのでチェックしてください。
Googleが「Med-PaLM 2」の導入において考える「医師へのアクセスがより制限されている国で特に役立つ」は、このような国だけでなく、身近なところでも、現在深刻化しつつある自然災害における救難現場や、医師が不足する過疎地域などでも効果を発揮するのではないかと期待が持てます。
日本はすでに高齢社会となり、働き手不足は益々深刻化してきますので、「Med-PaLM 2」をはじめとしたAIの活用によるヘルスケアの改善は、加速させていく必要を感じます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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