『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます
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“Samphire Neuroscience、生理痛解消に脳を刺激するウェアラブルを開発中”
多くの女性が毎月生理痛に耐えているのは恐ろしい事実だ。おそらく、腹痛を和らげるために鎮痛剤や湯たんぽに頼っているのでしょう。また、市販の鎮痛剤では痛みが軽減されないため、毎月何日もベッドに横になって痛みが消えるのを待たなければならないほど、月経痛が避けられない人もいる。
月経前に起こる可能性のある気分の変動や感情の過敏性であるPMSに悩まされることもある。また、さらに重度の気分障害であるPMDDによるものもある。深刻な症状に悩む人は、ホルモン剤による避妊をする以外に選択肢がないと感じるかもしれない。
英国の医療技術スタートアップ企業であるSamphire Neuroscience社は、こうした長年の女性の健康問題に取り組むために、「科学に裏打ちされた」代替アプローチをとっていると主張する。同社は頭部装着型の「治療用」ウェアラブル装置を開発した。これは「tDCS (経頭蓋直流刺激) 」と呼ばれる、非侵襲性低電流による脳刺激を適用するための装置だ。痛覚や気分調整に関わる脳領域をターゲットとし、基本的に感度を下げることで痛みのシグナルをブロックする。(非医薬品による)ニューロモデュレーション(神経調整)治療を生理痛やPMSの治療に応用したものだ。
では神経刺激は、実際にはどう作用するのだろうか。tDCSの背後にある理論とは、一定の電流を流すことで「神経可塑性」、つまりシナプス接続を形成・再編成し、脳の変化・適応能力を高めるというものだ。
Samphire Neuroscienceは、女性の健康に関するユースケースにおいて、ホルモンレベルと脳の「構造と活動」には明確かつ直線的な関係があると主張している。つまり、月経周期は脳に変化をもたらし、「気分、エネルギー、感受性など」に影響するというのだ。この影響は、ホルモンレベルが大きく変化する生理前の黄体期に特に顕著に現れる。そのため、同社の脳刺激装置も女性の生理周期のこの時期に使用する設計となっている。
『Nettle』と名付けられた電池式ウェアラブル装置は、分厚く黒いヘッドバンドのようだ。ユーザーは、生理前の数日間(5日間)、これを装着して治療を受ける。Samphire Neuroscienceによると、この治療により、次回の生理(およびその前後)に関連する痛みや気分の症状が緩和されるという。同社によると、同装置は月経痛とPMSにそれぞれ関連する脳の2領域、すなわち痛覚に関わる「運動皮質」と、気分に関わる「前頭前皮質」に電流を流すことで機能する。つまり、身体的症状と心理的症状の両方に対処できる設計となっている。
記事原文はこちら(『TechCrunch』2024年2月21日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
ここ数年拡大するフェムテック領域で、新たな取組が登場しました。Samphire Neuroscienceはヘッドバンド型ウェアラブル『Nettle』を使うことで、生理痛やPMSの改善に役立てるとしています。
女性の生理は毎月来るものであり、人によっては毎月起きていられないほどの痛みを伴うこともあることを、世間的には仕方のないもので捉えていたことは、冷静に考えればひどい話だったと言えるでしょう。
当初フェムテックが伸びにくかった理由として、投資家の多くが男性で、女性特有の課題へのアプローチに理解を示されなかったと言われています。
今は、「女性の働き方」や、フェムテックが注目されることで、男性の見る目も確実に変わってきていると言えます。
女性特有の課題だけに関わることではありませんが、健康的なライフスタイルを推奨することで、根本の改善、つまり痛みを取ることに貢献できていない健康テーマはまだまだあります。デジタルヘルスの可能性は、今後も大いにあると言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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