『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
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“コネクテッドフィットネスはパンデミック後も漂流中”
過去4年間、コネクテッドフィットネスはベンチャー界で最も高い成長と最も低い成長を経験してきた。資金調達は予想通り2021年にピークを迎えた。フィットネス分野全体では、376ラウンドで64億ドルが調達された。
2021年5月、Pelotonはオハイオ州に拠点を置く生産施設に4億ドルを投じると発表した。これはほんのわずかな額に過ぎない。同社はその年、41億3,000万ドルの収益を上げており、2020年比で40%以上増加している。
しかし現在のPelotonは「負債の借り換えを検討している」と発表するような状況となっている。また、今月初めに2年間同社に在籍したBarry McCarthy氏が退任したことを受けて、新たなCEOを迎えることを目指し、5年間で10億ドルの融資も受けた。結局、Pelotonはパンデミックによる利益が新たな常態だと思い込み、自社の供給に酔いしれた。
競合のTonal社(Pelotonが2022年に買収を検討していたと報道されている)は2022年に従業員の1/3以上を解雇した。2023年4月に同社は新しいCEOと、評価額を大幅に削減した1億3,000万ドルの資金調達ラウンドを発表した。
パンデミックは経済に長期的な影響を及ぼしていることは間違いない。例えば、在宅勤務はコロナ禍のピーク時に比べると明らかに減少しているが、今年初めのレポートでは、在宅勤務は2019年に比べると依然として3~4倍多いと指摘されている。コネクテッドフィットネスは、ある程度の退行は避けられないものの、文化的な変化は永続的になるだろうと大きな賭けに出た。
しかし、最終的には多くの人が「平常に戻る」ことを切望し、ワクチンの登場と感染率の低下が相まって、多くの人がジムに戻ってくる勇気を持てるようになった。週に5回、人工照明のキュービクル農場に通うのとは違い、実際に直接トレーニングする体験を心から楽しんでいる人はたくさんいる。
とはいえ、この苦闘は普遍的なものではない。Hydrow社は2022年に5,500万ドルを資金調達し、今月初めにAIベースの体力トレーニング会社Speede Fitness社の株を過半数購入した。同社はローイングマシンへの関心をうまく利用している。同時に、Pelotonによる同カテゴリーへの対応は、同社の公然の苦闘によって影が薄くなっていた。
いくつかの大きな後退や経済全般の逆風にもかかわらず、十分に魅力的な製品があれば、資金調達できる資金は常にある。しかし最終的には、こうした資金調達ラウンドは、コネクテッドフィットネスの全盛期よりも一貫して低い水準になるはずだ。最近の例としては、「世界初のAI搭載ダンベル」のメーカーである Kabata社が火曜日に500万ドルのシードラウンドを発表した。これは、2022年5月に調達された 200万ドルのシードラウンドに続くものだ。
記事原文はこちら(『TechCrunch』2024年5月22日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回は米国におけるコネクテッドフィットネス(家庭用フィットネス)の現状を取り上げました。
新型コロナはヘルスケア業界にも大きな影響を与えました。特に米国ではロックダウン(外出禁止令)があったため、リアルサービス主流のフィットネス市場に大きなダメージを与えました。
外出できないことで伸びたのがコネクテッドフィットネスだったわけですが、コネクテッドフィットネスは、あくまで代替品であって、置き換わるものではなかったようです。
利用者として「外に行けないから、しかたなく家でやる」と考えてコネクテッドフィットネスを選んだのなら、ロックダウンが解禁されれば当然フィットネスクラブやアウトドアスポーツに向かうことになります。
利用者がどう思っているか?何にストレスを感じているのかを見極めないと、せっかく新たな接点としてコネクテッドフィットネスを提供できたものが無駄になってしまいます。
ヘルスケア業界にも何度もブームは訪れました。ブームは波も大きいのでうまく乗ることができれば、そこそこの成果にはつながるでしょう。ですが、ブームという波は引くのも早いものです。そのときどう対応するか、ブームを活かすのであれば、そこまで考え抜く必要があります。
Pelotonはコロナ以降、迷走しているように見えます。ぜひPeloton本来の価値に立ち返って、Pelotonらしい魅力的サービス展開に向かっていくことを期待します。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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