『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“ 調査:「Fitbit」でわかった睡眠と健康状態の関係とは ――Googleなど3団体が研究 ”
Googleは、同社公式ブログ「The Keyword」において、スマートウォッチシリーズ「Fitbit」を使用し、睡眠の質や時間が人間の健康状態に与える影響をまとめた研究結果を公開した。
ヴァンダービルト大学医療センター、NIHのAll of Us Research Program、そしてGoogle研究者による共同研究となっている。
規模や範囲が限られていた従来の睡眠に関する研究と異なり、本研究はFitbitが収集した睡眠データに基づき行われた。
All of Us Research Programに参加した6,700人以上のFitbitユーザーが、それぞれ平均4.5年間スマートウォッチを着用した中で集められたデータが使用されている。合計で、約650万夜の睡眠が研究対象となっている。
これにより、睡眠と人間がかかりうるすべての疾患との関係を明らかにすることが、本研究の目的とされている。
睡眠パターンの一貫性は、臓器に影響
本研究での6つの主な発見が紹介された。
睡眠が1時間長くなるごとに、肥満や睡眠時無呼吸症候群などの疾患にかかりにくくなる傾向があったとした。睡眠量が少なすぎる状態だけでなく、多すぎる状態も、さまざまな疾患との関連があることが見つけられた。
レム睡眠、浅い睡眠、そして深い睡眠のバランスが、心臓や精神状態の健康において重要な役割をもつ可能性が示唆された。また、Fitbitの睡眠ステージにおける覚醒状態の長さは、睡眠障害や甲状腺機能低下症との関連が見られた。
一貫性のない睡眠パターンは、ほぼすべての臓器系の疾患に影響を与えることが発見された。特に強い関連が見られる疾患として、高血圧、肥満、うつ病などの精神疾患、そして片頭痛が挙げられている。
人口統計学の観点からは、人口グループにより睡眠時間の中央値が異なることが明らかになった。たとえば、女性は男性より長く眠る傾向があり、白人の参加者は黒人の参加者よりも長時間の睡眠をとる傾向があった。これにより、睡眠にまつわる研究をする際には、個々の要因や潜在的な健康格差についても考慮が必要であることが示された。
喫煙や飲酒などの生活習慣の有無と、睡眠の長さの関連が見られた。生活習慣が人体にさまざまな影響を与え、睡眠や全体的な健康状態の改善において重要であることが示唆される結果となった。
参加者の多くは6.7時間睡眠
また、本研究により、一般的に人がいつ、どれくらいの睡眠をとるのかが明らかになった。
参加者の多くは、23時10分ごろから約6.7時間の睡眠をとることが分かった。14時30分ごろから昼寝の時間をとる参加者も、比較的多くみられたという。
本研究は、Fitbitの睡眠データが臨床ツールであることを示唆するものではない。しかし、長期間のデータ収集で、年代による睡眠パターンの違いを観測し、それが大衆の健康に与える影響を調査するために、研究において費用対効果の高いウェアラブル端末を使用する利点があることを示したとした。
記事原文はこちら(『ケータイWatch』2024年7月27日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目したのはGoogle研究者など3つの団体が共同で研究した、スマートウォッチ「Fitbit」のデータから分析した睡眠と健康状態についてのニュースです。
今回の「Fitbit」のデータを活用した分析では、プログラムに参加した6,700人以上のFitbitユーザーで、それぞれ平均4.5年間スマートウォッチを着用した中で集められたデータを使用していることが、まずは分析データからしても特徴的と言えます。
通常の調査では、これほどの膨大なデータ、特に一般の人のデータを経年で収集することは難しいのが一般的です。
しかし、スマートウォッチ「Fitbit」の利用者を対象にすれば、これだけのデータを収集することが可能なのです。
スマートウォッチの利用者ということで、健康意識が高い、睡眠に関心がある人という傾向は若干高いと思われますが、しかし、これだけの膨大なデータの分析結果であれば、データの傾向としては意味を持ってくると思います。
今回のニュースの中でも睡眠時間や質と、様々な疾患との間の密接な関係が明らかになったと伝えています。
例えば、睡眠時間の長さと肥満や睡眠時無呼吸症候群などの疾患リスクの関連性や、睡眠と心臓や精神状態、睡眠障害、甲状腺機能低下症、高血圧、うつ病、片頭痛などの疾患との関連性も示唆されたとのことです。
しかし、この研究によってFitbitデータの臨床ツールとしての有効性を示したものではないとも、今回のニュースの中では伝えています。
たしかに、スマートウォッチである「Fitbit」のデータが臨床ツールとしての有効性を示したものではないとしても、これまで睡眠と健康状態について、関連性があると言われていたことが、実際のスマートウォッチ「Fitbit」の利用者である一般の人々のデータからも関連性がつかめたということは、利用者にとっては、一つの利用者する意味、価値につながるのではと、今回のニュースを見て感じました。
スマートウォッチを含めてウェラブル機器の拡大によって、これまで関連性があると言われていたことが明確になっていくことが、今後さらに拡大していくのではないかと期待しています。
スマートウォッチを含めてウェラブル機器のデータは、ただ単にグラフ化して表示するだけではなく、分析して健康との関連性を明らかにし利用者に提供していくこと自体も提供価値につながっていくと強く感じています。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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