『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“病態悪化につながる患者行動をAIが予測”
~2017年度から複数病院データベースでの評価を開始~
日本電信電話(NTT)は、NTTグループのAI技術(corevo™)の一つとして、東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野の大江和彦教授らの研究グループと共同で、約900名の糖尿病患者の電子カルテデータを利用して、糖尿病患者の症状が悪化する原因の一つである患者行動「受診中断」を予測するモデルを世界に先駆けて構築した。
本モデルは患者行動に関連のある特徴量をもとに機械学習技術で構築し、受診中断を7割の精度で予測できる。従来の研究では受診中断の要因が検討され、受診中断者の性別や年齢等の傾向は明らかにされてきたが、本モデルは積極的に支援すべき中断リスクの高い患者を個人の電子カルテデータを用いて抽出できるため、医師による患者への効率的な介入を支援することが可能となる。
本モデルの構築は、東大COI拠点(自分で守る健康社会 ~Self-Managing Healthy Society COI拠点~)における共同研究として実施した。本モデルは、電子カルテデータの標準規格SS-MIX2標準化ストレージに準拠しているため他病院への展開が可能であり、2017年度から複数病院のSS-MIX2データから構築されたデータベースでの評価試験を開始する。
プレスリリースはこちら(日本電信電話株式会社、2017年2月3日発表)
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『mHealth Watch』の視点!
今回の注目ニュースは、AIによる病態悪化につながる患者行動の予測に関してです。
ヘルスケアサービスでのAIの活用としては、コミュニケーションへ注目が集まっていますが、リアルでのヘルスコミュニケーションの成功例がまだまだ少ないなかで、一気にコミュニケーションがAIに置き換わる、また会話がしっかり成立するようになるまでには、私はまだまだ時間がかかるような気がしています。
それよりも、データの分析、予測にAIを活用し対象者のリスクを予見するなどといった、今回のニュースのようなAIの活用が現状からすると直近として可能性が高いような気がしています。
しかし、データの活用といっても、新たに膨大なデータを収集して、そのデータを分析するとなると、やはり時間もかかりますし、根本的にAIの元となるデータの収集が可能かどうかがポイントになってきます。
ウェアラブルや機器を活用し、データを収集するデータプラットフォームを目指したサービスがうまくいっていないように、ウェアラブルや機器を配ったからデータが収集できて、そのデータを活用してビジネスが成立するほど簡単にはいきません。
その点、今回のニュースの事例は既存の電子カルテのデータを活用しているので、新たにデータを収集する必要がないため、データ収集に関する課題はありません。
このように、まだまだ既存のデータの分析から見えてくるもの、またAIを活用したサービスが考えられる領域があるような気がしています。
今回のニュースでは、まだまだ足元にAI活用の可能性の種が転がっていることに気づかせてくれた感じです!
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。食コンディショニングアドバイザー。
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