『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「
今回注目したニュースはこちら!
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“「スマホだけ」の特定保健指導、そのメリットは…”
Noom Japanが愛媛県で始動したケースに見る
特定健診の結果から、生活習慣病の発症リスクが高い対象者に管理栄養士などが生活習慣を見直すサポートを実施する特定保健指導。厚生労働省によれば、2014年時点の特定保健指導の全保険者平均実施率は18%。保険者によって大きなバラつきがあるものの、全保険者目標の45%を上回る保険者は極めて少ないという。
この状況を改善すべく、2018年度からの第3期特定健診・保健指導では、各保険者別の特定健診・保健指導の実施率を公表(2017年度の実績から)して保険者機能の責任を明確化するなど、さまざまな運用の見直しが図られる。その一つがICTの活用だ。
具体的には、テレビ電話やスマートフォンなどを用いた遠隔(オンライン)による特定保健指導の初回面接の導入を促進する。既に、当初は対面が前提だった初回面接を遠隔で実施することは可能になっているが、2017年度からは実施計画の国への事前届け出を廃止。さらに、2018年度からは特定健診・保健指導の実施状況に関する報告の中に遠隔面接を位置付け、データの蓄積などを進めるとしている。
「Noomコーチ」を活用
こうした中、幾つかのデジタルヘルス関連企業は今、自らの強みを生かしつつ、特定保健指導の領域に乗りだそうとしている。デジタルヘルスベンチャーのNoom Japanも、その1社である。
Noom Japanは、CDC(米国疾病対策予防センター)認定の行動変容のためのヘルスケアアプリ「Noomコーチ」で知られるベンチャー。Noomコーチは、Apple WatchやiPhoneのヘルスケアアプリと連動することもでき、歩数や消費カロリー、体重などのデータ統合をできる。
このNoomコーチを活用した特定保健指導を、愛媛県(地方職員共済組合愛媛県支部)の職員を対象に2017年2月に開始した。管理栄養士などとの初回面談は、スマートフォン(もしくはパソコン)にダウンロードしたビデオ会議アプリ「appear.in」で実施。その後のサポートは、Noomコーチによるデータ管理とアプリのメッセージ機能を通じた指導などによって進める。つまり、「スマホ1台あれば完結する」(同社)という形だ。
記事原文はこちら(『日経デジタルヘルス』2017年9月13日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するニュースは、オンライン、ICTを活用した特定保健指導に関してです。
特定保健指導においては、これまでも継続支援の一部分をメール等、ICTを活用しているプログラム提供はありましたが、初回面談に関しては、通常対面での直接のコミュニケーションを行なってきました。
初回面談は、これまでの特定保健指導でも、ICTを活用した遠隔面談、Web面談も認められていたのですが、ICTを活用した遠隔面談、Web面談に置き換えて特定保健指導を提供している実施機関は少なかったのが現状です。
面談には管理栄養士などの専門職の対応が必須であり、対面での面談では、スケジュールの調整はもちろん、面談場所への移動時間など、面談だけではない見えないコストが発生しています。そのため、特定保健指導では面談に関係するコストが、全体の費用のなかでもある程度の割合を占めているのです。
特定保健指導は、平成20年にスタートしましたが、現時点では期待どおりの成果を上げられていないのが実情で、本当の意味で対象者の生活習慣の改善につながっていないことが実施率の低さにも影響していると思われます。
2018年度からの第3期特定健診・保健指導となり、各保険者別の特定健診・保健指導の実施率が公表されます。
また、第3期保健指導では、これまで初回面談から6ヵ月間経過後の実績評価だったものが、最低基準が3ヵ月経過後でもOKとなり、最低期間3ヵ月のなかで効果的な継続支援が必要になり、最終的には効果、実績が求められてきます。
これまでの対面による面談のコストをICTを活用した遠隔面談、Web面談で圧縮し、その分3ヵ月間の継続支援での効果的な人的介入によって効果を上げていくプログラムが必要になってくるのは間違いないでしょう。形だけの特定保健指導から、効果、実績をしっかり出すための特定保健指導を保険者側も求めてくると思います。
その時に必要になってくるのが、しっかりとした継続支援であり、効果を上げるための人的介入、コミュニケーションです。
ICTを活用した遠隔指導によって、場所を飛び越えてサービス提供が可能になり、それによって見えないコストが抑えられます。その代わりにICTのなかに「人」を絡めて継続支援していくことが重要なポイントになってくるのです。
内容の横並びで費用だけが採用の決め手だったこれまでの特定保健指導は、効果、実績での比較はもちろん、ICTの活用によって、参加する側の「便利さ」も今後は保険者側の採用の決め手に必らずなってくると思います。
しかし、これまでリアルで提供していたプログラムのICTへの単純な置換えだけで、通用するものではないことも理解しておく必要があります。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、
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