『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“女性のヘルスリテラシーと仕事のパフォーマンス、なぜ相関する?”
女性のヘルスリテラシーと仕事のパフォーマンスの関係を分析した興味深い調査結果がある。日本医療政策機構が18〜49歳の働く女性2,000人を対象に実施した調査(働く女性の健康増進調査 2018)によると、ヘルスリテラシー(※1)が高い女性は仕事のパフォーマンスが高く、反対に、ヘルスリテラシーが低い女性は仕事のパフォーマンスが低いことがわかった。相関が見られるのはなぜ?
(※1)日本人の働く女性を対象に女性生殖器特有の疾患を予防および早期発見するために開発された、性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度2を使用し、高ヘルスリテラシー群と低ヘルスリテラシー群に分類。
<ヘルスリテラシーと仕事パフォーマンスの関係>
ヘルスリテラシーが高い群と低い群、それぞれの1カ月の仕事のパフォーマンスを比較したところ、低ヘルスリテラシー群の方が、仕事のパフォーマンスが低いことが調査でわかった。以下、グラフ縦軸の「絶対的プレゼンティーズム 」は、得点が高いほど仕事のパフォーマンスが高いことを表す。
<ヘルスリテラシーと不調期の仕事パフォーマンス>
続いて、女性特有の不調期に絞って仕事パフォーマンスを調査。PMS・月経随伴症時と、更年期、それぞれの仕事パフォーマンスも、ヘルスリテラシーの高低と相関関係にあった。
<PMS・月経随伴症時の仕事パフォーマンス>
通常の元気な状態の時の仕事の出来を10点とし、PMS・月経随伴症状時の仕事の出来を0〜10点で表してもらったところ、高ヘルスリテラシー群は、通常より3.997点の低下であったのに対し、低ヘルスリテラシー群は4.221点の低下。ヘルスリテラシーが低い女性の方が、PMS・月経随伴症症状時の仕事パフォーマンスが低下することがわかった。通常の元気な状態の時の仕事の出来を10点とし、PMS・月経随伴症状時の仕事の出来を0〜10点で表してもらったところ、高ヘルスリテラシー群は、通常より3.997点の低下であったのに対し、低ヘルスリテラシー群は4.221点の低下。ヘルスリテラシーが低い女性の方が、PMS・月経随伴症症状時の仕事パフォーマンスが低下することがわかった。
<更年期の仕事パフォーマンス>
更年期についても同様の結果が見られ、低ヘルスリテラシー群の方が更年期の症状が出ている時の仕事パフォーマンスが有意に低下することがわかった。高ヘルスリテラシー群は通常時より4.17点の低下であったのに対し、低ヘルスリテラシー群はさらにパフォーマンスは落ち、4.561点の低下が見られた。
<ヘルスリテラシーの高低で異なる健康行動>
なぜ、ヘルスリテラシーが高いと仕事パフォーマンスが高く、反対に低いとパフォーマンスは下がるのか?その答えは、日頃の健康行動にあるようだ。高ヘルスリテラシー群は低ヘルスリテラシー群に比べ、PMSや更年期の症状が出ている時に医療機関の受診や服薬などの対処をする人は1.9倍多いことがわかった。
日頃の健康管理についても、ヘルスリテラシーの高低で差が見られた。「健康アプリ等を使って月経周期を把握している」「気になる症状があったときは、すぐに産婦人科を受診するようにしている」など、全項目において高ヘルスリテラシー群の方が健康管理の実施率が高いことが明らかになった。
ヘルスリテラシーが高いと健康管理の必要性を理解しているので健康行動が起き、不調を自身でコントロールできる。よって仕事パフォーマンスの大幅な低下を抑えられるー。ロジックとしては単純にそういうことだろう。
ヘルスリテラシーは、元気に働きたい女性ワーカー自身のためにも、そして、生産性を高めたい企業にとっても重要であることが、この調査結果から読み取れる。
<女性のヘルスリテラシー向上で、生産性アップ>
PMSや更年期の症状が出ている時は、ヘルスリテラシーの高低に関係なく仕事パフォーマンスはどうしても低下してしまう。だが、ヘルスリテラシーを高めることでパフォーマンスの低下度合いを抑えられる可能性は十分にある。社内講座や啓発活動により女性ワーカーのヘルスリテラシーを高めるのは、生産性アップに大いに有効だろう。
女性の健康経営施策として、真っ先に健康経営ツールの導入や福利厚生の充実を図る企業は多いが、そもそも、女性ワーカー自身のヘルスリテラシーが低ければ、企業側が思ったほどには活用してもらえない。生産性・業績アップのために、そして健康経営ツールの有効活用のためにも、まずは、とにもかくにも女性自身のヘルスリテラシー向上施策を。不調を軽減できるだけでも、女性たちは今よりもっとイキイキと楽しく働ける。
記事原文はこちら(ウーマンズラボ、2021年4月15日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、女性のヘルスリテラシーと仕事のパフォーマンスの相関についてです。
今回の記事の中で取り上げている「ヘルスリテラシー」は、性成熟期女性のヘルスリテラシー尺度2を使用し、高ヘルスリテラシー群と低ヘルスリテラシー群を分類して、女性特有の不調期に絞って仕事パフォーマンスとの相関を見ています。
一般的にヘルスリテラシーの高低が、健康や体調に関係していると言われているため、ヘルスリテラシーの向上を目的に、健康経営の取り組みの一つとして健康教育のアプローチを取り入れている企業も多いです。
今回の記事では、ヘルスリリテラシーが健康、体調と密接に関係している仕事のパフォーマンスという視点で、相関を調査しています。
やはり、ヘルスリテラシーが高い人の方が、健康管理の必要性を理解しているので健康行動が起き、不調を自身でコントロールでき、その結果仕事パフォーマンスの低下を抑えられるということがこの調査から見えてきています。
ヘルスリテラシーとは、知識の習得にとどまらす、その先の「健康行動」や「正しい対処」まで含んでいるのが「ヘルスリテラシー」の本来の意味です。知識だけあっても健康にはなれません。行動が伴ってはじめて健康、改善に向かうのです。
そういう意味では、ヘルスリテラシーを高めることは、健康、体調が良い状態を維持でき、もしなにかあっても正しく対処できるので、結果的にコンディションを低下させることが少ないので、仕事のパファーマンスもある程度コントロールできるということになるのだと思います。
ヘルスリテラシーの向上に向けた健康教育的なアプローチは、やはり健康行動や不調を自身でコントロールできようなところまで結びつける必要性があります。
健康情報を伝えて終わりではなく、健康情報を活用できるようにするところまでサポートすることが、ヘルスリテラシーのアプローチでは必要になってくることを今回の記事を見てあらためて感じました。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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