『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“【世界アルツハイマー月間】3人に1人が認知症に 〜高齢者・エイジテック市場に関わる企業が見るべきデータ〜”
【世界アルツハイマー月間】
毎年9月は世界アルツハイマー月間。アルツハイマー病とは、記憶・思考能力・行動に障害が出る脳の病気で、認知症の原因となる(国内では認知症患者の7割近くがアルツハイマー病を原因としている)。平均寿命の延伸により認知症患者は年々増えており、特に女性は要注意だ。世界アルツハイマー月間の今、認知症について理解を深めよう。高齢者市場・エイジテック市場に関わる企業は特に要チェック。
世界アルツハイマー月間とは?
毎年9月は世界アルツハイマー月間で、9月21日は世界アルツハイマーデー。国際アルツハイマー病協会とWHOが共同で1994年に制定したもので、認知症の啓蒙を実施している。日本では「認知症の人と家族の会」が主だって活動をしており、他、今年は全国各地で2,400ものイベントが開催されている(詳細は厚労省HPより確認)。
2060年、3人に1人が認知症に
65歳以上の認知症患者数と、65歳以上に占める有病率はともに増加の一途をたどっている。2012年は患者数462万人で約7人に1人(有病率15%)だったのが、2025年には730万人で約5人に1人(有病率20.6%)、2060年には1154万人で約3人に1人(有病率34.3%)が認知症になるとの推計が出ている(「認知症施策の総合的な推進について」厚生労働省老健局,令和元年6月)。
女性に多い認知症
続いて、男女別・年齢階級別の認知症有病率を見てみよう。以下グラフを見ると、有病率は加齢とともに上昇し、そして女性に多いことがわかる。90代以上では7割以上の女性が認知症だ(「認知症施策の総合的な推進について」厚生労働省老健局,令和元年6月)。
認知症を恐れるも、低い予防意識
前述の通り2025年には65歳以上の5人に1人が、2060年には3人に1人が認知症になる時代がやってくる。平均寿命の延伸で誰もが認知症を患う可能性がある中、今の人々はどれくらい危機意識を持ち、そして予防意識を持っているのだろうか?それがわかる調査結果がある。
キリンホールディングスは今月、世界アルツハイマー月間に合わせ「認知機能低下に関する意識調査」を実施し公表した。20歳以上の男女5,345名を対象に、認知症に対する知識、認知機能に対する意識・行動などについて聞いたもの。それによると、認知機能の低下に対する不安や予防の必要性を感じている人は20〜70代の全年代を通じて非常に多いものの、その割には、認知症をきちんと理解していたり予防に向けた取り組みをしている人は少なく、意識と行動が伴っていない様子が明らかに。漠然とした不安は抱えているものの「自分は大丈夫」と思っている人が多いのが現実のようだ。ちなみに、人々が特に恐れているものは何なのか?「認知機能の低下のうち、特に気になるもの」を聞いたところ、トップ5は以下だった。
1位:記憶力(4,877人)
2位:判断力(3,447人)
3位:言語能力(2,542人)
4位:計算力(1,525人)
5位:遂行力(1,351人)
記事原文はこちら(ウーマンズラボ 2021年9月22日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、高齢者・エイジテック市場関連の注目データと認知症への危機意識と予防意識に関するニュースです。
まず、認知症のデータとして抑えておかないといけのが、65歳以上に占める有病率の推計。
2012年 約7人に1人(有病率15%)
2025年 約5人に1人(有病率20.6%)
2060年 約3人に1人(有病率34.3%)
65歳以上の認知症の有病率は、あと4年後には5人に1人になるとの推計で、私自身も他人事ではない状況です。
また、有病率は加齢とともに上昇し、女性に多い。90代以上では7割以上の女性が認知症ということです。
このようなデータからも認知症が今後の国民的な「病」として注目を集め、高齢者・エイジテック市場の盛り上がりにつながっていくことは間違いことだと思います。
しかし、気になるデータ、調査結果として、認知症への危機意識と予防意識として、危機意識は高いものの、認知症の正しい理解や予防への取り組み意識はまだまだ低いということで、やはり高齢者・エイジテック市場の難しさもわかってきています。
認知症に対しては、認知症になってからのケア、サポートはさることながら、やはり認知症にならない、なり難くするための予防の取り組みも大切なことです。
しかし、危機意識は持っていて漠然とした不安は抱えているものの、他人事と思っている状況では、いくらデータから認知症の有病率が高くなって高齢者・エイジテック市場が盛り上がっても、対象となる人の予防意識が低いままでは、予防に対する費用負担の意識も低いままになってしまいます。
加齢に伴って運動器疾患につながる「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」「フレイル」なども、この認知症と同じことが言えて、危機意識は持っているものの発症する前の予防への意識が低いため、なかなか取り組みにつながりにくく、危機意識の高さに比べて盛り上がってきていない印象を持っています。
危機意識を他人事で終わらせるのではなく当事者意識を持って予防にいかに導けるかが、認知症を含めた今後の高齢者・エイジテック市場では重要なことではないかと考えています。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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