『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“ピアサポートに特化したこころのオンライン相談アプリ『mentally(メンタリー)』、正式ローンチ”
~メンタルヘルスの相談に対するハードルを下げ、お互いに支えあう社会を目指して~
Mentallyは、年7月5日(火)に、ピアサポートに特化したこころのオンライン相談Webアプリ『mentally(メンタリー)』を正式リリースしたことをご報告します。Mentallyは本年2月に公式ティザーサイトを公開し、先行登録受付を開始して以降、多くのユーザーが事前登録し、β版のご利用を通じてサービスの改善を行ってきました。今回の正式リリースに伴い、アプリの機能や今後の予定についてご報告いたします。
・こころのオンライン相談アプリ『mentally』正式ローンチの背景
『mentally』はピアサポートに特化したこころのオンライン相談Webアプリです。ピアサポートとは、同じ悩みや病気に苦しみ、乗り越えた経験を持つ当事者に話を聞いてもらうこと、経験談を聞くことで治療や症状の改善に役立てる手法です。
いま、メンタルヘルス/ウェルビーイングは世界共通の社会課題となっています。日本は諸外国と比較しても精神疾患の有病率が低く、うつ病の患者数は120万人程度ですが、潜在的な患者数は約400万人以上にも上ると言われています。また、自殺率は先進国の中でも飛び抜けて高く、G7中ワースト1位です。コロナ禍により、さらにメンタルヘルスは悪化しており、うつ病・うつ状態の人の割合はコロナ禍以前と比較して2.2倍に増え、約6人に1人(17.3%)に達しています(OECD調査、2021年)。
有病率が低いにも関わらず自殺率が際立って高い理由は、医療機関の受診やカウンセリングを受けることに対する心理的・経済的なハードルが非常に高く、多くの方が一人で抱え込んでしまい、結果的に症状を悪化させてしまうためです。実のところ、代表である私自身も5年前にメンタルに不調をきたした際、メンタルクリニックに対する偏見や恐怖心から受診を拒み、結果的に半年以上もの間ベッドから起き上がれず苦しむ日々を送っていました。そんな中、運良く経験者の方にお会いし、ピアサポートを受ける機会があり、それがきっかけでなんとか治療への一歩を踏み出すことができ、社会復帰をすることができました。
『mentally』は、メンタルヘルスに不安を抱える方が、運や縁に依存せず、誰でも経験者(公認メンター)にオンライン上で相談し、ピアサポートを受けることができるWebアプリです。4月末に無料で利用できるQ&A相談機能のみを実装したβ版を事前登録くださった方限定でリリースをし、非常に多くの反響をいただきました。実際にサービスをご利用くださったユーザーのご意見を元に改善を重ねた上で、有料でメンターに個別相談できる機能を追加した上で、この度正式にリリースをする運びとなりました。
・『mentally』アプリの特徴、機能について
「自分のこころにも、誰かのこころにも、やさしくなれる時代をつくる」というビジョンの実現に向けて、『mentally』には3つのUX(ユーザー体験)コンセプトがあります。サービスの特徴も、それぞれのコンセプトを体現するものとなっています。
1.思っていることや感じていることを、素直に表現することができる
2.独りではない安心感を感じることができる
3.継続的な対話を通じて、不安を解消することができる
プレスリリースはこちら(株式会社Mentally 2022年7月5日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、ピアサポートに特化した相談アプリ『mentally』に関するニュースです。
「ピア」とは、仲間、友人、対等者などの意味を持ちますが、今回のニュースのアプリの中では、メンター(経験者)という役割、位置付けになります。
今回の『mentally』というアプリは、メンタルヘルスに不安を抱える人向けということで、メンタルヘルスに不安を抱えた同じ経験を持つメンター(経験者)にアプリを通して相談できるというものです。
ニュースの中でも紹介されていますが、メンタルヘルスに不安を抱える人の場合、医師や専門家に相談するというのはハードルが高く、一人で抱え込んでしまい、結果的に症状を悪化させてしまうことが多いようです。
このようなメンタルヘルスへの不安を一人で抱え込んでしまうことに対して、ピアの存在、それもメンターといったメンタルヘルスの経験者にアプリを通して悩みを打ち明けられるという仕組みは、対象者の課題、悩みに寄り添ったサービス、機能だと思います。
また、経験者として相談に対応するメンターの人達にとっても、経験談を共有してメンタルヘルスに不安を抱える人に対して役立っているといったこと自体が、メンター(経験者)自身のメンタルヘルスの安定はもちろん、人のためになっているといったインセンティブ的な機能が働いて、メンター(経験者)にとっても良い効果があるのではないかと考えます。
ピアサポートとしてメンター(経験者)を数多く確保して、アプリで活躍してもらう仕組みづくりこそがこのアプリの肝になると思います。
アプリは対象者とメンター(経験者)をつなぐ役割であって、メインのコンテンツは、人であるメンター(経験者)のピアとしての寄り添いであり、存在自体だと思います。
アプリというとシステムや自動化といった点がフォーカスされる傾向が強いですが、ヘルスケア系のアプリ、サービスでは、「人」の存在、寄り添いが必要な部分があります。
その「人」と「人」をつなぎ、共感、共有する場がプリであるといった仕組みの可能性を今回のニュースで見て、あらためて感じました。
まだまだ他のテーマでも拡げられそうな仕組みだと思います。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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