12月6~7日の2日間、東京都内でのオフィシャル開催2度目となる『Health 2.0 Asia – Japan 2016』が開催されました。
1日目となる6日は昨年に引き続き、Health 2.0の共同創設者Matthew Holt氏がメインモデレーターとして登場し、朝8時から18時過ぎまでの大ボリュームのセッションとなりました。
1日目からはロボットに関するセッションとMatthew Holt氏の講演をレポートします。
(取材:小松智幸/渡辺武友)
■インターフェイスとしてのロボット
モデレーター:影木准子氏(カワダボディックス株式会社)
パネラー:
山田智広氏(日本電信電話株式会社)
武地実氏(株式会社ウィンクル)
長谷川良平氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
今年の「ロボット」に関するテーマは、コミュニケーションのインタフェースとしてロボットがどのような役割を果たせるのか? というものでした。タイプの違う3つの事例が紹介されました。
R-env:連舞/山田智広氏
「R-env:連舞」は、高機能なロボットやIoTデバイスを使うための技術として開発された。エンジニアでなくとも、複数のデバイスを簡単に連携させるサービスである。
コミュニケーションロボットの役割は、人型、モノ型、ペット型などが考えられる。
現在、ペット型として「あのねR-env」を開発している。ロボットに生き物に見えるような動きを与えることで親近感を持ってもらえるようになり、コミュニケーションしやすくなる。関節数等に制約のあるロボットには、アニマシー知覚の研究が重要になる。
「あのねR-env」は自立型ロボットで、例えば高齢者の生活支援が可能になる。薬を飲み忘れれば知らせてくれる。また忘れずに飲むと褒めてくれたりする。アニマシーを取り入れて可愛い動作と共に音声で伝えてくれるところがポイントになる。
Gatebox/武地実氏
ARとIoTの技術を融合させたバーチャルロボットを開発している。「Gatebox」というハードウェアの中にキャラクターを出現させてコミュニケーションしてくれるもので、画面の中のキャラクターを現実世界に連れてきて一緒に暮らすことができる。1人暮らしをターゲットとして、その主に寄り添い、適正なタイミングでコミュニケーションをはかっていく。ネットを使った悪ふざけ(Twitterに寝顔をアップしてしまったり)などで楽しませてくれる。
4月からムービーをYouTubeで公開しているが、国内よりも海外からの閲覧率が70%を締め、世界中から興味を持ってもらえている。
開発にあたって考えたことは、今後複雑化するデバイス類を自分でコントロールしていくのはナンセンスではないか。「Gatebox」で、主人の替わりに操作してくれるインターフェイスにしていきたいと思っている。
それを実現するために、本当に一緒に暮らしたくなるものは、何も3次元のロボットである必要はない。すでに多くの人が子供の頃からアニメのキャラクターなどと慣れ親しんでいるので、画面のなかに出現するバーチャルキャラクターとして開発していった。バーチャルで動かすことで、3次元では難しい表情などが早い段階から取り入れることができるようになった。
隣にいるだけで心癒される存在となり、「最高のおかえり」をユーザーに届けたいと思っている。
脳波によるロボットアバター制御システム/長谷川良平氏
コミュニケーションを取ることが難しい人(神経難病、脳卒中患者等)をサポートするものとしてニューロコミュニケーターを開発している。
ニューロコミュニケーターは脳波による伝達ツールで、小型の無線脳波計を頭皮上に装着し、画面のメッセージの候補を絞っていくことで意志を伝える。
さらに、ロボットアバターに感情を表現させるアプローチを行なっている。ニューロコミュニケーターからどう表現をしたいか選択することで、ロボットが動作(ヤッター!等)してくれる。
将来的には、介護ロボット等が患者に変わって行動できることを目指していく。
すでにバリアフリーの概念できたので、次は身体的な制約を超えるボディーフリーな環境にしていきたい。
■Keynote – トランプ政権下でどう変わる米国のヘルスケア
スピーカー:Matthew Holt氏(Health 2.0)
トランプ新大統領が登場したことにより、ヘルステックがどのような影響を受けるのか? 米国はオバマケアにより、テクノロジーに大きな影響を与えた。すでに4,000社がHealth 2.0に組み込まれるまでになってきている。
一方、次期大統領であるトランプ氏は、何度もオバマケアを廃止すると言ってきた。別のものに置き換えると言っているが、それが何なのかはわかっていない。
オバマケア廃止のためにジョージア州のトム・プライス下院議員を保健福祉省長官に任命した。しかし簡単には廃止することはできないだろう。もっとも大きな課題は上院議員の議席数が60を超えない限り、廃止に追いやることまではできない。特に財政面で変えるのは難しいだろう。
何か変化を起こすことはできるだろう。オバマケアには2つの柱がある。ひとつはアメリカ人の保険の取得の仕方を変えたこと。すでに2,000万人もの国民が保険を取得している。もうひとつは米国のヘルスケアに対する支払いのされ方が変わったことだ。
しかし、全員が保険を買わないとならなくなったことに反対している人は多い。共和党にも不人気だった。またメディケアは縮小され、補助金も削減されるだろう。
政権が変わっても、変わらないものもある。それがテクノロジーだ。これまでより自己負担が増えることなるので、より透明性あるものが必要になってくる。それを担うのがHealth 2.0の役割になってくるだろう。
今後、新しいタイプのプロバイダーが出て来るだろう。保険対象外で、安価な遠隔によるセルフケアが受けられるようなものが求めれられている。
セルフケアとして、電子カルテを使った集団ケア(公衆衛生)や、ツールを使ったものが進化していくと考えられる。
同じく1日目に「Keynote – Patient Experience」で講演を行なったYosuke Chikamoto氏(Mount Sinai System)には、公演終了後にインタビューを行ないましたので、講演の模様はインタビュー記事と合わせ、後日紹介したいと思います。
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