2023年12月11~12日の2日間、室町三井ホール&カンファレンス(東京都中央区)にて『Healthtech/SUM 2023』が開催されました。
mHealth Watchとしては『Himss & Health 2.0 Japan2019』以来の取材となります。
4年振りに参加した感想としては「レベルが格段に上がっている」でした。
特にピッチコンテストのレベルの高さには驚かされました。
mHealth Watchでは2日目にお伺いしました。レポートを何本かにわけてご紹介していきます。
まずはセールスフォース・ジャパンの取り組みをお届けします。(取材:渡辺武友)
DeepDiver:
日本が目指すべき地域ヘルスケアの未来
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パネリスト:
上中進太郎氏(株式会社セールスフォース・ジャパン)
北原雄高氏(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
中村亮太氏(デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
メドピアでHealthtech/SUM統括ディレクターを務める医師の上田悠理氏がモデレートする形で、地域医療の患者中心の世界実現に向けて活動するセールスフォース・ジャパンの上中進太郎氏(以下:上中)、デロイトトーマツコンサルティングから北原雄高氏(以下:北原)、中村亮太氏(以下:中村)の3名に現在患者中心への取り組みはどのような段階にきているのかを伺いました。
現在の医療業界の課題、現在取り組んでいる「患者中心の医療」とはどのようもの?
上中:日本の現在の国民医療費は46兆円。2025年には54.9兆円に達すると試算されている。また医療労働人口は2030年には187万人不足すると予測している。その他、この2年間で介護サービス利用者が3.5倍になったことからも、今後は医療・介護連携(情報共有)がより一層求められる。
このような医療業界の課題に対して、「患者中心の医療」が改善に貢献するのではないかと考えている。
「患者中心の医療」で求められるのは、患者の希望やニーズに合わせて治療計画等を相談して作成し、患者自身が納得して治療に望むこと。そして治療や健康維持に積極的に関わってもらう。
それを医療、介護関係者が共有して適切ケアを行う。さらに健康保険組合や製薬会社、ヘルスケア関連企業などが患者を支援するサービスを提供していく。
このような情報を関係者で共有しながらケアをしていく。これが「患者中心の医療」の世界となる。
定義上の「患者中心の医療」とは?そしてどんな取り組みが行われているのか?
上中:ある病院での治療や今後に治療についてなど、患者が他の専門職に伝えなければならないことがある。しかし患者は医療の専門家ではないので、情報が欠落してしまうことがある。そのような情報連携をサポートする仕組みが必要となる。
セールスフォースとしては「患者CRM」を提供している。
北原:例えば高齢者を対象にすると、多職種が連携する必要性がある。そのためには患者自身にも多職種の方々にも医療情報、介護情報、生活情報を一元管理し共有できるようにする必要がある。
そして多職種がコミュニケーションしながらケアをしていく。
「患者CRM」は営業やマーケティング担当も共有し、患者に価値を提供していけるものだと考えている。
「患者CRM」は、どのように使われているのか?
中村:アドバンス・ケア・プランニング(患者の将来を考えたケアを患者本人、家族、専門職が繰り返し会話して共有する)を行うのに、職種の壁、施設の壁が存在する。現在は多職種が個別に電話で確認しないとならないことが多い。
非常に時間がかかるので、患者が増えると対応が難しくなってしまう。「患者CRM」のようなツールを使うことで効率化をはかることができる。
上中:その他「患者CRM」の活用として、例えば通院の予約した日に合わせてリマインドすれば、無断キャンセルなどを減らることができる。病院(枠の無駄をなくす)にも患者(治療断念抑制)にも利点がある。
「患者CRM」実装の課題は?
中村:電子カルテとの情報連携が必要になる。クラウドサービスを使うことによるセキュリティ面が課題となることがある。適切な連携方法などを丁寧に作り上げていく。
導入できる規模などがあるのか?
上中:現在はある程度規模のある病院が中心だが、患者の周りの方々が情報共有することが大切なので、近隣の医療機関、介護施設などで連携して使うことを前提に検討されるのが望ましい。
これから「患者中心の医療」を進めるにあたり重視することは?
北原:システム的な課題よりも、多職種でいかに「必要なケアのあり方」のイメージを共有できるかが重要。そのためには、どのような指標を見るべきか?患者から伝えられた情報の標準化など、1対1から多対1のケアという新しい形を思い描くことからはじめていただきたい。
新しい取り組みになるので、いきなり大規模にではなく、小さく始めていくのが望ましい。
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