『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“体内で分解する、人体に無害な「生分解性小型バッテリー」”
究極のウェアラブルデバイスとして、体内で健康状態をチェックする「体内ロボット」が挙げられており、いつの日か実現することが期待されている。その時に大きな問題となるのがロボットを駆動させるバッテリー。現在、ハードウェアの主力バッテリーとして使われているリチウムイオンバッテリーは人体に有害であるため、体内ロボットの用途では使えそうにないため、新たなバッテリーの開発が不可欠となっている。そんな体内ロボット用のバッテリーに応用できるかもしれない「生分解性バッテリー」が開発された。
イリノイ大学の研究チームが体内で自然に分解する生分解性バッテリーの開発に成功し、その成果を「Advanced Materials」で発表した。
2012年にイリノイ大学の材料学者のジョン・ロジャース博士が体内で温度や機械的な負荷をモニターして外部に無線通信できる生分解性を持つシリコンチップの開発に成功した。しかし、このチップは電磁誘導を利用して動力を外部から送電する必要があるため、体内ロボットとして用いるには支障があった。
そこで生分解性バッテリーの開発に着手したロジャース博士とその研究チームは、今回、陽極にマグネシウム箔を、陰極に鉄・モリブデン・タングステンを、電極間の電解質としてリン酸緩衝生理食塩水を用いたバッテリーを開発した。バッテリーに用いられた合金は低イオン濃度を保つ限り生体に害を与えず、またバッテリーを構成する容器には生分解性ポリマーが用いられるなど、体内で溶解しても無害な素材が使用されている。
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『mHealth Watch』の視点
先週の注目ニュース“科学者たちは、データを保存&クスリを配信するスマート「タトゥー」を作る”で紹介した、肌に直接貼るタイプや薬のように飲むタイプが、次世代のウェアラブルデバイスとして注目を集めっています。
腕につけるタイプなどは装着していると気になってしまうことがあります。例えば、ノートパソコンを使っている時、デバイスがパソコンに当たって邪魔になったり、眠っている時に布団に引っ掛けて夜中に起きてしまうなど。それに比べて貼るタイプなら、バンソコウのようにほとんど気にならずに使うことができます(もちろん、個人差があることですが)。
しかし、貼るタイプや薬のように飲むタイプがなかなか実現できない理由に「電源」と「通信」の問題があります。さらに飲むタイプには、体内でどう変化する(変化させる)か? という問題もあります。
これらを解決する方法として開発された技術が「生分解性バッテリー」です。この技術も、すぐに製品化というわけにはいきませんが、今後大いに期待が持てます。
患者や生活者がより計測を意識しない環境が整備されていくことになりますが、次はどのタイミングで健康改善、治療に意識を向かせるかが重要になります。健康ビジネスにとって、技術の進歩に合わせ、すぐにでも取り組むべきテーマとなっているのではないでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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