『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“科学者たちは、データを保存&クスリを配信するスマート「タトゥー」を作る”
電子皮膚を開発する実験は初めてのことではないが、格納、治療の機能を持つものは初めてだ。Institute for Basic Science、韓国のソウル大学、テキサス大学オースティン校によって行なわれた研究が『Nature Nanotechnology』に報告された。
マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くMC10, Inc.,も、研究チームの一部として掲載された。同社のWebサイトによると、「人間の身体や自然界のものに合わせて、伸ばしたり曲げたりねじったりできる薄くて柔軟な機器」を製造している。
チームが開発したパッチは、長さが約4cm、幅が約2cmで、厚さは0.003mmだ。皮膚に似たポリマー素材は、伸縮自在のモーションセンサーと温度センサー、ReRAM、マイクロヒーター、皮膚から吸収される薬剤の層構造。
想定される使用ケースとしては、筋肉の動きに反応して(例えば、てんかんやパーキンソン病の)薬剤を投与するといったことが挙げられる。
この新しい皮膚には、バッテリーと送信機が含まれていないが、これらはともに皮膚に近づける必要がある。候補となるリチウムバッテリーやRFIDタグといったものは、まだ十分な柔軟性を備えていない。
電源と送信機の問題が解決されれば、電子皮膚は体内に組み込まれたり、遺伝子的にコード化された技術が拒絶反応を起こさなければ、適用へ向けた最終段階へと移る。
「皮膚ベースの機器」というカテゴリーは、昨年11月のMotorola Mobilityにより特許申請され、その後Googleに所有権が移った、「人体の喉の部分に適用可能な電子皮膚タトゥー」に続くものである。Motorolaのビジョンでは、タトゥーは、スマートフォンや『Google Glass』のような、より大型の機器とBluetoothで通信したり、少なくともアプリケーションには、マイクと電源を持つことが可能だ。そして、皮膚の発作的な反応を計測し、「ウソ発見器」として使用もできる。
2011年には、イリノイ大学Urbana Champaign校の研究チームが、一時的なタトゥーのように着けたり取り外したりでき、粘着性でない、皮膚に似た柔軟な格子模様のタトゥーの開発を発表した。このタトゥーは、心臓の鼓動、脳の活動、筋肉の収縮を記録でき、無線で電源供給を行なうことが可能だ。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目のニュースは「スマート“タトゥー”」に関する記事です。
昨年くらいから急激に注目され始めた「ウェアラブル機器」ですが、現時点の機器の方向性を見ていると、「ウェアラブル=着る、装着」というアプローチが中心で、まだ多くはありませんが「肌に貼る」というアプローチもあります。
また、現時点での「肌に貼る」というアプローチにおいては、データを取得する、というデータトラッキングだけの機能が中心です。
今回注目したニュースでの「肌に貼る(スマート“タトゥー”)」では、データの取得はもちろん、そのデータから瞬時に薬剤の投与までを想定しているようです。
この夢のような「スマート“タトゥー”」には、まだまだいくつかの課題があるようです。特に電源と送信機の柔軟性、また小型化という部分もあると思います。また将来的には体内への組み込みも想定しているので、その場合の拒絶反応を起こさない素材の追求なども課題のひとつでしょう。
装着の負担や煩わしさが軽減される「スマート“タトゥー”」は、身体の変化を瞬時に反応して対策も自動で対応してくれるとなると、疾病を抱えた方には非常に有効な機器になり得ると思います。
「スマート“タトゥー”」は、疾病を抱えた方々のQOL向上に役立つ夢のような機器だと思うので、技術的な面をクリアして1日でも早く実用化してほしいと願うばかりです。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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