『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“SMSは10代の若者にメッセージを届けるのに役立つか?”
若者世代の間で、圧倒的1位のコミュニケーションツールはSMSである。ニールセン消費者リサーチグループによると、10代の若者が1日あたりに送信するSMSは平均114通である。
一方、Pew Researchによると、音声通話を毎日送受信している10代の若者は39%、毎日メールを使用しているのはわずか6%である。このことから、より多くの機関が、ヘルスケア分野で10代や若年成人のアクセスにプラスの影響力を持つツールとして、SMSの大きな可能性に気付きつつある。
健康アドバイスや教育目的の質疑応答では、SMSを使った文章のやり取りがよく行なわれ、特に新しくもない手法ではあるが、業界にはほとんど浸透していない。ヘルスケア分野は、リサーチ分野と並んでSMSによって効果的、実用的な手段で患者と交流でき、SMSからプラスの影響を受けている。この影響の大きさは、SMSで文章をやり取りする質疑応答以上のものである。
リサーチ分野では、SMSを使用した患者交流目的のアプリケーションが数多くある。臨床試験の初めから終わりまで患者を調査に結びつけておくには、SMSを使った双方向交流が費用効率の高い手段である。SMSは患者の募集や保持、調査期間全体の進み具合の監視に使用されている。研究者は、10代や若年成人と効果的にコミュニケーションをはかるには、SMSが有用であることに次第に気付き始めており、この年齢層を対象とした臨床試験での募集と保持の達成率を向上させている。10代の若者は、常に携帯電話を手にしているようなので、携帯機器上の連絡手段を効果的に使用することで、臨床試験は若い年齢層と交流を深める機会を得ている。使用事例のなかには、コンプライアンス、投薬、電子患者報告結果(ePRO)の収集、調査参加のインセンティブの配布などがある。
10代の若者は、宿題や放課後活動、人付き合い等で忙しい。したがって、自分の健康に関する詳細情報を得るのに役立つ、予約や教育的な事項に焦点を合わせることはめったにない。ヘルスケア提供者は、予約リマインダー、健康ヒント、情報を使ってタイミング良くメッセージを配信でき、その配信メッセージは目を通され、受け取り次第返信される可能性が高い。Mosio社は現在、あるクライアントと共に、生徒にSMSを使って校内クリニックの予約を取る試験的研究に取り組んでいる。生徒が電話連絡に応えない割合や、折り返し電話しない割合が高く、無視される電話リマインダーに貴重なリソースを無駄にしてきた。10代の若者がSMSやソーシャルメディアを使うほど、頻繁に友達同士の連絡に電話を使わないのであれば、クリニックの予約確認のために電話をすることもない。
オーダーメイドの健康教育と動機を与えるメッセージは、より健康なライフスタイルを導き、慢性疾患や急性疾患を伴う生活を支援できる。血糖値検査、運動療法の遂行、STDの検査受診、その他あらゆる目的の警告やリマインダーとして、SMSはヘルスケア提供者に自動的かつ簡単な手段を提供し、望ましい結果を導くために若い患者らとの交流を増やすことができる。
10代と若年成人層の間の前向きな行動変化の促進と、ヘルスケア向上の分野において、ゲーミフィケーションが主要な役割を果たし始めている。失読症の子ども達の読み能力を改善することから、若い世代に10年長生きするための教育をすることまで、人々のより高い生活の質の達成を助け、より健康なライフスタイルを送ることにゲームが役立つことが証明され始めている。
若い患者が自分のヘルスケアの道を進むのに伴い、SMSをテキストベースの報償システムとして使い、望ましい行動をした時にポイントを獲得したり、達成バッジやレベルをアンロックしたりできる。長ったらしい説明に耳を傾け、パンフレットを読み、ヘルスケア問題の結果について考えを巡らす代わりに、患者はSMSを使ってゲームをプレイでき、インセンティブを受け取る。それが、実在のものでも仮想のものでも。ゲーミフィケーションの多くの要素は、現在アプリ内に存在する一方、SMSは世界中のより多くの若者にアクセスできる強力な交流ツールである。
記事原文はこちら(『mHealth News』6月5日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目のニュースは「コミュニケーションツール」に関する記事です。
米国の若者世代の間では、コミュニケーションツールの中心はSMSであり、10代の若者が1日当たり送信するSMSは平均114通に達しヘルスケアサービスの分野でも若者世代へのアプローチ、コンタクトにSMSの活用の可能性に気づき始めているようです。
SMS(ショートメッセージサービス)とは、短いテキスト(文章)によるメッセージを送受信するサービスで、日本を除く多くの国々では主流の通信手段となっています。日本では、キャリアメールや最近ではLINEなどの通信、連絡手段が多く、SMSを利用したコミュニケーションはそれほど活発ではない状況です。しかし、全世界の流れとして、音声による連絡手段からテキストによる手軽な通信手段へシフトしてきているのが事実です。
さて、今回特に注目すべき点は、ターゲットに合わせたコミュニケーション対応という点です。今回の記事でも紹介しているように、10代の若者は電話連絡に応えない割合や、折り返し電話をしない割合が高いという状況のなか、SMSに反応する傾向が高いため、通信手段をSMSに切り替えることで10代の若者の反応も高まり、またコスト削減にもつながることが期待されています。
このように、世代や利用者のコミュニケーションスタイルをしっかり把握した上で、アプローチ方法やコンタクトツールなどのサービスを設計するすることが必要になってきます。
また、利用者に合わせた通信手段を活用したコンタクトで重要になってくるのが記事にもあるとおり「オーダーメイド」、「パーソナライズ」だと考えています。利用者に合わせた通信手段を活用してコンタクトできたとしても、その内容がシステムマティックに送られてくる内容では、最初は反応するかもしれませんが、継続的に反応してもらうことは難しくなります。
やはり、そこには「オーダーメイド」、「パーソナライズ」が必要であり、また「人」が見てくれているという「温もり」が感じられることが、反応や継続にも影響します。
健康サービスは「どう伝えるのか」が重要なポイントだと感じています。そのポイントのひとつが「人が見てくれている」という演出だと思っています。
特に、デジタルの世界で利用者のコミュニケーションスタイルに合わせて、いかに人を介在させていけるか、という視点が、今後のmHealthには必要だと強く感じています。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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