『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“モバイルヘルス、医療における言葉の障壁解決へ”
Affordable Care Act(PPCAC、患者保護並びに医療費負担適正化法)の改訂によって、医療システムにおける患者数は増加した。これには会話に英語を用いない人も含まれている。アメリカ合衆国の非英語話者の患者数は、約3,000万人にものぼるとされている。医療システムを運営していくことは、たとえ母国語話者のためであっても、十分に困難なことである。しかし、それが英語を母国語としない人々に向けてのものだったらどうだろうか。これは、患者やその家族だけにとっての問題ではない。重要な役割を担う人々、介護者やその他の医療支援スタッフにとっての問題でもある。
これから、いくつかの革新的なアプローチを紹介する。これらは企業が取り組んでいるもので、医療における言葉の障壁を越え、患者と医療スタッフとのコミュニケーションを改善するための活動である。
Canopy Innovations社(Canopy Apps)のアプリ『Canopy Medical Translator』は、NIH Small Business Innovation Researchの資金援助で進歩をとげた。New Yorkを拠点とするCanopy Appsは、多言語医療翻訳プラットフォームを開発し、複雑な医療概念を非英語話者の患者に説明できるようにした。事業開発部の副部長Raj Jhaveri氏は、「20以上の言語に対応する予定」と話した。今のところ4つの医学専門領域として内科、救急医学科、産婦人科、そして外科をカバーしている。「その他の領域については、他の領域に比べてより患者との関連性の高いものを、今年の末までに追加する予定です」。
医師が講じる処置を説明する文言集も用意されているが、それとは別に医師は同時翻訳を提供できる。試験プログラムが2月に終わり、1,500以上の医療団体、たとえばPenn Medicine、New York Presbyterian、Duke Medicineなどがプラットフォームを採用し、医学会は利用者の拡大に貢献した。American College of Emergency PhysiciansやAmerican Medical Women’s Associationなどの医学会である。
Jhaveri氏は、「患者が、これから起こることをまったく理解していないことはよくあります。MRIのような複雑なことを説明されると、患者は話の意味がわからなくなってしまいがちです。我々のシステムは治療の始めから終わりまでをカバーしています。これは、医師が患者に情報を伝える手助けとなるでしょう」と話す。
同社はその他の言語についてもプラットフォームを対応させる予定として、珍しい少数言語だが、モン族語版への対応にも多くの要望が寄せられているという。
彼が今まで見てきた翻訳アプリケーションのいくつかは、旅行向きで、医療に適したものではなかった。特に、複雑な医療用語を翻訳しようとした時、それもソマリ語やハイチのクレオール語だったりすると、その傾向は顕著だった。それ以外は、使いづらかったり使い物にならないものだった。
さまざまな手段が、言葉の障壁への挑戦という取り組みで用いられている。もっとも評判の良いもののひとつが、アイコンの活用だ。医療IT企業はこのアプローチから、さまざまな活用法を考案している。
記事原文はこちら(『MedCity News』5月29日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは、医療現場における患者との言語コミュニケーションについてです。
アメリカは多くの民族が住む国であり、アメリカで長年住んでいても英語が話せない人は多いと言われます。同じ民族としかコミュニケーションを取らない、ちょっとした買い物レベルであれば、英語が話せなくても支障はないでしょう。しかし、病院ではそうはいかないことがあります。症状の伝え方ひとつで、命に関わることもあります。
今回のMedCity Newsの特集では、モバイルツールを使った、いくつか言語支援サービスを紹介しています。上記のCanopyもiOSアプリとして提供されています。
他にもいくつか紹介されていて、eCaring LLCは、在宅医療モニタリングプラットフォームを提供しています。高齢者が自宅で過ごせる時間を長くするのが目的で、望む場所で年を重ねたい、というトレンドに則ったものです。創立者でCEOのRobert Herzog氏がこのプラットフォームを立案したのは、介護者、特に英語を母国語としない人々のためでした。このプラットフォームはアイコンを使って、患者の日々の活動を伝える。食事や睡眠から、トイレの使用や運動までを、毎日の患者の調子に合わせて伝える。これは、家族などに自分が健康であることを知らせるためだけのものではなく、医療スタッフが、患者の経過や、再発の徴候などを見極めるためのものでもあります。また、潜在的な薬の副作用や、治療計画の効果を見るのにも使え、ロシア語、スペイン語、中国語、フィリピン語などにも対応しています。
日本の医療現場では、医療受付対話支援システムM3(エムキューブ)などが一部の病院で導入されいてますが、まだまだ言語支援は必要な状況と言えます。
2020年に東京オリンピックを控え、増々国際化が進んでいきます。医療における言語支援サービスの拡充が期待されます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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