『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“患者に力を与える3つのmHealth技術 – そして医者”
今年になって、技術系大手3大企業はその製品ラインを拡大し、デジタル医療に対応している。さらにGlobal Mobile Health Market Reportによると、モバイルヘルス市場は2017年までに全世界的に260億ドルに達すると予測している。ヘルスケア技術は、消費者市場を支配しつつあるだけでなく、病院や診療所に急速に導入されている。eHealth Standards and Services社のCMS(コンテンツマネジメントシステム)部門で、政策及び普及活動の先導を務めるElisabeth Myers氏の報告によると、2014年5月現在、病院や医師たちは電子医療記録の奨励報酬として237億ドルが支払われているという。診療所におけるヘルスケアIT(以下HIT)の導入により、患者のヘルスケアが簡便になってきている。その理由は、HITによって患者が自分自身で健康管理できるためだ。
では医師としては、どうすれば自分の患者が常に健康管理に取り組み、かつそれが実行可能な状態を継続させられるのだろうか? 以下に述べる3つのテクノロジーが、現在全国の患者達に提供されており、その健康管理を容易にしている。
●患者向けサイト(Patient portals)
患者達が医者のオフィスに電話をするのはどんな理由からだろうか? 主な理由は、検査結果を知るため、処方箋の補充を依頼するため、アポイントメントを取るためだ。それらのプロセスを簡易化するには支払い方法、専門分野、オフィスの場所をもとに医者を探すことのできる患者向けサイトを導入することだ。患者が自分のコンピュータか携帯電話からログオンし、検査結果を知り、質問し、リクエストを送信できれば、定期健診を避けたり、医者に会うのを延期する口実は無くなるはすだ。
●モバイルアプリ(Mobile apps)
携帯性はもはや特殊なものではなく、当然のものとなっている。eMarketer社は2014年末までに17億6千万人の人々がスマートフォンを持ち、使用するようになるだろう、という研究発表をした。この数字は世界人口の1/4に相当する。人々は必要なことすべてに自分の電話からアクセスしたいのだ。それは健康診断の記録、診察歴、バイタルサインの数値のみならず、アポを取るといった行為も含む。ちょうど各個人がモバイルアプリを使って自分の銀行情報にアクセスできるのと同じように、自分の医療記録を即座に入手できる必要がある。1週間後にそれらの印刷物が郵便でやっと届くようではだめなのだ。各種デバイスを駆使することで、日常活動、睡眠、血圧、体重を追跡管理するのが容易になる。
●遠隔医療(Telehealth)
どちらにしても患者たちが診療所に行くのを止めることはできそうにないと思われる一方で、遠隔医療によって遠隔から治療することが可能になりつつある。その利点は言うまでもないが、さらに重要な点は、医師と患者間のコミュニケーションをより良くすることにつながることだ。一例を挙げよう。糖尿病患者がEHR(電子健康記録)にリンクしたモバイルアプリを使用すると、日々の血糖値が記録され、モバイルアプリにアップロードされ、保存される。数値に増加が見られると、医師に警告が届き、さらなるリスクは回避できる、というわけだ。患者達は自分の健康により関心を向け、毎日記録をつけることによって、自分の生活習慣により気を配ることにつながる可能性もある。
ヘルスケアにおける技術革新の恩恵は計り知れないものがあり、2014年の動向は氷山の一角にすぎない。携帯電話の使用が急増し、デジタル化された健康管理方法が急速に取り入れられるようになって、医師たちは自分の医療行為や患者にとってどれが最適な技術かを考える必要があると言える。つまりテクノロジーこそ、患者達のさらなる健康への鍵なのだ。
記事原文はこちら(『mHealth News』8月18日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目のニュースは、患者に力を与える3つのmHealth技術に関する記事です。
我々が、Mobile Healthの分野を見続けているなかで、日米間の違いを非常に強く感じるのが、医師と患者との診察以外に「Mobile」を活用したコミュニケーション活動が活発な米国に比べ、日本では診察時以外でのコミュニケーション部分にまったくアプローチされていないことです。
今回のニュースでは、患者に提供されている健康管理を容易にするテクノロジーとして、以下3つを紹介しています。
1.「患者向けサイト(Patient portals)」
2.「モバイルアプリ(Mobile apps)」
3.「遠隔医療(Telehealth)」
上記3つの技術・サービスを見ると、患者の健康管理を簡易にすることが目的ではありますが、医師や専門家とのコミュニケーションを容易にすることも患者の健康管理の一部として捉えている、と言えます。
日本でのモバイルアプリの状況を見渡してみると、医師やその他の健康関連の専門家とのコミュニケーションを促進させる機能を盛り込んだアプリは非常に少なく、基本的には利用者が自身のデータや情報を管理するアプリが一般的です。
モバイルアプリに医師やその他の健康関連の専門家とのコミュニケーションを促進させる機能を盛り込むということは、制度や制約ということで難しい部分もありますが、それよりもハードルが高いのが、対応するためのサービス提供や対応負荷になってきます。
しかし、モバイルアプリ単体でのマネタイズが難しくなってきているなかで、医師や専門家とのコミュニケーション機能、人が介在するサービスを盛り込むことは、逆にマネタイズという観点からも必要な機能と言えます。
なぜなら、人やモノや場所といったリアルが絡むところにはお金を支払う「文化」が、すでに存在しているからです。
お金を支払う文化がまだまだ成立していないモバイルアプリから、如何にお金を支払う「文化」が存在する領域に誘導するのかが、今後のモバイルアプリを含めたmHealth領域に欠かせない視点になってくると思います。
言いかえれば、利用者と専門家をデータや情報を含めて直接つなぐことこそ、「mHealth」の技術の進化で求められていることなのかもしれません。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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