『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“Aetna、『CarePass』が失敗した10の理由”
3年前、MobiHealthNewsは「Google Healthが失敗した10の理由」という記事を公開した。そこで私たちはGoogleが自社のPHRの取り組みを終えたことについての議論を複数集めた。Aetnaは、Googleが閉鎖した時とまったく同じ状況ではないが、『CarePass』の閉鎖は業界に似たような反応をもたらした。人々は原因を求め、これが保険会社主導の消費者への関わり方の失敗を意味することなのか、などの噂が立った。より端的に言えば、『Google Health』の失敗が意味するものと同様に、Aetnaについても数多くの理由のあることが示唆される。それは、EHRとの統合欠如、患者の信頼不足、単純に時期尚早などの問題である。
人々は、データに関して保険キャリアを信用していない。2012年のPeppers and Rogers Groupによるある調査では、患者の43%しか自分の医療保険を信用しておらず、38%は不信感を持っており、19%は中立的だった。そのため、Aetnaは患者に対し、自己追跡したデータのすべてを集約し、保険会社と共有してもらうために苦戦していた、と言える。患者はAetnaに自分の生活についてあまりにも多くの情報を提供することで、トレーニングの目標が達成できなかった場合に、高い保険料を請求されるのを恐れたのかもしれない。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』9月2日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは“AetnaのPHRサービス『CarePass』の失敗”についてです。
『CarePass』とは、すでに人気のある健康デバイスやアプリを使って健康的な活動をした時、それらデータを一括管理し、保険契約者の健康行動のサポートをするサービスです。ポイントは保険会社が提供する真面目なだけのコンテンツではなく、「人気のある健康デバイスやアプリ(『Fitbit』や『RunKeeper』など)」を使えること。また、ユーザーは好きなデバイスやアプリを使っているだけで(『CarePass』を意識しないで)、アドバイスなどを受けられることです。
どこよりも早くこの方向性を打ち出し、注目を集めてきました。では、なぜ撤退することになったのだろうか? 失敗した10の理由のなかから、いくつか紹介しましょう。
・AetnaはApple、Googleとの競争を恐れた
2012年、Aetnaが『CarePass』をローンチした時、健康データ収集の分野では特に明確なリーダー的企業は存在していなかった。同社はそこに一番乗りする機会を見出したのかもしれないし、多くの人が自己追跡を始め、自分のデータを集めるポータルを必要としているとして中心的な存在になりたかった可能性がある。しかし、AppleとGoogleは来るべき『Health』と『Google Fit』アグリゲーターアプリを新たなスマートフォンやOSに組み込むことができ、その分野で大きな利点を有している。Aetnaは悲観して退散することを決めたのかもしれない。
・データ収集と蓄積にあまりにも注力し過ぎ、分析への対応が不十分だった
『CarePass』は、決してデータ収集をするという過去に移行せず、長期間にわたりユーザーと関わることもなく、人々の健康面で大きな変化をもたらせなかった。これは多くのヘルスアプリメーカーにとっての厄介な問題であり、AppleとGoogleは自社の健康追跡収集ベンチャーを立ち上げる際に、この点をよく認識していた。
・EHRとの統合がなかった
Aetnaは、人々の健康改善と医療費削減を求めたが、医療制度とはおそらく規制上の理由でそれほど関わりたくなかった。しかし、健康データを取り入れるのに躊躇したことで多くの批評家の目には重要性が失われたように映った。
我々も、β版が登場した時は非常に評価していたが、2013年からスタートした正規版は、その期待に応えるものではなかった。せっかく入口は良くても、その後使い続けたいと思えるものは作れなかった。
我々としては、1年で結論を出すにはまだ早かったのではないか、と感じている。まだソリューションをブラッシュアップされていないからだ。競合の保険会社でもモバイルヘルスを活用した成功パターンは出てきている。Aetnaにはユーザー視点に立ち、競合と差別化した次の展開を期待したい。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
Comments are closed.