『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“AdhereTech、20%服用遵守率を向上する新しいスマートピルボトルを発表”
ニューヨークに本社を置くスマートピルボトル企業AdhereTechが、製薬会社やプロバイダーの顧客用にピルボトルの第二世代バージョンの出荷を開始した。この新バージョンには、より丈夫に、使いやすく、そして米国外の会社との取引を拡大するために、ユーザーのフィードバックに基づいた数多くの変更が組み込まれている。AdhereTechは昨年、この新しいボトルを開発するために175万ドルを調達した。
AdhereTechのCEO、Josh Stein氏は、MobiHealthNewsに対し、「第一世代は上手く機能しましたし、あらゆる規制面の障害を克服したのですが、次のバージョンで完璧なデバイスとするべく、改良を加えました。当社は患者の皆様から数多くのフィードバックを頂き、それらを次世代バージョンに組み込み、さらに規模を拡大して生産できるデバイスを生み出したいと考えてきました。1年半に渡り、第二世代のボトルを開発しようと努力を重ねてきたのです」と語った。
AdhereTechは、多くの理由から製薬会社やプロバイダーと協働している。このスマートピルボトルは、気分や症状、そして遵守していない理由に関するフィードバックを収集することはもちろん、薬の服用を知らせるために、テキストや電話での呼び出しのほか、ライトや音も使用している。これらの会社は臨床試験の研究者、特殊医薬品メーカー、そして退院後の患者をモニタリングする病院と協働している。
Stein氏は、「AdhereTechのボトルは携帯用で、旧バージョンは米国内でしか使われていませんでした。新バージョンは世界中で使用されることになるでしょう。当社が国際的に販売する計画を持たないとしても、世界中で使用されることは重要なことだと思います。なぜなら、旅行時に錠剤を携帯することは、必要なことなのですから」と説明した。AdhereTechは、新規顧客を開拓するために米国以外を視野に入れており、すでに最初の国際的顧客となる会社と契約を結んでいる。
他の技術的な変更として、AdhereTechがバッテリー寿命を2ヵ月から6ヵ月へと3倍にしたことが挙げられる。ユーザーのフィードバックに応えて、ライトはより明るく、チャイムはより大きくなっている。形状もユーザーのフィードバックに応えて、デザインもより親しみやすいものになっている。
「患者の皆様から頂いたフィードバックで重要なもののひとつとして、『普通のボトルに見えるものが欲しい』ことが挙げられると思います。第一世代は、このような独特の楕円形をしていましたが、第二世代は大きさ、形、そして感触の点で、通常のボトルに見えるのです」。
最後に、この新ボトルは可動部品がないので、より頑丈になっているほか、全体的に見て規模を拡大して製造することが容易になっている。AdhereTechが協働する、米国に本社を置く製造会社は、フィリップスやバイエル向けに医療デバイスも作成している。
AdhereTechは新ボトルを開発するのはもちろん、公共の顧客やそうでない顧客も含め、数多くの契約を結んできた。Stein氏によると、「トップ3の製薬会社、トップ15の製薬会社、トップ20の薬局、そしてトップ25の薬局」が顧客として含まれているという。それらは、臨床試験に関してCincinnati Children’s Hospital、Weill Cornell Medical Center、Walter Reed Army Medical Centerと、退院後のモニタリングに関してMount Sinai, Partner’s HealthCare、AARP、UnitedHealthcareと協働している。
「退役軍人保健局で実施されたAdhereTechの最初の有効性研究は、今後6ヵ月で終了する予定です。その他の研究は現在も進行中で、新ボトルは20%も服用遵守率を向上することができたこと、AdhereTechボトルか通常ボトルのどちらかを使用するオプションを与えられた患者の80%がスマートピルボトルを選択したことが調査結果でわかりました」としている。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』10月28日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回は薬の飲み忘れを防止する『スマートピルボトル』についてです。
メディカルにおいて常に課題となるのが“薬の飲み忘れ”です。高齢者が増加するなか、長期入院を減らすことで、在宅療養時の“薬の飲み忘れ”は増々問題になってきています。もちろん薬を飲み忘れるのは高齢者に限ったことではありません。若い世代でも、習慣にするのはなかなか難しいものです。
“薬の飲み忘れ”ツールは、国内でもいろいろな種類があるのでご存知かと思います。カレンダーにポケットがあって目につくところにぶら下げるもの、アラーム付きのピルケース、テーブルに置いたケースが時間になると薬を排出してくれるものなど、かなりの種類になります。
オンラインと連携したピルボトルとしては、Vitalityの『GlowCaps』が有名です。2010年に発表され、AT&Tと提携するなど話題になってきました。
今回紹介するAdhereTechは後発で、第一世代は2014年に発表されました。機能やサービスを見ても『GlowCaps』とそう変わりない印象です。
では、なぜAdhereTechが注目を集めているのか? 情報が少ないなかではありますが、以下が挙げられます。
・ユーザーへの徹底したヒアリングと製品への早期反映
・多くの医療機関とテストを繰り返し、現場と寄り添う姿勢
・製薬企業や薬局との密な現状共有(営業強化)
どの側面を取っても、コミュニケーションを徹底している印象を持ちます。
ヘルスケアは個別性が非常に高く、マスでのアプローチが難しいため、頭を悩ませているマーケッターの方も多いと思います。AdhereTechのように、あらゆる側面で密なコミュニケーションを取り続けるアプローチをお手本に、戦略を検討してはいかがでしょうか。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
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