『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“台湾のHealth2Sync、台湾厚生省とのパートナーシップで全国に糖尿病管理プラットフォームを展開”
台湾に本拠地を置くオンライン糖尿病管理企業のHealth2Sync社は、台湾厚生省と協力して全国的にインターネットとアプリを活用した取り組みを行なうと発表。
Health2Syncが提供するサービスは、患者を多方面で管理するプラットフォームで、患者が操作するアプリ、様々な血糖測定装置をスマートフォンにつなぐケーブル、さらに患者それぞれのデータを自動的に、患者ごとにアドバイスを行なうデータ解析エンジンなどがある。
台湾で唯一の医療保険である国民健康保険制度は、かなり広範囲の病気をカバーするものだが、糖尿病とその合併症は常に保険制度の予算を圧迫する要因となっている。さらに台湾では、糖尿病に関する教育が不足している。Health2SyncのCEOを務めるEd Deng氏が、今年前半にMobiHealthNewsに語ったことによると「資格を持った糖尿病療養指導士と患者の比率はおよそ1:900」とのこと。 Health2Syncのハードウェアに依存しないソフトウェアを使用すれば、サービスを提供する法人側は、遠く離れた場所に移動して糖尿病ケアを行なう時間と費用を抑えられる。このシステムは台湾の30を超える病院や診療所で利用されており、リアルタイムで状況を追跡し、即時に患者に対して結果を提供している。Health2Synは、血圧と体重を管理するツールも扱っている。
TADE (Taiwanese Association of Diabetes Educators) の理事長を務めるJason S-T Tu博士は、今回の協業は多くの利害関係者にとって好ましいものだと述べた。
「患者が元気に生活できるようにするのは非常に大事なことですが、我々は常に糖尿病療養指導士の質を向上させるためのツールとメソッドを探しているのです。今回の厚生省とHealth2Syncの協業は、患者が自分ひとりで血糖値を管理し、ひとりよがりな判断を基に生活するという悪循環を断ち切る第一歩です」と語った。
Health2Syncのプラットフォームを利用することにより厚生省が願っているのは、患者が体調を自己管理するよう動機づけるだけでなく、大規模に糖尿病を管理することである。
厚生省、衛生福利部の課長Hsiu-Mei Chen氏は、声明で「糖尿病の原理を共有ケアサービスに応用し、患者とケア提供者が共に糖尿病と戦えるようにするため、我々はデジタルテクノロジーとデータ分析を活用して、患者とケア提供者にモバイルアプリとWeb管理プラットフォームを提供し、糖尿病管理の効果を引き上げたいのです」と述べた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2016年10月18日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
糖尿病患者は、世界で約5億人と言われているほど増加しています。日本でも大きな問題であり、我々健康ビジネスを行なう者にとっても、常に密接した課題となっています。
同じアジアにある台湾でも糖尿病に対して本格的なアプローチが始まりました。今回の取り組みでポイントとなるのは、一部地域の実証実験ではなく、Health2Syncと厚生省がパートナーシップを組んで全国的に展開すること。すでに計測機器を持っている人でも参加しやすいよう、様々な計測機器をスマートフォンを経由してデータ管理ができること。そして、医療機関も含めてケアサービス提供者がデータ共有できること、などが挙げられます。
このような取り組みでは、「mHealthツールを活用しましょう」まではよく言われるのですが、実際には制限が多く、特定の条件を充たす人しか使えないことがあります。全国で展開する場合は、できるだけそのハードルを下げることが求められます。
また、このような取り組みの場合、仕組みが先行して、現場がついていけなく、結局使われないこともよく起きます。すでに今のやり方があり、常に忙しい現場の方々に、どのように理解してもらい、このツールを使うことを徹底させるかはとても重要なポイントです。
医療健康プラットフォームには、現場に寄り添ったアプローチ、フォロー策をどれだけ重要視できるかが成功のカギになると思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
Comments are closed.