『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“昨年苦しみを味わったウェアラブル市場の課題”
今は手首にはめるデバイスにとって「待ち」の時期だ。数年間ものすごい盛り上がりを見せていたウェアラブル業界だが、今年のCESではあまり目立っていなかった。2つ、3つ新しいスマートウォッチが発表され、パートナーシップやそこそこの出来のフィットネスバンドがアナウンスされたくらいで、業界全体のフォーカスとしては、Alexaを搭載した種々のデバイスやスマートホームへとシフトしたように感じた。
Andoroid Wear 2.0のリリースが遅れたことを主な理由として、メーカーがなかなか新製品をリリースできなかったという背景もある。現在のところ同OSは2月2日にリリースされる予定だが、ホリデイシーンズや1年で1番大きなテック系展示会を逃すなど、リリースのタイミングとしては最悪だ。
そしてリリース後は、ウェアラブル業界が傷のなめ合いに必死になることだろう。全体としてパッとしなかった(いくばくかストレスがたまるような)2016年の状況を考えると、CESの様子は当然だとも言える。IDCは昨年10月に、2016年Q3のウェアラブルデバイスの出荷台数が前年同期比で51.6%減少したという、悲惨なデータを発表していた。そして先日TechCrunchでも報じた通り、12月にはeMarketerが「特にスマートウォッチは消費者の心を掴むことができなかった」という言葉と共に、ウェアラブル業界の成長予測を大幅に下方修正した。
業界をリードするプレイヤーの中にも、昨年は苦汁をなめた企業がいくつかあった。Fitbitの株価は急落し、Intelもウェアラブル業界では以前より力を緩めたように見えた。年末にさしかかると、MicrosoftがBand 2の販売を終了し3をつくる予定もないということがわかり、Bandはほぼ亡きものとなった。Jawboneはどうしてるのかと疑問に思う人もいるだろうが、彼らのビジネスもうまくいっていない。
Jawboneに対する特許訴訟を取り下げる際に、Fitbitは同社が実質倒産状態にあるという発言を残し、Jawboneはこれを強く非難していた。しかしFitbitの発言が誇張されたものであったとしても、Jawboneが苦しんでいるのは間違いない。JawboneのCFOは、同社が資金調達を狙いながらコンシューマー向けデバイスから方向転換しようとしているという報道がなされる中、会社を去った。
ほかにもクラウドファンディングから誕生し、スマートウォッチブームの最前線にいたPebbleは、2016年を生き抜くことさえできなかった。同社は最後の作戦として、新しく2つのスマートウォッチとランニング用のモバイルデバイスをリリースする予定だったが、結局実際にはそのうちひとつしか販売されず、その直後にFitbitへの吸収、そしてPebbleブランドの終焉が発表された。
記事原文はこちら(『TechCrunch Japan』2017年1月24日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回の注目ニュースは、ウェアラブル市場の課題に関してです。
現状の海外を含めたウェアラブルデバイスの市場を見ていると、今回のニュースのように、踊り場に差し掛かっている感は否めない印象です。
それは、今年1月5~8日にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES 2017」でのフィットネス、ヘルスケア関連のウェアラブルデバイスのニュースが、昨年と比べて明らかに少なかったことからも、うかがい知ることができました。
下火になった理由は色々なことが考えられますが、ひとつはこのニュースでもコメントされているとおり、“目新しいもの”から一気に“皆が持っているもの”へと進化したということで、使い手側の心理的な変化も大きいと思います。
また、ウェアラブルデバイス、特にフィットネスやヘルスケア系のデバイスにおいては、装着する価値、メリットが見えづらい部分も影響していると考えられ、既に購入した方のなかには、装着をやめてしまっている人も多いのではないかと思います。
ウェアラブルデバイスが一過性のガジェット好きのギアに成り下がるのではなく、しっかりとフィットネス、ヘルスケアのデバイスとしてのポジション、役割を果たすためには、やはり装着する価値、メリットをしっかりと提供することが重要です。
そのためには、デバイスだけの差別化だけではなく、継続して装着してもらえるための工夫はもちろんデータをもとにしたソリューションの提供が必要になってきます。
継続して装着してもらうための工夫やソリューションの提供まで含めて、初めてウェアラブルの価値が提供できるのだ思います。
しかし、現状の国内のヘルスケアサービスを見ていると、ウェアアラブルデバイスを配れば使ってくれるだろう、といった安易な想定でのサービス提供を見かけますが、そんなサービスに限ってウェアラブルデバイスからのデータが最終的にビジネスモデルの“肝”になっていることが多いです。
「ウェアラブルデバイス=データ」を成立させるためには、「継続」が不可欠です。
デバイスをいかに使ってもらうか、装着し続けてもらえるかにもっと目を向けたサービスを提供したデバイスが、最終的には生き残れるのではないかと思います。
ウェアラブルデバイスのこの状況を打破するのは、実は「サービス」なのかもしれません。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。食コンディショニングアドバイザー。
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