『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“スマフォユーザー70万人の肥満と平均的活動の関連性”
スタンフォード大学モーバライズセンターの理事Scott L. Delp氏は、声明文で「本研究は過去に行なわれた人間の動作に関する研究の1,000倍の規模です。今までにも素晴らしい健康調査が行なわれてきましたが、我々の新しい研究はさらに多くの国、多くの被験者からのデータを提供し、また人びとが自主的に活動を報告するのに頼る調査方法に対して、彼らの自由な生活環境のなかで、継続的に追跡します。これは、今までに可能だった研究よりも格段に大きな規模で新しい方法への扉を開くものです」と述べた。
具体的には、2015年に収集が開始されたデータセットには717,527人の匿名の『Argus』ユーザーからの合計6,800万日間の毎分ごとの歩行記録が含まれていた。111ヵ国の居住者が参加したが、最低でも1,000人のユーザーを含む46ヵ国に焦点を当てた。当然のことながら、参加者の約10%は中所得の国からだったものの、参加はより所得が多い国からに偏っていた。
同研究からの主要な傾向は、肥満率と関連していたのはその国の平均的活動ではなく、その平均に含まれていた活動のレベルの幅だった、ということ。皆が同じようなレベルの活動を報告した国の肥満率は、活動量が非常に多いユーザーとずっと座っているユーザーが入り混じっている米国などの国よりも飛躍的に低かった。実のところ、同研究グループによって出てきた活動の差がもっとも大きい5ヵ国は、活動の差がもっとも少ない5ヵ国よりも約200%も肥満になる確率が高かったことがわかった。
活動の差が大きい国についてのもうひとつの発見は、女性が男性よりも活動的でないというジェンダーの違いによる差がはっきりとしていたことだ。米国の都市のレベルに照準を合わせると、都市の歩きやすさと活動の差には相互関係があった。そして、その相互関係は女性においてさらに顕著だった。
2015年後半にスタンフォードとAzumioの提携が発足した時、Azumioの代表取締役Bojan Bostjancic氏は、MobiHealthNewsに対して「活動データは収集されたデータのごく一部に過ぎない」と話した。
Bostjancic氏は、当時「スタンフォードと協力してデータの研究を進めているチームは、異なるグループから来ています。機動性、人びとの歩き方、足どりなどに興味がある人もいます。食生活や肥満に興味がある人もいます。SNSを研究する人もいます。なんというか不均一で、誰もがそれぞれの目的を持っています。初めてこれらのデータセットを観察し、そのなかにあるパターンを見つけようとする非常に大きな科学的な好奇心があります」と話していた。
記事原文はこちら(『mhealthnews』2017年7月11日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
Azumioの行動追跡アプリ『Argus』の、世界の利用者70万人のデータを分析した結果について紹介されました。幅広く世界中に展開しているため、111の国で比較することができます。
今回紹介されたのは、活動と肥満の関係です。面白いのは、活動の総量や平均量による差を見るのではなく、国ごとに対象者活動量の開きを出し、肥満度を比べているところです。
「活動の差がもっとも大きい5ヵ国は、活動の差がもっとも少ない5ヵ国よりも約200%も肥満になる確率が高かった」との結果でした。具体的な国名まで出ていない(例で米国はあり)ので、はっきりとは言えないところはありますが、第一に“環境”が関連していると考えられます。活動の差がもっとも大きい5ヵ国は、あまり歩かなくても生活できる環境が整備されており、逆は当たり前に歩く必要がある環境だと考えられます。
健康行動は、環境に左右されることが多いです。日本は当然のように環境が発達しているため、無理してでも動かないと適切な運動量を得ることはできません。しかし、環境を見直せば自然に行動につなぐことができます。
とは言え、そう簡単に環境を見直すことはできないのも事実です。そこで求められるのが、環境へのちょっとした工夫です。自分が歩いている距離はどの程度で、どれくらいのカロリーを消費しているのかを、環境のなかから気づかせることです。
アプリでもできることですが、やはりわざわざ見なければならないアプリだけでは、誰もが対象とはなりにくい、と言えます。まずは環境のなかに目安があり、より正確に、詳しく知りたくなったところで、アプリなどを使うとの自然な流れとなります。
ユーザーに興味を持たせるにはステップがあります。すべてをアプリだけで完結させようとしないことも、大切な観点となってきます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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