『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“NeuroPlusのEEG制御ビデオゲームは、子供たちがADHDを管理するのに役立つ”
NeuroPlusの脳トレーニングゲームは、臨床試験でADHD治療に有益な兆候を示しています。
NeuroPlusの開発したゲームを行なうには、子供は脳波モニターと、動きや筋肉の緊張を測定する追加のセンサーを装着する。実はそれらのセンサーの測定値が、ゲームをコントロールする。あるゲームでは、プレイヤーはドラゴンに乗り、彼らが集中するとスピードを上げ、注意が散漫になるとスピードが落ちる。ゲームはさらに、衝動制御の発達に役立つように作られた、継続か中止かを決定するテストの一種を含んでいる。
NeuroPlusのCEO、Jake Stauch氏は、MobiHealthNewsに対し「我々が取り組んでいるのは、エビデンスに基づいた戦略の多くを、魅力的に使って面白い製品に盛り込むことです。もし、世界最高の戦略を持っていたとしても、子供であれ大人であれ、ユーザーにとって面白くなければ顧客は増えない、ということに気づいたからです」と語った。
トライアルでは、8〜13歳のADHDを抱える子供60人が、無作為にグループに分けられた。ひとつのグループは、普段どおりの世話を受け、もうひとつのグループは週に3回、30分間、NeuroPlusのゲームで遊んだ。
研究者は、両親に対する主観的な質問表(高く評価されているコナーズの評価尺度)と、ADHD指数システムと呼ばれる客観的なテストによって、子供の注意力と衝動制御を測定した。双方において、統計的に著しい改善が見られた。
Stauch氏は、「ここで本当に重要なのは、コナーズだけではなく、客観的なテストでも著しい改善が見られたことなのです。両親が見ているもの、子供が実際にやっていることの双方から力強いデータが得られており、そこが強力で説得力があり、我々がこの件をより深く調べていく動機になるのです」と語った。
Akili Labsが開発した、以前は「NeuroRacer」と呼ばれた、優れた有効性の実証を得た治療効果のあるゲーム「Project EVO」も、ADHDを対象とした。しかし、Akili Labsのゲームは現在のところ、従来どおりのコントロールプログラムを利用しており、ユーザーが脳波の測定値を使って直接ゲームをコントロールする、NeuroPlusのバイオフィードバックの特徴とは異なっている。
現在、NeuroPlusは市場に出回っているが、ADHDの治療用、という表示はしていない。その表示にはFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可が必要なのだ。その代わりに、同社は注意力を高める一般的な手段として販売している。
Stauch氏は、「誰もが注意力トレーニングから恩恵を受けることができます。我々は、ADHDだけに限ったものではないと考えています」と語る。診断に関わらず、学業成績やその他多くの重要な指標において、注意力は大きな予測判断材料であることが示されている。
記事原文はこちら(『mbihealthnews』2017年9月15日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
ゲーミフィケーションは以前から、特に子供を対象にした取組みが活発に行なわれてきました。最近の医療現場では、VRを使って治療を受ける子供の気を紛らすための使い方が出てきていますが、NeuroPlusは治療自体にゲームを活用しようとの試みです。
治療自体にゲームを活用する動きは、Akili Labsをはじめ何社もがチャレンジし、Games For Healthなどカンファレンスで紹介されてきました。これらのゲームでは、ゲームを進めることで疾患を理解し、日常生活で取り組むべきことを、ゲームを通して自然に学べるように工夫されています。
今回紹介するNeuroPlusが特長的な点は、ゲームの操作方法にあります。集中力をゲーム操作と連動させることで、持続的な集中力を養うことができます。
もう1点、注目したいのが、FDAの認可を得る前に、一般市場向けに展開していることです。一般市場では、よりゲーム自体の面白さが評価ポイントになります。一般市場で受け入れられるクオリティーと人気があれば、患者に治療の一環として提供されても、受け入れやすく、継続する可能性が高くなります。
一般市場で商品サービス価値を磨くのは、その後のビジネス展開で大きく役立ちます。戦略のひとつとして捉えていくべきでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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